その8:同時刻、ハンターとファリスは
「なるほどな、会食で狙いをつけるってわけだ」
そこは、薄暗い明かりに照らされた場末のバーだった。すでに運ばれていたウイスキーのロックを飲みつつ、ハンターが口を開く。
隣の席にはファリスがいるものの、他に客はいなかった。ファリスの話ではマスターの了承を得て、しばらく開店を見合わせてもらっているらしい。
ファリスの目の前に、赤いカクテルが運ばれてくる。透明感の強い液体の底に、枝のないさくらんぼが二つ沈んでいる。シスターセルフィッシュという名のカクテルだ。
「そうだ。会食では各部隊が四人ずつ、計十六人が会場にいる。その中のだれが王を狙っているのかは、当然のごとく分からない」
「それで、おれになにを望むんだ? まさか試験を受けて会食の場に来いとか言うんじゃないだろうな?」
疑問形にして聞いたものの、おそらくそうだろうとハンターは確信していた。シングマス五世が狙われているという話であれば、当然ファリスたちの使命は王の命を守ることだ。
そしてそれを手伝うならば、会食の場に入り込むしかない――つまり、試験を受けてベスト四に残れということになる。
「分かってるくせに、わざわざ聞くんだな」
ファリスもハンターが理解していると分かっていたようだ。シスターセルフィッシュに口をつけ、小さく息を吐く。
「本当なら、こんなこと特殊部隊だけで解決したいんだがな」
「各隊長の同席はあるはずだ。それで大丈夫だろ?」
「相手が何人か分からないんだぞ。今回は特に多いと聞いている。ハンターが残れば同時に怪しい奴も一人消えるんだ。それに人手は多いに越したことはない」
「だったら特殊部隊の隊員を集めればいいじゃないか」
「そんな仰々しい会食があるか? それに……」
ファリスが一呼吸おいてから、ハンターから目をそらしてぼやいた。