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おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です  作者: イマノキ・スギロウ
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第03話「城作り」

 異世界ヴィーギナウスに転移したメアリーベルとデスフレアは人など到底いないだろう険しくも雄大な大自然の広がる山脈の頂上に平然と立っていた。


「ふわぁ~、異世界だ~!」


「そうね」


「そうねって異世界ですよ先輩! 感動しないんですか!?」


「あのね、私がどれだけこの仕事してると思ってるのよ、初めて転移した先の世界に感動するほどもう子供じゃないわよ」


「ぷー、童心を忘れたおばあちゃんにはなりたくないな~」


 ぴくっ


「デスフレアちゃ~ん? 今のはどういう意味かしらぁ?」


「せ、先輩! 顔が、顔が笑ってるのにこわいですぅ~!」


「どういう意味か聞いてるんだけどぉ、このまま何も言わずに灰になりたい?」


「い、いえ! 決してそんなことはありません! 私が個人的におばあちゃんになりたくないと言っただけで、先輩はぴちぴちの美人さんです!!」


「………まぁいいわ。んじゃまずは、手始めに魔王城から作りましょう」


「はーい」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」


「ちょっと? デスフレア?」


「はい、なんですか? 先輩?」


「なんですかじゃないでしょ、あんたがやるのよ? 城作り」


「えぇ!? む、無理ですよ、私魔王の資格はありますけど建築士の資格は持ってませんよぉ~!」


「アホか! 誰が素手で作れっつった!? 負のエネルギーを魔力に変換してそれで作るに決まってんでしょ!!」 


「ああ、そういう事ですか、私てっきりこれが噂の新人イジメかと思っちゃいました」


 なわけねーだろ。


「あのー、でも先輩、私魔力での建築方法もよく知らないんですけど…」


 はぁ~、まずはそこからか…、


「良い? まずあたりに漂ってる負の感情をできるだけ集めなさい」


「はぁーい」

 

 かわいらしい返事をしたデスフレアは両手を空に向け、集中しているのか険しい表情になりながら負の感情を集め始めた。

 するととたんにデスフレアの両手の間から半透明な薄暗い球体が出現し、どんどんそのサイズを大きくさせていく。


「その位でいいわよ、慣れないうちからあんまりたくさんの負の感情を一度に魔力変換すると身体に毒だから」


「は、はい~、」


 汗だくで両手の間に浮かぶ球体を維持していたデスフレアはメアリーベルに言われて負の感情を集めるのを止めると、今度は球体をぎゅぎゅっと押し潰し始めた。

 両手の中に納まるくらいまで小さくなった球体は色が増し、どす黒い色に変わっていたが、デスフレアはそれをなんの躊躇もなくごくんと一息に飲みこんだ。


「お腹痛くなったらすぐ言いなさいよ~、正〇丸持ってきてあるから」


「ありがとうございま~す」


「魔力に変換できたら城作り始めるわよ」


「は~い、わかりました先輩!」 

 

魔力変換も終わり、デスフレアも問題なく作業が出来そうなのでメアリーベルはさっそく作業に取り掛からせた。


「最初は魔力で物体浮遊の魔法を使って…、そうねぇ、あの岩山にしましょ。 デスフレア持ち上げて」


「は~い」


 デスフレアが魔力を両手に込め、魔法を発動すると、巨大な岩山がひとりでに空中へと浮き始めた。


「それじゃ次はなんでもいいから切断系の魔法使って適当な大きさに岩カットして加工しやすい状態にしなさい」


「は~い」


 デスフレアはメアリーベルの言う通りに切断系の魔法を使い、岩山を建材に使用できるサイズにスパスパと加工していった。


「カットできたらさらに石材一つ一つのサイズを揃えてレンガみたいに互い違いに詰めるようにしなさい」


「は、は~い、ちょっと難しいです~」


「そこは練習あるのみよ、それが出来なきゃ魔王として半人前以前の問題よ」


「が、頑張ります~!」







 ~数時間後~


「で、出来ました~」


「よろしい、じゃあ最後よ、この砂利と砂と水を魔法でよく混ぜてセメントを作ってからこっちの材木を地面に打ち付けて、木材を組みつつ石材を積んでセメントを塗りながら組み立てていきなさい。細部についてはまた説明するから今はおおよその形を作りましょう」


「せ、先輩、もしかしてこの材木とセメント用意してくれたんですか!」


「新人を助けるのが担当になったあたしの仕事だからね、今回だけよ」


「はい! あとちょっとでお城完成ですね!」


「ふふ、魔王城の装飾に関してはあなたが好きにしていいわよ、魔王としての感性があるかどうか見てあげる」


「わかりました! 気合入れて頑張ります!」








 ~さらに数時間後~


 あたし何をしてたんだっけ? 確かデスフレアに魔王城の作り方を説明しながら作らせてたハズなんだけど……、



「……ねぇ、なにこれ?」


「なにって魔王城ですよ? 先輩さっき言ったこともう忘れちゃったんですか?」


「バカか! どこの世界にこんなハートてんこ盛りでピンク色のリボンが城中に施された魔王城があるっていうのよ!!」


「え~、かわいくていいじゃないですか?」


「あんた自分の仕事がなにかもう一回言ってごらん、ん?」


「そんなこと言われても私こういうお城に住むのが夢だったんですよ~」 


「別にいいけど、神からクレーム入って減給されても私知らないからね」


「え!? そ、それは困ります! 魔王城らしくするならどんな感じのお城にすればいいですか!?」


 はぁ~、先行き不安だわ~。



 それからメアリーベルは半日ほどかけて模範的な魔王城のイメージを口でデスフレアに説明しながら作らせ、なんとか魔王城らしい(というのも何かおかしい気がするが)魔王城が完成した。


「せんぱーい、このお城、あんまり可愛くありませーん」


 知るか! 


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