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危機を救う者

 隼人は完全に道に迷っていた。

 通りがかりの人々を片っ端から捕まえて目的の店の名を告げるが、一人として同じ方向を示した者がいない。知らないなら知らないと言えばいいものを、酷いと知らぬ間にいかがわしい店に引き込まれそうになる。

(まったく、都に出てきたばかりのお上りさんだと思ってからかってやがる)

 昼までは見かけなかったいかにもガラの悪そうな連中が飲食店の脇にたむろしているのを見て隼人は舌打ちをした。

 確かにこちらの世界のことには不慣れだ。しかし隼人は夜の歓楽街に戸惑っている訳ではない。この享楽的でありながらエネルギーを内包する人々が集まる雰囲気は馴染みのあるものだった。

 両親の離婚ののち隼人は夜の外出が習慣になった。何度か不良に絡まれたり警察に補導されそうになったこともある。特に悪さをする訳でもなかったが、家での居場所を見いだせなかった隼人はそのまま目的もなく放課後の時間をネオンの元で過ごす日々が続いた。

 一時期、少々危ないアルバイトに手を染めたこともあったのだが、隼人の知らない所で弟のところにうさんくさい連中が顔を出したと聞いて直ぐに足を洗った。

 それ以来、夜の街からは一歩ひくようになっている。

 一見何気なくみえる華やかなな街の姿。しかしこの街にも何かを持て余した若者がくすぶっているのが眼の端に止まる。彼らを相手に商売をする大人たち。そして女たち。

 日が落ちてから宮殿の外で、とユーアンは言った。別れ際に店の簡単な位置と名前を伝え、宮殿の外に出る方法を教えると、香草酒が美味いんだ、と付け加えた。

 別に酒に釣られた訳ではなく、そのときに意味深なユーアンの表情から何かしらの匂いを感じ取ったのだ。

 昼間の占いが気にならないと言えば嘘になる。たとえ迷信だと思っていてもあの占い師の少女の取り乱しようはこちらの心構えも乱されようと言うもの。

 肝心の話も決着がつかずじまいで、リステリカは傍目から見ても納得がいっていないのがあからさまだった。

(せめて文字が読めればな)

 そうすればいちいち人に訊ねずとも通りの看板を読むことが出来るし、必要とあれば書物を読んでこの世界について学ぶことも出来る。いつまでもリステリカやウライに頼ってばかりではそれこそ本当のお上りさんではないか。

 今一度気を取り直してユーアンのいる店を探しはじめたときだった。

 隼人の視界の端をかすめたのは人の頭の群れの中に見覚えのある飾り帽子。背の低いそれはすぐに人の間に隠れてしまったが、あの身長とこぼれた金髪では見間違えようがない。

 どうしてこんな場所に。第一、どうやって宮殿を抜け出してきたのか。

 声をかけようと口を開いた隼人の脇を、その帽子を追うように三人の男たちが早歩きですり抜けていく。

 向かっているのは通りの端の方、歓楽街の中でも食べ物屋より男たちがたむろす遊技場や艶かしい女たちが客を引くような裏通りに繋がる。

 隼人は考える間もなくその男たちを追って駆け出すと、細い路地に吸い込まれていくリステリカを見つけた。

(あの馬鹿女。何やってるんだ!)

 路地を進む隼人の耳に甲高い女の声が届く。その声に弾かれて全力で追いつくと、眼の前にあらわれたのは男たちに地面に押さえ込まれた金髪の少女の姿。

 その光景に一瞬で頭に血が上った。

「その女から離れろ!」

 怒鳴りながら隼人はリステリカに跨がっていた男に体当たりをすると続けざまにもう一人の頬を殴りつけた。

 その勢いのまま倒れ込んでいたリステリカを引きずり起こす。細い肩を突き飛ばして自分の後方に押し込める。

「おい、お前この女のなんなんだよ?邪魔してくれるなよ、いいとこなんだからさ」

 一番奥にいた優男が隼人に近づきながら笑った。しかしその眼は隼人を切り裂くほど凶暴だ。

 最初に隼人が殴ったふたりも全身に怒気を滲ませて立ち上がり今度はじりじりと隼人を取り囲み始める。

 隼人は額に悪い汗が浮かんでくるのを感じた。相手は四人。しかも一人は小さいナイフのようなものを持っている。

(おいおい、冗談だろう)

 相手は隙をうかがっていたかと思うと、突然刃物を振りかざして襲いかかってきた。

 しかし、予想とは違いその手がおろされることはなかった。

 代わりに軽い破裂音とともに火薬の匂いが当たりに立ちこめ、男は肩を押さえて激しくうめき倒れ込む。

 引き続き二回目の破裂音。

 もう一人はガクンと膝をついたかとおもうとその太もものズボンがみるみる赤く染まっていった。

 振り返ると、そこには緑の眼をした一人の女が銃を構えて立っていた。

次回、宮殿の人々?

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