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すべて夢の中  作者: 皆月くらら


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8/10

良い知らせ?

 この屋敷に来てから1か月が経とうとしていた。

 屋敷で過ごす間、人に頼んで新たな住まいを探してもらっていた。

 そして先ほど、良さそうな場所が見つかったとの手紙が届いた。新たな住まいの準備が整い次第、ここを出ていかなくてはならない。その日が迫っているのだと急に実感が湧いてきて、寂しい気持ちになった。

 ここでの日々は穏やかだ。人もあたたかい。とはいえ、いつまでも厄介になる訳にもいかないので、早く自立しなくてはと自分を奮い立たせた。

 ある日の午後、いつものように図書室で本を物色していた。幼い時より多くの本を読んできたと思っていたが、この図書室には読んだことのない本がまだまだある。様々な本が誘いの手を伸ばしてきて、いつまでも好奇心を刺激してくる。次はどれを読もうか、と棚から取り出してはページをめくって中を見てみる。

 そのうち、1冊の本に何やら紙きれが挟まっていた。

―これは何だろう?メモして本の中に忘れたのだろうか?

広げて中を見てみる。

 そこに書かれていたのは意外にも謝罪の言葉であった。そして関係の修復を求める内容であった。ケンカ別れした相手に向けて、仲直りするために書いた手紙であろうか?なぜそんなものが本に挟まっているのだろう?次々疑問が湧いてくる。

―いつの時代に誰が誰に宛てて書いたのか?

紙の状態から見て、せいぜい数十年くらい前であろう。そんなに古いものではない。では屋敷の主人やその家族の誰かが書いたのかもしれない。

 この時はそこまで気に留めずに、再び紙きれを本の中に戻した。

 その数日後、新たな住まいが決まり、いよいよこの屋敷を出ていく手筈が付いた旨を主人に話しに行った。

 仕事部屋へと赴くと、主人は書類に目を通しサインしているところであった。ふと、その書類が目に入り、主人の書いたやや癖のある文字に既視感を感じた。

―なぜ?どこかで見たことがある文字。似たような文字を書く人に、以前出会った?

頭の中に疑問が渦巻く中、主人に話しかけられて我に返る。

 この屋敷を出ていく目処がついたと話すと、良かったと喜んでくれた。何かあれば力を貸すと言ってくれた主人に、感謝の言葉を告げて部屋を出た。

 わたしがここを去ったら、主人は寂しさや虚しさを感じるだろうか?


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