表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

その22:異常事態

だが――、

「レティシア?」

 耳元で名前を呼ばれ、レティシアは我に返った。心配そうにレティシアを伺う仲間と、怪訝そうに見つめるシングマス王とその配下。

「ああ、すまない……」

 レティシアは仲間を手で制すると、きつい眼差しでシングマス王を睨みつけた。

「お前をここで殺すのはたやすい。だが、それで許されるわけがない。よく自分の悪行を思い出し、後悔に後悔を重ねるがいい。それからなぶるように殺してやる!」

 そのままレティシアは見張りを続け、メンバーの一部に食事を取らせ始めた。運ばれてきた料理はシャンデリアの下敷きになっているため、それぞれが持参した携帯食を頬張っている。

 医者にはすぐ殺すようにといわれていたが、それではレティシアの気がすまなかった。

『これでいいんだ。懺悔して、土下座して、自分の考えを悔い改めさせてやる』

 集落に残した、病気に苦しむ娘の顔を思い出しながら、レティシアは唇を噛んだ。


 シングマス五世の暗殺を企んだ二人を、牢屋へと入れたレッシュとフランカー。会食場へと戻る際に、不穏な空気を読み取っていた。

「何かあったんですかね?」

「かもな……」

 二人は顔を見合わせてから、走って会食場へと向かった。

入り口の前へと辿り着くと、メイドの姿をした女性が三人ほど、首をかしげている。

「どうした?」

「あ、フランカーさん。よく分からないんですが、会食場の扉に鍵がかかってるんです」

「鍵だと?」

 フランカーはノブに手をやり、捻ってみた。確かに鍵がかかっており、開きそうにない。

「わたしの出番ですか?」

「ああ、頼む」

 背後から乗り出してきたレッシュが、懐からキーピックを取り出し、鍵穴へと差し込んだ。

だが、二、三秒ですぐにキーピックを引き抜くと、首を横に振ってみせた。

「どうやら、鍵穴になにか詰められてるみたいです。粘土のようなものかと……」

「ってことは……」

「間違いなく、中でなにかが起こって、誰かが故意に扉の鍵を開かなくしたんでしょう」

「くそっ、無理やりこじ開けてやる!」

 フランカーがノブに力を込めると、ミシミシと扉のきしむ音が聞こえてくる。

「ちょっ、待ってください、フランカーさん!」

「だがレッシュ、早くしないとシングマス王が!」

 声を荒げるフランカーを、レッシュは手で制した。

「何かあったのは事実です。ですが、中の連中が目的を達成してないのも事実です。でなければ扉に鍵をかける必要など、ないですからね」

「た、確かにそうだな……」

「中の状況も分からないのに、いたずらに飛び込んでも危険なだけです。シングマス五世が目当てなら、飛び込んだ瞬間に殺されるかもしれません」

「ああ、まったくだ。すまなかったなレッシュ。つい頭に血が上っちまって」

 頭に手をやりながら、フランカーが謝ってくる。レッシュとは年の差が親子ほど離れており、本当なら若造が!と一喝したいところだろう。

 だが、同じ特殊部隊長としての信頼がフランカーを謝らせた。レッシュは頬を緩めて、首を振る。

「いいえ、フランカーさんのシングマス王を守るという気持ちが、すごく伝わってきましたよ」

「それはいいとしてだな。どうするつもりだ? まさかこのまま指をくわえているわけにもいかないだろ?」

「大丈夫です。わたしが中の状況を調べてきますから。フランカーさんはここで待っていてください。もしも中で銃声や乱闘の音が聞こえたら、その時は迷わず飛び込んでください」

「ああ、分かった」

 フランカーを置いて、レッシュは足はやに廊下を駆け抜けていった。目的地は一つ、中の状況を把握できる場所だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ