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トンネルの成長かんさつ記ろくノート⑨

 1月12日(火) 晴れ、のち雨


 たいへんだ!

 トンネルの成長かんさつ記ろくは、前のページでおわりにするつもりだった。だけど、たいへんなことがおこってしまったので、つづきを書かなければならない。

 たいへんなことというのは、こういうことだ。

 なんと、ぼくの家の近所の山に、巨大なトンネルが出現したのだ!

 トンネルの出現した山は、ぼくの家から、歩いて十分くらいかかるところにあるのだけど、そんなところにあるトンネルが、ぼくの家のまどからでも、よく見える。そのくらい、巨大なトンネルなのだ。

 ぼくたちの町に、巨大なトンネルが出現したことは、すぐにテレビのニュースになった。ニュースによると、あのトンネルは、高さが80メートルにもなる、じつに巨大なトンネルだという。80メートルといえば、去年、学校の遠足で行ったゆうえんちで、そこにあったかんらん車が、全長80メートルあると、ゆうえんちの人が言っていた。なんと、あの巨大トンネルは、あのかんらん車と、同じくらいの大きさなのだ。かんらん車と同じくらい大きなトンネルなんて、見たことがない。町の人たちも、みんなびっくりしている。

 巨大トンネルは、山にぽっかり穴をあけて、山をかんつうしてるように見えるけど、トンネルのむこうにあるのは、もちろん、山のむこうの景色じゃない。今、巨大トンネルのむこうにあるのは、青い空だ。地面は見えないので、もしかしたら、巨大トンネルは、今、地面のない世界につながっているのかもしれない。そして、青い空の中に、白い大きな雲がうかんでいるのだけど、よく見ていたら、それはどうやら、雲じゃなくて、すごく大きな白い鳥だった。その鳥は、雲が動いていくくらいのスピードで、ものすごくゆっくり羽ばたいているのだ。


 それで、いったいどうして、あの山に、あんなに巨大なトンネルが出現したかということだが、それも、テレビのニュースでやっていた。

 前のページの「さいごのほそく」にも書いたけど、このごろ、全国各地で、毎日たくさんのトンネルがすてられていて、そのことが社会問題になっている。どこの町でも、すてられたトンネルをどうするか、ということについて、頭をなやませているらしい。それで、ぼくたちが住んでいる町では、人の近づかない山おくに「トンネルすて場」を作って、町中からあつめられたすてトンネルを、ぜんぶまとめて、そこにすてることにしたんだそうだ。「トンネルすて場」は、近くにわっかも筒もない場所をえらんで、さぎょう員の人以外、だれも近づかないように、まわりにロープをはって、立ち入り禁止のふだを立てたらしい。

 その「トンネルすて場」になった山が、ぼくの家から見える、あの山なのだ。だから、山に出現したあの巨大トンネルは、すてられたトンネルが育ったものとみて、まちがいない。

 では、近くにわっかも筒もないはずなのに、トンネルは、何を食べて、あんなに大きく成長したのか?  その答えは、町中からあつまった、たくさんのトンネルがすてられたはずのあの山に、巨大なトンネルが「一つだけ」出現した、ということから、みちびきだすことができる。

 そう! 一か所にあつめられてすてられたトンネルたちは、トンネルどうしで、共食いしたのだ! 


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