表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

その4:頬をかすめる弾丸

「ふう、やっとついたね」

 シェラが周囲を見渡してぼやく。溢れんばかりの人が、道にごったがえしている。マスカーレイドも少なくはないが、ディヴァイナルはその数倍は軽くいっているだろう。

 入り口からV字型にのびていく道に沿って、カラフルな高い建物が隙間なく建てられている。地面も赤や黄色などの色を彩り鮮やかにはめ込み、全体に明るい雰囲気を浮かび上がらせている。

マスカーレイドは地盤の関係で、あまり高い建物が建てられないが、ディヴァイナルは四、五階建ては当たり前のようだ。

宿屋だけでなく、武器、防具などの装備品を売る店から、みやげ物の店まで数多く並んでおり、普通の民家はほとんどない。それもマスカーレイドとは正反対のものだった。

「いまは特殊部隊の試験の時期だから、やっぱり人が多いな。まあ普段から少なくはないが」

 まだあまり機嫌がよくないのか、仏頂面で答える。これから起こる事体を把握しているシェラの全身に、冷や汗が広がっていった。

「あ、来た来た」

 聞き覚えのある声に振り向くと、赤髪のポニーテールに黒の上下といういつもの格好に、緑色の腕輪をつけたレッシュの姿があった。ただいつもと違い、手には封筒を持っている。

「レッシュか。忙しそうだな」

「いやあ、ありがとねシェラ。ハンターを連れてきてくれて」

 ハンターを無視して、シェラと握手しているレッシュ。一瞬カチンときたハンターも、次の瞬間にはレッシュの言葉に関心が移っていた。

「ちょっと待て。連れてきたってどういうことだシェラ」

「えへへ、ごめんねハンター。実はレッシュに頼まれてたの。ハンターを王都に連れてきてほしいってね」

「なんだと!?」

 パッとレッシュを見ると、レッシュは口笛を吹きながらそっぽを向いていた。どうやらシェラの言っていることに偽りはないらしい。

「じゃあ、ディヴァイナルに来たことがないってのは……」

「もちろん嘘よ。傭兵の仕事やってたんだから、ディヴァイナルの場所だって知ってるわよ」

「当たり前じゃない。騙されるほうがおかしいわよ」

 相槌を打ったレッシュに、ハンターの舌打ちが送られる。

「ちっ……この盗賊が」

「盗賊って呼ぶな」

 すかさず訂正をうながすレッシュにも、今回はひるむことなく向かい合っていた。

「今度はなにを企んでるんだ? まさか入隊試験の手伝いをしろっていうんじゃないだろうな?」

「うーん、近からずも遠からずってとこかな」

「いい加減にしろよレッシュ……おれは帰るからな!」

「ちょっとハンター。報酬は?」

「いらん!」

 レッシュを突き飛ばし、ハンターは乗合馬車へと向かおうとした。

刹那、ハンターの耳元でプシュンという風きり音が聞こえた。その直後に地面の石畳がえぐれ、破片が飛び散っていく。

「……レッシュ」

「なぁに?」

 ハンターの聞きたいことを理解しているのか、レッシュはわざとらしく満面の笑みを浮かべていた。

「まさか、いるのか?」

「もちろん。すぐに降りてくるんじゃないかな」

 諦め気味の吐息と共に、ハンターはその場にうずくまった。なにが起こったかわからないシェラは、その場で一人立ちすくむしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ