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おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です  作者: イマノキ・スギロウ
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第02話「禁止ワード」

「んーでぇ、報告は以上? ベルちゃん?」


「はい、以上です」


「うふ、まあ、優秀なベルちゃんのことだからぁ、日ごろの疲れが溜まってぇ、うっかり禁止ワードを言っちゃったとしてもぉ、仕方ないわよねぇ? もしよかったら今度ぉ、私と一緒にベッドでゆっくり休んで疲れを癒してあげてもいいわよぉ?」


「いえ、大丈夫です。睡眠は十分取ってます」


「あらぁ、そうなのぉ? 残念ねぇ、じゃあ次の新人研修もぉ、手取り足取りぃ、たぁっぷり教育してあげてねぇ?」


「はい、それはもうしっかりと、」


「ではぁ、ご苦労様ぁ、下がっていいわよぉ」


「「失礼しましたー」」



 パタンッ



「あー、たく、あのサキュバス上がりが! あんたと一緒に寝るなんてなにが起こるか分かったモンじゃないっての!」


「あの、先輩、禁止ワードってなんですか?」


「へ? あぁ、そうかまだ知らないんだっけ。禁止ワードって言うのは、私たちが向こうの世界での仕事の締め、つまり勇者に倒されるときに言っちゃいけない言葉の事よ」


「言っちゃいけない言葉?」


「たとえば、ついさっき私が仕事中にうっかり言っちゃったのなら「我の仲間になるのならこの世界の半分をお前たちにやろう」っていうのが禁止ワードになるわね」


「え? それって魔王だったらよくあるセリフじゃないんですか?」


「そういうのは無所属のフリーランスな魔王だったらいいけど、私たちみたいに邪神様の傘下にいる魔王たちは言っちゃいけないのよ、考えてもみなさい? 普通の勇者だったり英雄だったらこの提案に乗る事はまずないけど、もし乗ってくるヤツだったらどうなるか?」


「う~んと、……仕事が終わらない?」


「正解、ついでに言えば、私たちはもともと魔王だから負の感情を制御できるけど、ただの人間や亜人種が私たちと同じ事をすれば際限なく入ってる負の感情にいずれ耐えられなくなって大抵は倒すのもめんどくさい化け物に変わっちゃうのよ。そうしたらいくら消費しても負のエネルギーが減るどころかどんどん増えちゃう事だってあるし、もしそうなってヘタすれば世界滅亡よ? 報酬もらうどころか賠償請求されて、私たちまで減給やボーナスカットもありえるんだから」


「ひえぇぇ~、」


「だから、そうならないためにその世界の人間が世界滅亡の原因になりそうな言葉はすべて禁止ワードとして言ってはいけないって事になっているの。ちなみにどこにも所属してないような魔王の大半はそのあたりについてきちんとした研修を受けてないから、世界を引っ掻き回すだけ引っ掻き回してすぐにほったらかして逃げちゃう事もあって、近隣世界の神々からは大分嫌われているみたいだけどね。見つけたら即、神罰の雷で魂ごと消滅させる神もいるほどよ」


「……私、ここの邪神様の傘下に入れてよかったです」


「そうよ~、邪神様に感謝しときなさいよ~」


「あ、いたいた。メアリーさーん」


「ん、あぁ邪神官さんじゃない。どうしたの?」


「いやー、それが新人研修用に確保しておいた世界からまだ魔王は派遣できないのか?

って催促が来てるらしく、報告書の作成は後回しで良いので早速実地訓練を始めてくれと邪神様からの通達です。」


「どいつもこいつもほんと魔王使いが荒いんだから、」


「愚痴っても仕方ないですよ」


「はいはい、じゃあ行ってきますよ。ほら、行くよ! 新人!」


「はい!」

 

 そうしてさっそくメアリーベルはデスフレアを連れて次元の間と呼ばれる世界を渡るための部屋に来ると向こうに持っていく荷物の確認をした。


「持ってく物はこれでいいか、あとは現地調達でどうにかするとして、デスフレア~用意できた~?」


「は~い! 準備万端で~す!」


「・・・・・・・、一応聞くけど、なにその後ろのデカイリュック?」


「何って持ってく荷物ですよ?」


「多すぎるわ! もっと少なくできるでしょう!!」


「え~、でもどれも私には必要なもので、」


「なら何が入ってるか見せなさい」


「は、はい、まずはこれですね」


 デスフレアがそう言ってリュックから取り出したのは人の頭ほどの大きさの果物だった。


「それは?」


「うちの地元で名産の果物、極炎魔界産超強酸性リンゴです! 一粒種を植えれば大陸丸ごと養分吸収して強酸みと地獄蜂の蜜のようにあまーい極上のリンゴが年間を通していつでも食べられ…、」


「はい没収~」


「ああ、せっかく品種改良でマグマの中でも育つを選んできたのに、」


「アホか! 行った先の世界の生態系丸ごと滅ぼす気かあんたは!! 神に殺されても文句言えないわよ!!」



「うぅ~、アレ好きなのになぁ~」


「ちょっと他の物も全て確認するわよ、そのまま行ったら向こうの世界が何回滅亡の危機を迎えるかわかったもんじゃないわ」


 一通り危険物を没収し、デスフレアの荷物が安全なもののみなったのを二回確認(ダブルチェック)して念入りに確かめたメアリーベルは最後に行き先の世界について書かれた資料に目を通した。


「えーっと、今回行く世界は……典型的な魔法世界か、」 


「どんな世界なんですか?」


「ヴィーギナウスっていう名前の世界で魔法がある以外はだいたい人間しかいない世界みたい」


「エルフさんとかドワーフさんはいないんですか?」


「いない事もないけど、数は多くないわね」


「じゃあ獣人さんとか小人さんとかもいますか?」


「んーそっちは特に資料には書いてな…ってそんなのどうでもいいでしょ! 観光に行くんじゃないんだから!」


「ご、ごめんなさい!」


「……まぁいいかぁ、どうせこの仕事って極端な例を除いてほとんどの場合、最低でも2~3年はかかる業務だし…、すこしはその世界を満喫するのもありっちゃあアリね」


「あ、そうなんですか♪」


「けど! それをしていいのはきっちり仕事をこなした上でだからね? そこんとこ間違えないように!」


「は、はい!!」


「じゃ、さっさ出発しましょ」


 そう言うとメアリーベルはすっと目を閉じて、次元を渡る為に意識を集中し始めた。


「……世界座標検索……確定……出現座標選定……確定……転移対象二名……確定……転移条件……全て問題無し、よし、転移!!」


 一瞬黒い球体が現れ、爆発的に膨張してメアリーベルとデスフレアを包んだかと思うと、そのまま消失し、次の瞬間、二人の魔王は異世界ヴィーギナウスに転移した。





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