その3:いざディヴァイナルへ
王都ディヴァイナルへと向かいつつ、通りすがりの乗合馬車を探す。
本来ならマスカーレイドから王都へと向かう乗合馬車があるのだが、シェラの経費の削減というレッシュじみた行為により途中まで歩くことになっていた。
「そうか、王都に行けばレッシュがいるだろうな」
「そ、そうなの?」
すこし慌てながら、シェラが聞き返す。ハンターは怪訝な面持ちでシェラを見つつも話を続ける。
「あいつは第四部隊の隊長だからな。入隊試験の日に席を外すことはないだろ」
「そういえば……」
話の成り行きから思い出したのか、シェラがハンターへと尋ねてくる。
「特殊部隊って何部隊あるの?」
「そんなことも知らないのに、受験に行くのか?」
「だから腕試しだって。特殊部隊に入るつもりなんてないし」
「それならわざわざ、おれを雇ってまで行かなくてもいいんじゃないか?」
ハンターのもっともな意見を、愛想笑いを浮かべる。まるでなにかを隠そうとしているかのようだ。
鼻息をフンと鳴らし、ハンターは特殊部隊について語りだした。
「特殊部隊ってのは、第一から第四まであるんだ。昔は第三までしかなかったんだが、数年前に第四部隊が新設されたんだ。つまりレッシュは第四部隊の初代隊長だな」
「へぇ、若いのにすごいね……」
「まああいつには天性の才能があったからな……盗賊の」
シェラがプッと吹きだす。もしこの場にレッシュがいれば、間違いなく例の言葉が聞けただろう。
「それで第一は剣術、第二は魔法、第三は射撃のエキスパートが集まってるんだ」
「じゃあ第四は盗賊のエキスパートが集まってるの?」
「そういうことだ。今の発言は今度レッシュに伝えておいてやるからな」
「げっ」
自分の発言を棚に上げて、ハンターがフッと笑う。
「各部隊は隊長を合わせて五名が上限で、少ないのはかまわないが五名を越えることはない。途中で欠員が出た場合、部隊員全員の了承があれば、新たに補充ができる。まあ、補充の記録はほとんどないがな」
そこでようやく乗合馬車の姿が見えたので、二人は運賃を払って客車へと乗った。
二人の他に数人の客の姿があったが、共通するのは武装をしていることだった。もしかすると全員王都の試験を受けに行くのかもしれない。
「じゃあわたしは第一部隊を受ければいいのね」
第一部隊という言葉に反応して、じろりとシェラに視線が集中する。緊迫した車内にシェラは萎縮しつつ、小声でハンターに尋ねる。
「だったら、ハンターもついでに受けてみれば? 射撃は第三部隊なんでしょ?」
だが、ハンターはシェラの何気ない言葉にもかなりの遺憾を感じたらしい、キッとシェラをにらみつけると、
「おれはいい」
そう言ったきり、なにを聞いても返事をしなくなってしまった。
「どうしちゃったんだろ……」
わけもわからず、シェラも黙り込む。そのまま二時間のときが流れ、乗合馬車は王都ディヴァイナルの中へと入っていった。