表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

その12:朝食

「さてと、昔話は終わり。朝ごはんでも食べましょうか」

「う、うん」

 シェラが窓の外に目をやると、きらびやかな日光が室内へと降り注いでいた。それが逆にレッシュのかげりを、大きくしている気がした。

 階段を下りていくと、リビングではファリスがコーヒーを飲みながら、新聞に目を通していた。整った服装が相成って、大人の女性の雰囲気をかもし出している。

「おはよう、ファリス姉さん」

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 新聞を折りたたみ、ファリスは二人にコーヒーを入れてくれた。二人の朝食の準備は、レッシュがキッチンで簡単に作っている。

 メニューはトーストとハムエッグ。それに付け合せ程度の生野菜だった。

「よく眠れたかい? シェラ」

 微笑みながら、ファリスが尋ねてくる。柔らかそうな赤髪に整った顔立ちは、改めて観察していたシェラの胸を高鳴らせた。

「えっ? あっ、はい。一応……」

「レッシュから話は聞いているが、なるほど。相当腕が立つようだ」

「そ、そんなことないです……」

「謙遜することはない。もっと胸を張って、自信を持てばいい。傭兵という仕事を一生ものにしたいのなら、なおさらだ」

 すぐ横にいたレッシュに顔を向けると、レッシュはウインクをして見せた。どうやらシェラを腕の立つウエイトレスとしてではなく、傭兵として紹介してくれたらしい。

「だが、油断は禁物だぞ。特に第一部隊は命がけの勝負だ」

「はい……」

「もっとも、最初から殺しを目的とした受験生でもなければ、命を奪おうとまではしてこないがな」

「が、頑張ります」

 ファリスはそれだけ告げると、椅子から立ち上がった。

「もう行くの?」

「ああ、ハンターがいるかどうかの確認もしたいからな。遅刻だけはするなよ、レッシュ」

「分かってるって、いってらっしゃい」

 無邪気に手を振るレッシュに応えてから、ファリスは部屋の外へ出て行った。玄関の扉が開き、閉じる音が続いて聞こえてくる。

「さてと、それじゃあご飯を食べたら……」

 レッシュが告げつつ振り返ると、シェラはすでに完食していた。口元をナプキンで拭いつつ、満面の笑みを浮かべている。

「えっ、どうかした?」

「いや、なんでもない」

 レッシュは苦笑いをしながら、自分の朝食を急いで胃の中へと押し込んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ