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プロローグ
満月の夜。
月の光は人の心をかき乱し、狂気へと誘う。
満月は、昔から狂気や凶兆の象徴とされてきた。
赤い月が輝く夜。
死を忘れた彼らが鮮血を求め、夜の闇をさまよう。
血の色によく似た月光が彼らの狂気を解き放つ。
彼らを人は吸血鬼と呼んだ。
気が付くと彼の手を取っていた。体温のない冷たい手。
今にも泣きそうな顔。なんて悲しそうな顔をするんだろう。
切なくて胸が苦しくなる。そんな顔見たくないのに...。
あなたに笑っていて欲しい。私が見たいのはそんな顔じゃない。
あなたの笑顔が見たいの...。
どうしてそんな顔をするの?私はまだあなたの笑顔を知らない。
どうすればあなたの笑顔が見れるの?
どうすればあなたの心に近づけるの?
こんなにも傍にいるのに、心の距離は...。
お願いだからもう1人で抱え込まないで。あなたは優しすぎる。
きっと、あなたは気づいていないだけ。
こんなに冷め切った体なのに、あなたの腕の中はとても暖かい。
もう少し。ほんの少しだけでいい。この温もりを感じていたい。
例えあなたが人ではないとしても...。