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すべて夢の中  作者: 皆月くらら


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9/10

気がかり

 この屋敷を出ていくことが決まったので、少しずつ荷物を整理していかなくては。

 手を動かしながらも考えてしまうのは、屋敷の主人の文字の既視感。

―どこかで確かに見たような…でも思い出せない…どこで見たのだろう?

暫く考えを巡らせていると、以前に図書室で本の間に挟まっていた紙きれの事を思い出した。関心が一気に図書室へと向けられる。整理している途中の荷物を投げ出して、一目散に図書室へ向かった。

 勢いで来てみたものの、あの本のタイトルは何であったか?朧げな記憶を頼りに棚を探す。何冊も開いては紙きれを探し、見つからずに棚へ戻す動作を繰り返す。記憶が曖昧すぎて時間ばかり過ぎていく。もう何十冊こうしただろうか?

 そうしているうちに、遂に紙きれが挟まった本を見つけた。やや緊張しながら紙きれを広げてみる。

 やはり主人と同じ字体で書かれた手紙だった。どうやら送り主は主人で間違いなさそうだ。

 今は穏やかに見える主人にも、過去にはケンカの一つや二つあっただろう。

 でもまたこうして、主人の新たな側面が見えてきた。と同時に、主人の過去が前よりもっと気になり始めた。

 というのも、ここへ来てから過ごした日々の中で、主人が時折見せる表情や様子に引っ掛かるものがあるのだ。

 人の過去を詮索するのは品位に欠けている。でも主人のことをもっと知りたい気持ちが、自省の念に勝ってしまいそうになる。

―どうしてこんなに気になるのだろう?まさか…。

 主人を想う気持ちは、いわゆる恋心の、あのときめきだけではないような気がする。一緒に穏やかな時間を過ごしているとき、幸福感や充足感を確かに感じているけれど、それだけではない。

 このモヤモヤは何だろう?何かが引っ掛かり、何かが欠けている感じがする。それはわたし由来のものなのか?でも思い当たる節がない。

 では彼か?おそらく彼だ…。彼は過去に何かを置いてきているのではないか?そしてそれを引き摺っている。何かが欠けたまま現在にいる。心が此処にいない感じがする。表向きはそう見えないが、ふとした瞬間にそれが垣間見えるのだ。

 紙切れを本に戻し、本ごと自室へ持ち出した。部屋へ戻ると疲れが押し寄せてきた。その日はあれこれ思索を巡らす前に眠りにつけた。

 明朝、朝食をとり、支度を済ませると昨日の本を手に取った。改めて見たその本は、古びた恋愛小説であった。



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