表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

Data1 . Ark

風が吹き荒れている。俺はいつまでここにいればいいんだ?

ここには今、俺以外誰もいない。あるとすれば血まみれになったエネミーの残骸だけだ。原型はもう無くなっている。

今俺がいるこの…元都市には、エネミーが所狭しといた。だが、今はもういない。俺がこの手で全滅させたからだ。これで少しは落ち着くだろう。

そう思っていたとき、耳に内蔵されたスピーカーから声が聞こえた。

『待たせてしまって申し訳ありませんでした‼緊急で他の隊員のオペレーションをしていたので…。それで、そっちは大丈夫でしたか?』

「問題ない。エネミーの情報をくれ。」

『今は、出現率0%です。一度本部に戻って来て下さいね、トワさん。』

そう言って、通信が切れた。これでやっと戻れそうだ。

改めて、俺の名前はトワ。そして、エネミー殲滅組織「アーク」に所属するアンドロイドだ。



時刻が16時を少し過ぎた頃、俺は「アーク」の本部基地に戻った。そして、それと同時にドタドタという音が聴こえてくる。

「お帰りなさい。トワさん。」

音を立てていた張本人が、そのことを気にしないかのように、微笑みながら言った。

「アリサか…。廊下を歩くときは静かにな。」

「えへへ。でも、無事に戻ってきて良かったです。」

俺がアリサと呼んだこの女は、クローンで「アーク」のオペレーターである。

「アーク」は基本、戦闘員はアンドロイド、オペレーターなどのサポートの係りはクローンといった割振りになっている。その理由は単純で、「アンドロイドは大破しても問題ないが、クローンは死んだらどうにもならない。」からである。

話はアリサとの会話に戻る。

「そういえば、緊急で他の隊員にあたっていたって言っていたな。何かあったのか。」

「新人隊員の機体が、エネミーの攻撃で大破したんです。その場にいた隊員に、退散の連絡をしていました。」

…どうも腑に落ちなかった。俺たちアンドロイドは、拳銃やマシンガンなどといった銃火器を、基本として扱っている。何故大破したのかを訊いた。

「なんか、調子に乗ったって言ってましたよ。」

「ハァ?どういうことだ。」

「入隊試験の成績が少し良かったのを理由に、近接用の武具(ウェポン)を使ってたみたいなんです。」

「そいつは…、新人って言っていたな…。そんな奴がどうしてそれを?」

「そこまではまだ分かんないです。でも、数週間前にいくつか近接用武具(ウェポン)が無くなっていたっていう情報がありました。」

「それが関連してしていると思っているのか?」

「…おそらくは。」

呆れてものが言えなかった。この組織も随分とナメられたものだと、俺は思っていた。

一度アリサと別れ、俺は休憩所へと向かった。この場所は普段は、隊員やサポートの面々の出入りが激しいが、今回はやけに少なく感じた。

椅子に腰かけた直後、「トワ。」と俺を呼ぶ女の声がした。振り返るとそこには、見慣れた奴が立っていた。

「随分息が上がっているようね。あんまり無理しないようにしなさいよ。」

「分かっている。余計な口を出さないでもらおうか。」

「強がってるわね。フフフ…。」

この女の名はルキナ。俺の同僚であり、そして幼馴染である。同じ研究所で、3日ほど目覚めるときが違っているこそあるが、幼馴染であることは間違いないだろう。

「そーいえば、なんか新人の子が大破した状態で担ぎ込まれてきたけど…。なんか知ってる?」

「ああ…アレか。アリサから話を聴いた。」

そうして、俺はルキナにその出来事をすべて話した。くだらん事だと思いつつも、最初から最後までを。

話終わり、ルキナの様子を見ると、こいつは腹をかかえて大爆笑していた。

「なるほど、要はそいつは自分はやれるってとこ見せたかったのね。…フフッ。」

「近接用武具(ウェポン)はA級隊員の特権なんだがな…。扱いを間違えれば自分の首を絞めることになる。」

「まあ、あんたは一応武具(ウェポン)銃剣(ブレードガン)(タイプ)だし…、後輩たちにとってはいい手本よ。」

「その代わり頭使わなければ駄目だ。俺にもアレはまだ扱いきれん。」

「…あんたが言うセリフ?」

ちょうどそのとき、けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。どうやら休息もここまでらしい。

俺とルキナは、オペレーター室へと向かった。

…嵐の前の静けさとはこういうことだったのだろうか。俺たちはその後、思いもよらぬ出来事を目の当たりにすることとなる。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ