内部侵入
文章が下手なのはともかく、もう少し読みやすくならないものか
「敵襲だ!イーライ様を最優先で探し出せ!」
血溜まりを見たモットーくんが、俺の指示より先に配下の国造の精を伝令に走らせている。
「ザシャを頼む!」
いつの間にか握っていたザシャくんの手。
思ったより華奢なんだな。
後ろ髪を引かれつつも、手を解きながら崩れる幕壁を確認する。
「すぐに戻るから」
何か言おうとするのをやめさせるように、無理やり笑顔をつくってみせる。
この世界に来た頃はできなかったけど今ならできる。
「《石壁》」
崩れる幕壁の隙間めがけて、インベントリから走るように石壁を顕現させる。
目標へ走る石壁が、崩れる隙間を埋めるように進んでいき、沼小鬼とゴットホルトを巻き込みながら壁の外へ押し出す。
が、数匹の沼小鬼が隙間を這い出して、こちらに向かってくる。
「《石棘》」
沼小鬼の足元めがけ、棘の飛び出した石条網を顕現させ二匹を絡め取る。
一匹は搦め損なうが、転んだところを狼重鉱槍で二度突き刺す。
念のため石棘で捕縛して、動けないことを確認してから残りの沼小鬼を始末する。
前回の攻防戦の後から、暇を見つけてはインベントリの攻撃利用、土魔法のような使い方を模索していた。
石壁が、崩れる幕壁の隙間を塞いだ形になり、壁の崩落が止まっている。
一息する間もなく、城門塔方面から悲鳴と怒号が聞こえてくる。
「イーライはまだか!」
主塔に運び込まれるザシャくんが見えるが、司祭の姿は見えない。
だいたいどうやって監視をくぐり抜けて接近してきた?
偵察にはこちらが出来うる限りのリソースを割いているし、陽根の魔除けだって身につけてるのに。
「敵襲です!壁が崩されました!」
ハーフエルフのイシルウェさんが城門塔から内門を抜け、異変を知らせにこちらへ走ってくる。
「イシルウェ!イーライを探せ!」
「今こちらに向かっています!」
イシルウェさんが崖上を指差し叫ぶ。
崖の上から、イーライ神父と護衛数人がスロープを走りながら降りてくるのが見える。
背後の宿舎からは、ヴァレッタ聖歌隊、子供たちの多声声楽による《勇猛鼓舞》が雨音に負けず砦内に広がっていく。
よし。
よし、いける。大丈夫だ。
国造の精たちが、ザシャくんを主塔に運び終わるのを確認した後、意識を切り替える。
落ち着け。
事前に襲撃時の対応も話し合っているし、各所に鬼防柵を設置して、ゴブリンくらいなら足止めできるようにしてある。
斥候に出ているのは、人狼隊、クーリンディアと人間の護衛が二人。別動の人間の斥候が5人(ともに人狼を告訴して軟禁されていた氏族が率先して)と、交代に出た剣虎兵。
「イシルウェ、砦内の状況報告!」
風の精霊の手を借りて、見張塔にいるリネイセルと連絡を取りあい、状況を報告させる。
「ミルチャ様の報告では砦外に敵影確認できず」
「侵入を許した箇所は、城門塔北側の幕壁から沼鬼と沼小鬼が約15、バァン様が対応された箇所から沼小鬼数体のみ」
「城門塔方面はフェデルマ様指揮のもと、クッコロ騎士団と住民が対応していますが、こちらと分断される形になってしまっています」
二箇所の侵入経路、共通点は幕壁が川にほぼ直接接していて、かつ二重の幕壁が設置されていない場所。
東側の幕壁は全て川に沿うように設置しているが、一部の幕壁は二重になっていてそこからの侵入はない。
考えられるのは、川に沿った幕壁が"内側から"破壊された可能性。
さっきのゴットホルトが"それ"なら、南側は、
「アルフォンスとゴットホルトは見つけ次第排除しろ、殺しても構わん!別働隊の斥候以外喚び戻せ、あと、上の連中に蜂蜜作ってる興里たちも叩き起こさせろ」
「小烏丸様配下の弓隊を引き連れて、南側の崖に向かっています」
国造の精の伝令で住民たちが、仮設住宅や宿舎から武装して出てきて、入れ違うようにイーライ神父が主塔に入っていく。
あんちゃんもヴァレッタ聖歌隊の年長組男子で編成した特別ユニット【ヴァイス】を引き連れてこちらに向かってくる。
崖上への退却経路の確保も問題ない。
よし、砦に攻め入ってきたことを後悔させてやる、鏖だ!
……ああ、これは勇猛鼓舞のせいだな、ちょい落ち着こう。
鏖は俺の仕事じゃない。まず壁の確認だ。
かぶりを振りつつ本業の土方仕事遂行のため、崩落の止まった幕壁を修復しようと塞いだ場所に近づいていくと、地面が黒く蠢いているのが目に飛び込んでくる。
歌う月19
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
移住希望者:5名
人間(4)
ドワーフ(1)
死亡:人間1名
詳細は別紙にて
住民総数:141
内訳:
招来者:5
人間:105
ドワーフ:9
吸血鬼:4
ハーフエルフ:3
ダークエルフ:3
熊猫人:2
人狼:2
猫人:2
白虎人:1
龍人:1
白熊人:1
エルフ:1
ドヴェルグ:1
以上




