その28:安堵
レッシュの作戦はこうだった。まずはレッシュがシングマス五世たちの真上に、偵察時と同様にして穴を開ける。それからドノヴァンが落雷を起こし、半分だけ天井を壊した。レッシュが穴を開けた場所とは、レジスタンスを挟んで正反対になる。
その物音とガラスのシャワーによって、予想通りレジスタンスはそちらへと注目した。同時にフランカーが室内へと飛び込んできたために、完全にレジスタンスはそちらに気を取られてしまった。
さらにドノヴァンの隣から、ファリスがライフルを使って一人一人の武器を弾き飛ばす。
スナイパーとして幾度もの仕事をこなしてきたファリスにとっても、月明かりは確かにか細い光だ。それでも、真っ暗ではない。
隊長がそれぞれの仕事をこなし、レジスタンスの意識を一方へと向けさせる。それはすなわち、反対側にいるレッシュから注意をそらすことが狙いだった。
レッシュは開けておいた穴からロープを垂らし、悠々とシングマス五世たちの側へと降り立っていた。手を縛られた三人を解き放ち、ハンターにデザートイーグルを渡す。それで全ては完了、レッシュの作戦は見事に決まったのだ。
「さて、いろいろと聞きたいことがある。なぜわたしが暗君なのか、どうして殺そうとしたのか。そして、お前達の背後にいる黒幕は誰なのか。ゆっくりと聞かせてもらおう」
フランカーがすでに呼んでいたのか、衛兵達がレジスタンスの面々を連れて、部屋から出て行く。それと入れ替わるように、ファリスが部屋の中へと飛び込んできた。
「シングマス王。よくご無事で……」
シングマス五世の前で、ファリスが膝をつく。
「ああ、助かったよファリス」
「礼ならレッシュに言ってください。レッシュが救出作戦を一人で考えたんです」
「そうか。ありがとうレッシュ」
「もったいないお言葉ですよ。わたしはお姉ちゃんを救いたかっただけで、シングマス王はどうでもよかったんですから」
「そ、そりゃないだろ、レッシュ……」
シングマス王の顔が青ざめると、とたんに全員の口から笑みがこぼれる。
「冗談ですよ。お姉ちゃんを救っただけでいいなら、お姉ちゃんを呼び戻した時点で見捨ててます」
「そりゃそうだな」
相槌をうつハンターに、全員の顔がほころぶ。ようやく確保できた自身の無事から、自然と漏れた笑顔だった。