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すべて夢の中  作者: 皆月くらら


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7/10

訪問者

 あれから何度か夕食を共にし、屋敷の主人と色々な会話を交わせるようになった。この屋敷で過ごす日々は穏やかで、ささやかな楽しみがある。

屋敷に来る前に聞かされた「お化け屋敷」の噂はすっかり影を潜めていた。

 屋敷の主人は午前中に仕事をこなし、午後からは来客の対応をすることが多かった。

 来客がない日は、図書室に入り浸ったり、丘に立つ木の下で本を読んで過ごしていた。いつしかわたしもそれに加わり、お気に入りの本や最近読んだ本についてなど話すことが楽しみになっていた。

 またある日は、主人がバラの手入れをするというので、わたしもお手伝いすることにした。初めての作業に手こずったけれど、主人はそんなわたしの滑稽な姿に微笑みながら、優しく丁寧に教えてくれた。

 ここへ来て、あっという間に1か月が過ぎようとしていた。もうすっかり使用人たちにも馴染み、わたしは大きな安心感に包まれていた。

 そんなある日、朝食を済ませると主人の部屋に呼ばれた。

 仕事用の服に身を包んで書類に目を通していた彼は、部屋に入ったわたしに軽く挨拶を済ませると、午後に来客があることを伝えた。

 午後になり一台の馬車が玄関へと着けられた。中から一人の若い女性が下りてきて、屋敷の主人が迎えた。わたしも一緒に出迎え、女性に挨拶をした。

 彼女はわたしのことが気になっている様子を見せたが、それ以上に大事な話をするため、足早に屋敷の中へと歩を進めた。

 彼女は主人の姪である。

 今は離れて暮らしているが、かつてはこの屋敷に暮らしたこともあったそうだ。

 主人と姪は慌ただしく応接室へと入っていき、数時間出てこなかった。

 ようやく話が終わり、二人が部屋から出てきた。姪は主人に感謝の言葉を述べると、日が落ちる前に帰るため急いで馬車に乗り込んだ。主人と使用人、そしてわたしでそれを見送った。

 姪の馬車が見えなくなると、主人はほっとしたのか大きく息を吐いた。

 主人は隣にわたしが居たことを思い出し、慌ただしさに巻き込んだことを詫びると、姪が来た理由を話してくれた。

 彼女は近く結婚することになり、もう両親が他界しているため、後見人である主人に結婚の許しと保証人を頼みに来たのであった。

 姪の父親は主人の弟で、若くして亡くなった為、母親と共に屋敷で過ごしていた。しかし、その母親も他界した為、今では家族は主人だけとなってしまった。

 姪は進学して寮で暮らしているため、現在は屋敷を出ている。卒業を前に縁談が決まり、今は結婚に向け準備を進めているところだそうだ。

 そういえば屋敷の主人は結婚してことがあるのだろうか…?

 姪たちと暮らしていた時には一人だったようだが、その前に妻はいたのだろうか?

 気にはなるが直接は聞きにくい…。いずれ会話を重ねるうちに話してくれる時が来たらよいが…。


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