その18:会食会場へ
「シェラ、起きて、大丈夫?」
体を激しく揺すられて、ようやくシェラに意識が戻った。装備を着用したまま寝ていたせいか、体の節々に鈍い痛みが走る。
「うーん、なにぃ?」
目を開けると、そこにはレッシュの姿があった。不安げに覗き込んでいたものの、目を開けるとすぐに微笑み返してくる。
「まったく、心配したでしょ? メイドが呼びに来ても反応がないって言うから」
「えっと……なんだっけ」
「まったく。もうすぐ会食が始まる。チャッチャと目を覚まして、しっかり仕事をこなしてもらわないと困るわ」
「あぁ、うん、ごめんなさい……」
寝ぼけ眼で謝りつつ、シェラがふらつきながら立ち上がる。そのままレッシュに連れられて、部屋の外へと出ていった。
弧を描いた廊下を進んでいくと、突き当たりに両開きの扉が姿を現した。レッシュが両手でゆっくりと開くと、中は縦長の部屋だった。
ぶら下がったシャンデリアが、室内全体を照らす。さらに天井はガラス張りで、きらめく星空のようすが伺える。
部屋の中央には、テーブルクロスに身を包んだ縦長のテーブルが、青白い光を放っていた。
すでに集まっている面々が、シェラとレッシュを見やる。戸惑うシェラにレッシュがテーブルの右の長辺を差した。
「シェラフィールさんは、そこに座ってください」
急に丁寧な口調になったレッシュが、空席の一つを指差す。そこがシェラの席なのだろう。
急いで席へと座り、改めて全体を見渡す。
テーブルの長辺部分に、各八人が向かい合って座っている。シェラの横辺りは、予選会場で見たメンバーなので、格部隊のベスト四が固まって座っているらしい。
短辺部分には三席と二席があり、三席のほうは真ん中が空席になっていた。空席の両隣は予選で挨拶をした剣士――フランカーと、赤いローブと黄色の腕輪をつけた魔術師が座っている。おそらく彼が、第二部隊の隊長なのだろう。
二席のほうはレッシュとファリスの姉妹が座っている。ファリスの近くには、ハンターの姿もあった。
「やっぱり来てたんだ……」
ほくそ笑んでいると、ハンターが目を合わせてくる。だが、シェラが反応する前に、目をそらしてしまった。
「どうしたんだろ、仏頂面で」
いろいろ話も聞きたかったが、シェラとハンターの席はかなり離れている。会食後に話をするしかなさそうだ。
「それでは今から、シングマス五世が入場される。ご起立脱帽のうえ、上座に注目してくれ。
また、会食中は武具の類にはいっさい触れぬようお願いする」
ファリスの挨拶に合わせて、全員が立ち上がる。ローブを身にまとっていた魔術師も、頭巾を取って顔を露出させた。
シェラも慌てて立ち上がり、空席へと注目する。正直に言うと、こういった堅苦しい場所は苦手だった。必要以上に緊張して、体を萎縮させてしまう。
上座後ろの扉が開き、豪奢な礼服に身を包んだ男性が、姿を現した。レッシュに写真で見せられた男性に間違いない。
今までにもまして、室内の空気に緊張が走る。