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おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です  作者: イマノキ・スギロウ
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第01話「あ、セリフミスった」

 暗雲が立ち込め、雷鳴轟く山中にそびえたつ魔王城、その中で対峙する一人と複数の者達がいた。


「ふははははははははは! よく来たな! 勇者とその仲間達よ! 我の仲間になるのならばこの世界の半分をお前たちに、」


 あ、セリフミスった。


「ふざけんなや! この世界を混沌に導くお前さんの仲間になんぞ、誰がなるか!」


 ほ、よかった。


「そうか、それは残念だ、では、貴様らの血で今夜の晩餐を彩るとしよう! さあ、人間のあがきとやらを見せてみろ!!」


「わいらは負けへん! 必ずお前さんを倒して、この世界の平和を掴みとったる!」 


 勇者たちと魔王の戦いが今、始まった。

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 勇者の攻撃!

 ミス!


 女戦士の攻撃! 

 魔王に82ポイントのダメージ!


 女僧侶はガチムチンを唱えた!

 全員の防御力が200ポイント上がった!


 男遊び人はよくわからない道具を使った! 

 偶然にも召喚儀式(サバト)となって悪魔が召喚された! 

 しかも敵になった! 

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 魔王は超猛吹雪(ハイパーブリザード)を放った! 

 全員に190ポイントのダメージ! 

 召喚悪魔は凍りついた!

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 勇者のいかずち斬り! 

 ミス!


 女戦士の全力斬り! 

 魔王に164ポイントのダメージ!


 女僧侶はマジナオールを唱えた! 

 全員の体力が195ポイント回復した!


 男遊び人は勇者にエールを送った! 

 勇者のイラつき度が400ポイント上がった!

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 魔王は極炎爆波グレートエクスプロージョンを放った! 

 全員に230ポイントのダメージ! 

 召喚悪魔は消し炭になった!

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 勇者はオオキリカゼを唱えた! 

 猛烈な風が大広間にあるモノを切り裂いていく! 

 しかし魔王には傷一つない!  


 女戦士のガイアスラッシュ! 

 魔王に310ポイントのダメージ! 

 女戦士は反動で50ポイントのダメージを受けた!


 女僧侶はチョーマジナオールを唱えた! 

 全員の体力が240ポイント回復した!


 男遊び人は薬草を使った! 

 しかし女戦士は拒否した! 

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 魔王は強力な極大魔法を放とうとしている!

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 勇者は必殺技のために力を溜めている!


 女戦士は絶対防御の体勢で全員の前に出た!


 女僧侶はガチンを唱えた! 

 女戦士の防御力が255ポイント上がった!


 男遊び人は背負っていた巨大な鉄ナベに身を隠した!

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 魔王は殲滅光波(ジェノサイドバスター)を放った!

 全員の盾になった女戦士に999ポイントのダメージ! 

 女戦士は瀕死の重傷を負った!

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 勇者はブレイブスラッシュを放った! 

 ミス! 


 女僧侶はスベテヲアナタニササゲールを唱えた! 

 MPをすべて使って女戦士を復活させた!


 男遊び人は必殺技を外した勇者を笑っている。 

 勇者のイラつき度が999ポイントを突破した!

 限界を超えた怒りで勇者が覚醒した!

 究極奥義エエカゲンニセーを放った!

 男遊び人に100000ポイントのダメージ!

 吹っ飛んだ男遊び人に巻き込まれた余波で魔王にも10000ポイントのダメージ!

 魔王を倒した! (男遊び人も倒した)

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 勇者たちと魔王の戦いが終わった。


「ぐぅぅ、まさかこれほどのものとは…、見事だ、勇者よ。この戦い、お前たちの勝ちだ…、」


「ふん、魔王であるお前さんに褒められてもうれしゅうないわい、さっさとくたばれや、この人類の敵が!」


 うぐ、ミスってばっかなの見なかったことにして褒めてやったのに、地味に傷つくこと言いやがって……、


「ふ、ふはははは、今は仮初の平和を楽しむがいい…、またいつの日か第二、第三の魔王が必ずや…、」


「その時はまた倒しちゃる!」


 そう宣言するとともに勇者は聖剣を魔王に突き立て、その瞬間魔王メアリーベルは絶命した。 

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 神を信仰する者は神に祈りをささげる、そしてその祈りをささげる場として用いられるのが教会である。

だが勇者やモンスターが存在する世界において教会は祈りをささげるほかに、寿命や病気で死んだ者以外を蘇らせるという役目も担っている。そして、ある神を信仰する教会では今、神官によって死んだ者の復活の儀式が行われていた。


「さあ、かの者に祝福を! 目覚めなさい!」


 ゴトッ、


 神官の前にある棺の蓋が動き、中から蓋をどけて復活した人物が立ち上がり、死んでいる間に固まってしまっていた身体をほぐすために大きく伸びをした。


「う~ん、疲れた~」


「おお魔王メアリーベル(・・・・・・・・)よ、死んでしまうとはお疲れ様です」


「お疲れ~」 


 死んだ者は教会で生き返る。それはなにも勇者や村人に限った話ではない。彼ら魔王だって彼らの信奉する神、邪神(・・)を奉る教会で復活が可能なのだ。


「今回はずいぶん厳しい口調の勇者さんでしたね」


「ほんとよ、もぅー身体より(ハート)の方がボロボロになったくらいよ てことでねぇ邪神官(・・・)さん、今夜よかったら一緒に飲みにいかない?」


「すいません、まだ今日は仕事が残ってるので、それよりメアリーさん、いつも通り課長に報告をして、そのあと詳細をまとめた報告書を邪神様の所に提出してくださいね」


「……はーい」


 ちぇ、戻ったばっかなんだから少しゆっくりしたいんだけどなぁ~。 


「そういえば、さっき遠見の魔法で戦い見てましたけど、最初のセリフに『禁止ワード』出てましたよ?」


「あ~うん、ちょっと魔王の役に熱が入り過ぎてついうっかり言っちゃった。それについてはオフレコってことで…、」


「手遅れですね。さっき私が見てた時に課長さんも居ましたから」


「げっ、最悪…、」


「あとそれから、」


「まだなんかあるの?」


「この前、会議で話に出ていた新人教育の新人さん、もう来てますよ」


 あーそうだった、ていうかなんで今回の教育担当私なのよ~。


「第121待合室で、もう2か月も前から待ってますからすぐ会いに行ってあげてください」


 あちゃ~、たしかに予定より勇者たちが魔王城攻略に手こずって、今回の仕事は時間かかっちゃったからなぁ~。あれくらいのラストダンジョン、サクッとクリアできんのか? ほんと最近の勇者は弱くなったなぁ…、まぁいいか、ともかく待ちぼうけ食ってる新人のとこに行かないと。


 メアリーベルは新人に会うために急いで待合室に向かい、ドアの前に立つと息を整えてノックをした。


 コンコンッ、


「は、はいどうぞ!」


「失礼するわよ~」


「あ、あの初めまして、私、新人魔王のデスフレアです! よろしくお願いします!!」


「はいよろしく~、あたしはメアリーベルよ。でーさっそくだけど、あなたこの仕事の事どこまで教わってるの?」


「え? あ、はい、私が仕事について教えてもらったのは、大きく分けて二つです。各世界に住んでいる住人達は日々の生活の中で無意識に負の感情と呼ばれるエネルギーを発散させていて、これは放っておくと世界に蓄積し、最終的にはその負のエネルギーが世界を崩壊させてしまうという事。そしてその負のエネルギーは私たち魔王ならば魔力に変換して消費することが可能であり、そうやって消費することで世界の安定を保つ仕組みを神々と協力してつくっていると、教えてもらったのはこれくらいです。あ、合ってますよね?」


「ええ、十分よ、デスフレアが今言ったように私たち邪神様に仕える魔王は神々が創造した各世界で負のエネルギーと呼ばれる悪感情が世界に溜まる前にそれを魔力に変換して消費することで世界の崩壊を防いでいるの。そしてその引き換えに私たちの上役、邪神様がその世界の神々から報酬をもらい、そこから私たちも恩恵をいただいて生活をしているってわけよ。 ちなみに、ここで頭の悪い奴だと魔王なんだからそんなの気にせずなんでも奪えばいい! なんてことを言い出すおバカさんもたまに居るけどそれは大きな間違いだからね? どこぞのゲームの世界とかならともかく、星を、宇宙を、世界を作った正真正銘の神様たちを相手にちょっと次元を渡ったり、島を消し飛ばすことができる程度の魔王なんて卑小な存在が太刀打ちできると思う?」


「お、思えません…」

 

「けっこう、始めのうちはそれが分かるだけで上等よ。じゃあ、これから色々教えていくけど、分からない事はなんでも質問するように! どんなことでも基本からしっかり学びなさい!」


「はい、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします! 先輩!」


 先輩、か………新人研修なんて、と思ってたけど、先輩って呼ばれるのも悪くないわね。




 ぴんぽんぱんぽーん、


 第3魔王課、魔王メアリーベル係長、課長がお呼びです。ただちに第三魔王課までお越しください。…繰り返します、

 

「あ、やばい! さっきの仕事報告しにいかないと、新人! 一緒に来て!」


「え? は、はいぃぃぃ~~~~~!?」


 返事をするかしないかの間にデスフレアはメアリーベルに手を引っ張られ、文字通り飛ぶようなスピードで待合室をあとにした。 

 魔王デスフレアの新人研修はこうして始まった。



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