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その15:ハンターの場合

「ショアン=フィナーゼ、クラウディ=アルティメット、入場!」

 お目当ての選手が呼ばれ、ファリスは目をしかめて凝視した。各会場に用意された、隊長専用の席からは少し遠いが、顔は容易に確認できた。

間違いなくクラウディ=アルティメットの正体はハンターだった。

「頼むぞ、ハンター」

 ファリスが願う中、種目が発表される。

 第三部隊での入隊試験は、ターゲットを射撃で狙うという簡単なものだ。ただし、受験者には直前まで、その距離やターゲットの大きさは発表されない。

 その上、それらは毎回違うよう設定されている。直前の受験者のようすを伺って、参考にというわけにはいかないのだ。

「距離、二十五メートル。ターゲット三角」

 冷静な口調で審判が告げると、所定の位置にターゲットが五つ現れる。先攻はショアンだ。

「相手が悪かったな。俺は巷ではちょっとした有名人でね。この程度の試験は、目をつむってでも出来る」

 言いながら、立て続けに五発の弾丸を発射する。その全てがターゲットを捕らえ、風穴を開けた。

 観客から聞こえる、悲鳴に近い歓声。どうやら相当腕の立つ、有名人らしい。

「さあ、恥をかく前にギブアップしたほうが……」

 ショアンが半笑いで、得意げに語っている途中にもかかわらず、ハンターのデザートイーグルが五度、咆哮を放つ。

 ショアンと同じく、その全てがターゲットへと直撃する。審判団が二人の破壊したターゲットを確認してから、高々と上げた手をハンターへと向けた。

「勝者、クラウディ!」

「ば、ばかな!」

 取り乱したショアンが、審判団の確認したターゲットへと駆け寄る。確かに二人の銃弾は全てターゲットを捕らえていた。

 だが、弾痕がまばらなショアンに比べ、ハンターの弾痕はすべて的の中心に形成されていた。的を重ねると、まるで一発で五枚を打ち抜いたような――それだけ正確な痕跡を残していたのだ。

「相手が悪かったな……」

「く、くそっ!」

「クラウディという名を聞いても誰か分からない時点で、お前はガンマンとしてはモグリなんだよ」

「クラウディ……まさか! しかし、あの方は死んだと……」

「生き返ったんだよ。期間限定でな」

 ちらっと観客席を見やる。隊長のために作られた特等席でファリスは微笑み、ハンターへと頭を下げた。

「まったく、俺より年上のくせして、世話が焼ける……」

 ショックで膝をついているショアンを背に、ハンターは控え室へと戻っていった。ライバルの出現とショアンの敗北に、周りがざわめき立つ。

 それでもハンターは気にせず、鼻歌を歌いながら待機するのだった。


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