Data4.Battle
「私から行きます。」
そう言って銃を構えたのはスーだった。
スーはC級スナイパーの中ではトップクラスの実力を持っている。ルキナから聴いた話だった。
特別な力を持っているわけではない。忍耐力や集中力が並の隊員以上。いや、もしかしたらA級隊員以上かもしれない、と言っていた。
実際スーは、あの言葉を発してから一言も喋っていない。それどころか、その場から一歩たりとも動いていなかったのだ。
スーの目線は、あのエネミーの喉元を向いている。その瞳が凛々しく見えたのは気のせいだろうか。
俺達も攻撃のチャンスを伺っていた。撃ち貫いたとしても生きている可能性がありえるからだ。
そして…スーの指が当たっている引き金が…引かれた。
凄まじい音が静寂をぶち破る。弾丸は見事に喉を貫いた。
「当たった!」
隊員がそうつぶやく。だがその瞬間、エネミーがこっちの方を向いた。
「…ッ!突撃しろ!スナイパーは他の場所へ!!」
銃撃が始まった。今この場を包むのは銃声しかない。
エネミーは1体のみ。隊員達の攻撃は確実に当たっていた。はずなのに。
「な…何であいつ…あんなにピンピンしていられるんだ!?」
ロニの叫びが響く。そう、エネミーはそう簡単にくたばらなかった。もしかしたら、あいつにとっては、かすり傷程度のものなのだろう。
となると…あれしか方法がない。
「近接戦闘で行く。ルキナ、援護を頼むぞ。」
「え、ちょっと!トワ!?」
ルキナの叫びなど気にしていられるか。俺はエネミーの身体を斬りつけた。
「ウオオオオォォォォォ!!」
だいぶ効いたみたいだ。獣の如くエネミーは吠える。
だがその後、エネミーはありえないスピードで突進し、その場にいた隊員達を吹っ飛ばした。致命傷になっていなければいいが…。
「ったく…、トワーッ!少し離れなさいよーっ!!」
突然ルキナの叫びが響いてきたかと思うと、そこから飛んできたのは…手榴弾だった。
「伏せろ!それかどこか遠くへ!!」
その直後、広範囲にわたり爆発した。
爆風がだいぶおさまったころ、隊員達は次々と起き上がる。
「やけくそだったけど…何とかやれたでしょ…。」
「ああ、そうだな。」
その時、1人の隊員が血相を変えて、こちらに向かってきた。
「トワさん!あ、あのエネミー…まだ生きています!!」
その瞬間、エネミーの奇声を上げるのが聴こえてきた。全く…まだ終わらないのか…。
「また援護を頼む。」
そう言った後、俺は再びエネミーのいる場所へと向かった。
エネミーは相当のダメージを喰らっていたらしく、足元がふらついていた。あの足を狙えば上手くいくかもしれない。
早速斬りつけようとしたが、エネミーの動きが早く、ついていけない。クソッ…何とかならないのか…?
その時だった、エネミーの足を弾丸が貫いたのだ。エネミーはドサッという音を立てて倒れた。
「俺のことも忘れないで下さいよ。」
そう言って現れたのはロニだった。後ろには何故かスーがいる。
「こいつにも手伝ってもらったんですよ。おかげでこの通りというわけです。」
俺が質問をする前にロニが説明してくれた。
その後、俺はあのエネミーの左胸に、銃口を向ける。
「これで終わりだ。」
そして、俺は引き金を引いた。
朝日が昇るころ、俺達は本部へと帰還した。幸い大きな損傷を出した隊員がいなくてよかった。俺はそう思っている。
あのエネミーはクレハ達検査員によって調べられたが、結局普通のエネミーと変わらないというので間もなく処分された。
エデン博士が判断なのだ。これで良かったと思っている。
こうして、任務は無事に終了した。