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トンネルの成長かんさつ記ろくノート⑩

1月13日(水) 晴れ


 けさも、あいかわらずテレビのニュースで、山に出現した巨大トンネルのことを話していた。

 巨大トンネルは、昨日よりもさらに成長して、今日は、高さ130メートルにまでたっしているらしい。共食いして、さいごに生きのこって、あんなにも巨大になったあのトンネルは、山の中にあるほら穴や、山の近くにある下水道や、地下道なんかを栄養にして、どんどん成長しているのだと、ニュースで言っていた。トンネルのそばにある家なんかは、水道管やガス管もなくなってしまって、その家に住む人たちが、とてもこまっているそうだ。

 トンネルが栄養にする物は、トンネルの近くにあるわっかや筒だが、トンネルが大きくなればなるほど、そのトンネルにとっての「近く」のはんいも、どんどん広がっていく。それが、やっかいなところだ。なぜなら、それはつまり、トンネルのまわりにわっかや筒(下水道や地下道を、筒、というのもへんだけど)があるかぎり、トンネルは、さいげんなく成長していって、さらにはなれたところにあるわっかや筒を、さいげんなくお供えにしてしまう、ということをいみするからだ。下水道や地下道を、トンネルのまわりからどけることはできないから、あの巨大トンネルの成長は、もう、だれにも止められない。ぼくの家の水道管やガス管も、そのうち、あの巨大トンネルのお供えになって、消えてなくなってしまうだろう。まったく、たいへんな事たいになったものだ。


 どうせだから、巨大トンネルを、近くまで行ってじっくり見てきた。

 トンネルのまわりには、ぼく以外にも、トンネルをまぢかで見るためにあつまった人たちが、いっぱいいた。みんな、高さ130メートルのトンネルを見上げて、すごい、すごいと言っていた。ほんとうに、そのながめは、すごいはく力だった。町の人にはめいわくな巨大トンネルだけど、このトンネルは、これから、この町のかんこう名所になるかもしれない、と思った。

 だけど、そうやってトンネルをながめていたとき、トンネルのむこうに、とつぜん、巨人があらわれたのだ! その巨人は、たぶん、背の高さが100メートルくらいはあった。全身が、影みたいにまっ黒で、服は、着ているのか着ていないのかわからないけど、目の白目のところだけが白くて、それ以外は、ぜんぶまっ黒だった。その巨人が、トンネルのむこうから、こっちをのぞきこんだので、トンネルのまわりにいた人たちは、みんな「わーっ」とひめいを上げて、いちもくさんににげた。もちろん、ぼくもいっしょににげた。巨人が、トンネルに入ってきて、トンネルのこっちがわにやってきたらどうしようと、すごくこわかった。

 今、家のまどからトンネルを見ているけど、トンネルのむこうにいるまっ黒な巨人は、あれからずっと、トンネルのそばをはなれずに、今も、トンネルのこっちがわをじーっとのぞいている。トンネルに入ってくるきは、今のところは、ないみたいだ。でも、いつ、巨人がトンネルを通ってこっちにやってくるか、わからない。あんなのがやってきたら、町は、いったいどうなってしまうんだろう。のんきにトンネルを見に行って、はく力だとか、かんこう名所になるかもだとか、思ってる場合じゃなかった。

 あの巨大トンネルを、いっこくも早く、ふさがなければならない。そうでないと、トンネルのむこうから、いつ何がやってくるか、わかったものじゃない。それに、このままトンネルがもっと大きく成長していったら、トンネルのむこうに住んでいるものだって、トンネルの大きさに合わせて、もっと大きくなっていくだろう。それは、巨人かもしれないし、巨大なかいぶつかもしれないし、どっちにしても、それがきょうぼうで危けんなものだったら……。そんなものが住んでいる世界とつながったトンネルが、この町にあるなんて、じょうだんじゃない。

 でも、あそこまで大きく育ったトンネルをふさぐのは、すごくむずかしい。トンネルをふさぐためには、そのトンネルの大きさに合わせた「生けにえ」が必要だからだ。さいばいキットのせつめい書に、そう書いてあったのだ。だから、あの巨大トンネルをふさぐためには、ものすごく大きな生けにえがひつようになる。さいばいキットのトンネルは、小さいときにふさいでおかないと、あとでたいへんなことになるということが、よくわかった。

 いったい、どうすればいいんだろう。


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