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とある街にて。降りしきる雨の中、ある人をひたすら探し続ける者達がいた。「アーク」の調査隊である。

ある人とは、数日前突如として行方知れずとなった、エデン博士だ。エデン博士の反応が出たこの街を、ずっと前から調べているのである。

エデン博士は一向に見つからない。だがこの時、調査隊はある違和感を感じていた。

それは、エネミーが全く出現しなかったことである。どのエリアに行っても必ずエネミーはいるというのに、何故ここだけ見つからないのだろう?そんな不安に駆られつつあった。

だが実際、調査隊にとっては好都合だった。余計な戦闘が無いからである。一応調査隊の中には何人か戦闘員がいるが、今回は安全だった。

あれから2,3時間は経っただろうか。そんな時に、調査隊の1人があるものを見つけた。

「これは…!!おい、誰か来てくれ!!」

声に応じて、隊員達が集まる。彼らはその【あるもの】を見た瞬間…表情が固まった。

「す、すぐに本部に連絡を!」

「了解!!」

この場はあっという間に騒ぎ出す。彼らが見たもの、それは…。

無残な姿に変わり果てた、エデン博士だった。


「こんな事になるとは…。もう少し早く手立てを講ずるべきだったか…。」

アーク本部基地、会議室にて。落胆した口調でそう言ったのは、アークの総司令だった。

エデン博士の死体が見つかってから2日後、アークの主要メンバーが全員集まっての会議が行われていた。

その場には俺も呼ばれてはいたが…隊員は呼ばなくてもいいだろう。そう話したが「まあ一応代表として、みたいですよ。」とアリサに言われ、今に至る。

「エデン博士の死については、いくつか疑問が。」

そう言ったのは、エデン博士のガードマンだった。

「エデン博士は、普段外に出るときは私達ガードを必ず1人は連れていくのですが…、その日に限って呼び出しがなかったんです。」

「ガードは、10人位いるって聞いたことあるけど、その人達にも呼び出しがなかったって事?」

「ええ。しかも、ガードは研究室にもいるんです。それなのに何故…。」

だいぶ悩んでいるようにも見えた。これからどうなるのかは分からんが、その前にこの出来事だ、何とか片付けなければ。

「…死体検査についてはどうなっている?」

俺は隣にいた、検査員の隊長である女…クレハに話を訊く。

「進展ナシってところね。まだ始まったばかりだから、よく分からない…あら?」

クレハが何かに気付く。すると、いきなりドアが開いた。

「会議中申し訳ございません!総司令に見てもらいたいものが…!」

「私に…?何かあったのか。」

ドアを開けたのは検査員だろう。そして、そいつの手には布で包まれた、何かが握られていた。

「はい…エデン博士の死体を調べてみたら…こんなものが。」

そう言って検査員は布を取り始める。そこにあったのは、血に染まったデータチップだった。

「こ…これは一体…?!」

「調べたところ、恐らく音声データではないかと…とにかく、機材を持ってきます!」

そういって検査員は部屋を飛び出した。

「相変わらず、騒がしいわね。」

クレハがのんきに呟く。おいおい、こんなのでいいのか?そう思っているうちに機材が運ばれてくる。

「上手く再生できるかしら…。」

「血で染まっていたからな。多少、ノイズは入るんじゃないか?」

「…それもそうね。」

そして、音声が流れ始めた。案の定ノイズは入ってはいたが、ほとんどは聞き取れる。

音声は以下のように続いた。


『アークの諸君…。まず、謝っておきたい事がある。私は禁忌を犯してしまった…。あるエネミーを研究していたときに、私はエネミーをアークの兵器として扱う事を考えた。当然他の者たちは反対した。だが…危険なものだと分かっていても…どうしても実現させたかったのだ。ずっと1人で研究し続けた結果、ついに私は試作版(プロトタイプ)を完成させた。その試作版は他のエネミーを捕食し、強化する能力を持っている。しかし…その試作版も他のエネミー同様の凶暴性を持ち、そのまま外へと逃げた…。もう分かっただろう、ここから先は。私は1つ、頼みたい事がある。あのエネミーを始末してほしい。私はもう今は、逃げる事しか出来ないんだ…。』


音声が途切れる。どうやらここまでらしい。

会議室には静けさだけが残っていた。エデン博士の言葉が衝撃的過ぎて、誰も何も言えなかったのだ。

そして、この沈黙をぶち破ったのは、総司令だった。

「トワ、ここに残っていろ。後の者は退室してもらいたい。」

そう言った後、俺と総司令以外は全員出ていくこととなった。そして、話が始まる。

「トワ、君がここに残ってもらった理由…分かるな?」

「はい。エネミーの討伐ですね。」

「そうだ。今夜出発し、出来れば始末してもらいたい。その時のメンバーは君が決めてくれ。」

「了解。」

その後、俺は会議室から出た。


夜、俺達はエデン博士の死体が見つかったあの街にいた。

「ねえ、本当にこんな場所にいるのかしら?さっき話してくれたやつ。」

そうルキナが尋ねてくる。やつというのは討伐するエネミーのことだ。

俺は昼間のうちに出来るだけ多くの隊員を集めた。その数ざっと30人程度。その中には成績の優秀だったC級隊員も混ざっている。

今は5,6人のグループに分かれてあのエネミーを探している。

「トワさんも大変ッスね。いきなり任務の隊長になるなんて。」

「そのうちお前も来るときはある。気を抜くなよ、ロニ。」

その時、向こう側から誰かが走ってくる音がした。

「!スーか。何があった?」

「エネミーが見つかったみたいです!アリサさんから連絡がありました。」

「分かった。今行く。」

そうして、俺達4人はその見つかった場所へと向かった。


見つかった場所に到着すると、他の隊員が戦闘態勢をとっているのが目に見えた。そして、もう1つ目に飛び込んできたのは異様な光景。

「な…何なんだ、あれ…。」

エネミーがエネミーを…喰らっていた。やはりあれが、試作版のエネミーなのだろう。

だが、こんなことでひるんでいる時間はない。

「いくぞ…皆。」

そして、戦いのときが始まる。















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