その5:ファリス=セルフィッシュ
数分後、三人に近づいてくる一人の女性がいた。腰まで伸びた赤髪が左目を隠し、手入れがよく行き届いているのかふわふわと揺れている。
黄色の上着に足首までの長いスカート、左手の肘には肘当てが、二の腕には青い腕輪がついている。そして右手には一メートル半はあるであろうスナイパーライフルが握られていた。
「久しぶりだな、ハンター」
「ファリス……当たったらどうするつもりだったんだ?」
「心配するな。当たらないように狙っている」
ファリスと呼ばれた女性は、スナイパーライフルを肩にかつぎつつ微笑んでみせた。
「あの……どなた?」
たまらずシェラが尋ねると、二人の代わりにそばにいたレッシュが答えてくれた。
「第三特殊部隊の隊長、ファリス=セルフィッシュよ」
「セルフィッシュって……もしかして?」
「そっ、わたしの姉さん」
自慢の家族なのか、レッシュは胸を張って答えていた。言われてみると、どことなくレッシュに似ている気もする。
「きみがシェラか。話は伺っている」
「初めましてファリスさん。シェラフィールです。わたしのことはシェラで結構ですよ」
「ならばわたしもファリスでいい。よろしく頼む」
握手を求めてくるファリスに、シェラは快く応じた。特殊部隊の隊長というとどうしても強くていかつい男を想像してしまうが、ファリスもレッシュもそんな面影はまったく感じさせない。
「ではシェラにはレッシュが説明してくれ。ハンターにはわたしが説明する」
「えっ、まとめて説明してくれればいいんじゃないんですか?」
シェラが尋ねると、ファリスの視線がハンターへと向けられる。まるで許可を得ようとしているかのようだ。
「いくぞ、ファリス」
仏頂面のまま顎で右の道を指すと、ハンターはさっさと歩いていってしまった。このようすではどうやら別々の説明ということになりそうだ。
「というわけだ。頼んだぞレッシュ」
「うん!」
まるで甘えん坊の子どものように元気に返事をすると、レッシュはハンターを追って去っていくファリスに手を振っていた。普段のレッシュとは明らかに雰囲気が違う。
「それじゃあ、行きましょうか」
「行くって、どこへ?」
「行きつけの店があるんだ。そこなら二人きりで話せるからね」
レッシュの案内にしたがって、ハンターたちとは反対の方向へと進んでいく。
ハンターの様子を気にしながらも、シェラはレッシュの後についていった。