その17:入城
城までの道のりを案内図を頼りに進み、門番に招待状をみせる。
招待状を確認すると、門番は城の中へとシェラを招き入れてくれた。
「シェラフィール様、こちらでございます」
メイドに案内され、キョロキョロと落ち着きなく城内を見渡しながらついていった。
金縁に赤い色の絨毯が、フロア全体を埋め尽くしていた。左右にのびる階段が、勢いよく吹きだす噴水を囲んでいる。
階段を登り、二階にあった扉に入ると、弧を描いた廊下がずっと奥まで続いていた。
内側にはいくつもの扉がついており、外側には窓が備え付けられていた。そこから外を見ると、明かりの灯った城下町が広がっている。夜になっているにもかかわらず、活気は未だ衰えていない。
「こちらの部屋をお使いください」
「うわぁ……」
案内された部屋を覗いたシェラから、思わず感嘆の声が漏れる。
床に敷かれた絨毯はフロアよりもフカフカで、ブーツを履いて入るのを躊躇してしまいそうだ。ベッドはふだん家で使っている物の、数倍の厚みがある。
部屋に飾られている湖畔を描いた絵画は、芸術にさほど詳しくないシェラでも、値打ちものだと感じさせられた。
「少しの間、こちらでお休みください。会食の準備が整い次第、呼びに参りますので」
九十度の礼をされて、慌ててシェラもお辞儀する。
だが、メイドは無表情のまま、部屋から去っていってしまった。
あとに残されたシェラは手持ちぶさたになり、とりあえずベッドへと腰をかけた。ふかふかの布団が、シェラの体を弾ませる。
「ハンターは結局、来たのかしら……」
不安に捕らわれつつ、ベッドの上へ寝転がる。柔らかな布団が、シェラの体を沈ませていった。
「何も起こらなければいいけど……」
シェラにとって一番ありがたいのは、シングマス五世を狙う連中が一人もベスト四に残っていない状況だ。何事もなく会食は終わり、報酬をもらうことが出来る。
ただ、そううまく話が進むわけもないだろう。もしそんな軟弱な連中なら、レッシュやファリスはハンターやシェラを雇ったりはしない。自分達だけで解決するはずだ。
「気合……入れなきゃ……」
言葉とは裏腹に、心地よいまどろみがシェラを襲ってくる。
まぶたを閉じると、真っ暗な世界が目の前に広がっていった。試合の疲れも重なったシェラは、そのまま深い眠りへと落ちていった。