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トンネルの成長かんさつ記ろくノート⑧

 1月8日(金) くもり


 こまったことになった。

 昨日、物おきにかくしたトンネルが、お母さんに見つかってしまった。トンネルが、今日になって、予そういじょうに大きく成長していたので、物おきに何かとりに行ったお母さんに、あっというまに発見されてしまったのだ。物おきの中なら、ごちゃごちゃしていて、何がどこにあるかよくわからないから、見つかりにくいと思ったのに、とんだご算だ。

 お母さんは、やっぱりおこった。トンネルを、ないしょで育てていたことにもだけど、それよりも、物おきにかくしていたトンネルが、物おきにしまっていたわっかと筒を、ぜんぶお供えにして、消してなくしてしまったことに、すごくおこっていた。ぼくは、ちゃんとトンネルのためのお供えを、トンネルの近くにおいていたのに、それ以外の、物おきの中にあったわっかと筒も、勝手にお供えにされてしまったらしい。

 物おきには、買いおきのトイレットペーパーとか、ラップとか、フラフープとか、たばねたホースとか、丸めたじゅうたんとかがしまってあって、それらは一つのこらず、トンネルのお供えになって、消えてしまった。小ぜに貯金をしていた、大きな貯金箱の中からも、五円玉と五十円玉だけ、ぜんぶなくなっていた。「どうしてくれるの!」と、お母さんにすごくおこられた。

 さいばいキットのトンネルは、「トンネルの近く」においたわっかや筒を栄養にして、育っていく。昨日のじてんでの、あれくらい大きくなったトンネルにとっては、物おきの中が、ぜんぶ「トンネルの近く」ということになってしまったのだろうか。


 そして、今日のトンネルは、もう、ぼくが背をのばして歩いて通れるくらいに、大きくなっていた。お母さんは、「こんな大きなトンネル、うちにおいておけません! すててきなさい!」と言った。それで、しかたなく、夜になってから、お父さんについてきてもらって、トンネルを外にすてに行った。トンネルなんて、どこにすてていいかわからなかったけど、すてるところを人に見られたら、注意されてしまうかもしれないので、人のいない河原の土手まで行って、土手の下の河川じきに、トンネルをすてた。

 今日、トンネルのむこうは、先の見えない、長い長いほら穴のような道になっていた。トンネルをすてる前に、ぼくは、「せっかくだから、トンネルのむこうに行ってみたい」とお父さんに言ってみた。でも、お父さんが、「あぶないかもしれないから、やめなさい。トンネルのむこうに、こわーいおばけが住んでたら、どうするんだ。」と言うので、急にこわくなって、けっきょくぼくは、せっかく大きくなったトンネルを、一度も通らないまま、すててしまった。


 というわけで、トンネルの成長かんさつ記ろくは、ざんねんだけど、これでおしまいだ。


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