トンネルの成長かんさつ記ろくノート⑥
1月6日(水) くもり
朝、トンネルのむこうから聞こえる声で、目をさました。
何人もの人の声が、休みなくずっと、トンネルのおくからひびいてくる。その声は、なんとなく、言葉を話しているようにも聞こえるけど、ちゃんとよく聞いてみると、どうも、やっぱり言葉ではないみたいで、でも、やっぱりときどき、言葉をしゃべっているようなかんじがして、なんだか、おちつかなくて、むずむずする。
トンネルをのぞいてみたけど、トンネルのむこうは、今日はまっくらで、なんにも見えない。ただ、何人もの声だけがかさなって、トンネルの中に反きょうしている。
まっくらなトンネルのおくに、指をつっこんで、何かないかさぐってみた。でも、指にさわる物は、何もなかった。ただ、トンネルのおくは、空気がふるえていて、じっと指をつっこんでいると、指の先が、ちょっとだけ、じんじんとしびれたようになった。
トンネルは、昨日とくらべると、ちゃんと成長している。成長しているんだけど、それでもやっと、トイレットペーパーのしんくらいの直径になっただけだ。昨日見た、たけしのトンネルの大きさには、ほど遠い。
昼から、けんじのうちにあそびに行った。けんじも、初もうでの日に、いっしょにトンネルを買った、トンネル仲間だ。けんじの育てているトンネルは、今、ぼくのやつとおなじくらいの大きさだ。
そのけんじが、耳よりな情報をおしえてくれた。けんじは、たけしのトンネルが、どうしてあんなによく育っているのか、知っているという。どうやら、トンネルを大きく育てるひけつは、思っていたとおり、お供えにあるらしい。「昨日、たけしの家に行ったあと、こっそりたけしのあとをつけて、調べたんだ。そうしたら、たけしのやつ、近所のはい材おき場から、パイプ管だのタイヤだのをひろって、家に持ち帰っていったんだ。きっと、あれをトンネルのお供えにしてるにちがいない。」と、けんじは言った。それで、ぼくたちも、はい材おき場に行って、お供えにする大きな筒やわっかをとってこよう、ということになった。
行ってみると、はい材おき場は、まさに、お宝の山だった! ぼくたちは、せっせとパイプ管やタイヤをひろいまくった。あんまり大きい物や、重い物は、さすがに持って帰れないけど、持てそうなものは、どんどんひろった。一回では、少ししか家に持って帰れないので、ぼくもけんじも、何度もはい材おき場と家とを往復した。そうやって、パイプ管やタイヤを、どっさり家に持ち帰った。
たけしのやつも、一日で、こんなにたくさんのお供えを、トンネルにあげてはいないはずだ。一日にあげるお供えの量を、たけしのやつよりもうんと多くすれば、たけしのトンネルとぼくたちのトンネルとの差を、ちぢめることができるだろう。
一日で、これだけたくさん、大きなお供えをあげれば、トンネルは、きっと一気に成長するはずだ。明日、トンネルがどれだけ大きくなっているか、とても楽しみだ。