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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

助けはこない

助けてなんて言えない

作者: 揚羽

 デイジー伯爵家と我がアネモニ伯爵家は古くから付き合いがあった。それゆえにラズベリルさまと私も幼少の頃から仲良くしていた。せざるを得なかった。

 同じ伯爵家でもデイジー家は裕福で、アネモニ家は貧乏で。仲がいいという理由でたびたび援助を受けていたから。お父様やお母様に子どものころから、ラズベリルさまと仲良くしなさい。ラズベリルさまを立てなさい、といい含められてきたからだ。

 本当は私は、我がままで男性と女性に見せる顔が違うラズベリルさまが嫌い。でもそれを表に出せない。出してはいけない。

 デイジー伯爵家からの支援がなくなれば、我が家は立ちいかなくなる。だから自分を殺すしかない。



 私が転落への道を歩み始めたのは、ラズベリルさまのお願いからだろう。

 私と同じ立場である令嬢たちと共にラズベリルさまをいじめ、それの元凶をマーガレット侯爵家令嬢であるミラージュさまに指示されたことにせよ、と……。

 たじろいだ私たちに、ラズベリルさまは笑いながら言った。

「やれないっていうならしょうがないわね……あなたたちの事はお父様に伝えておくわ」

 そういわれたら、やらないわけにはいかない。

 そして私たちは動き、その結果学園からマーガレット侯爵家令嬢はいなくなった。


 ……少しだけ、言い訳をさせてほしい。

 私たちは、殿下とラズベリルさまから、ミラージュさまは話し合いの結果学園を辞して領地に戻った、と聞いていたのだ。

 だからマーガレット侯爵家次期当主殿が事情を聴きにいらしたとき、私たちは嘘を突き通そうとした。

 嘘は突き通せば真になる。だから……


 次期当主殿がミラージュさまの現状を口にしたときに心底驚いた。

 そんな、ミラージュさまが殿下に捕らわれたなんて、知らない。ホールでの出来事の後、殿下は兵士たちにミラージュさまをつれていけ、と言っていた。捕えろとは言っていなかった……!

 だから私たちは、あの後殿下たちとミラージュさまが話し合いをした結果ミラージュさまが学園を辞したのだと思っていたのに……!


 そして、我が家の現状を把握したうえで本当のことを口にすればデイジー伯爵家ではなくマーガレット侯爵家が私たちの家に援助をしてもいい、と。

 だが言わないのであれば、どんな手を使っても家ごと潰す、と――

 

 私たちは、ラズベリルさまに飽き飽きしていた。なのでその話に飛びついた。

 もうラズベリルさまの我がままに振り回されたくなかった。自由になりたかった。

 本当のことを話した結果、次期当主殿は激高した。当たり前だと思う。

 表向きは冷静を装っていたように思う。だが周りの空気の温度が下がったように感じられたのだ。

 全身に鳥肌が立ち、歯がカチカチと鳴った。恐怖で体が震えた。

 その時、学園長室の扉が叩かれ男が入ってきて次期当主殿に手紙を渡すとさらに温度は下がった。

 手紙をぐしゃぐしゃにし、学園長に投げつけて部屋を出て行った。

 


 ミラージュさまが私刑をされた、と時期当主殿から聞いた。殿下の領地にて、首を……と聞いて私は倒れそうになりぐっと足に力を入れて耐えた。

 そして私たちは城に呼ばれた。


 私たちの罪が詳らかにされる。お父様とお母様が嘆いてるのを見て、少しだけ様を見ろと思った。

 私の命も今日で終わるのだろう。

 死後の世界がもしあれば、そこでミラージュさまに心から謝罪をするつもりだ。

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