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すべて夢の中  作者: 皆月くらら


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10/10

旅立つ前に

 この家を出ていく日が近づいている。

 ここを発つ前に、わたしは屋敷の主人と散歩をしながら色々な話をした。

 丘に着いた頃には、散歩も終盤に差し掛かっていた。わたしはそこで主人に正直に打ち明けた。

「ここへ来る前…村の人たちはこの家を『お化け屋敷』と噂していました。わたしはそんな屋敷に興味もありましたが、不安も少しあって…。でも、ここはそんな恐ろしい場所ではありませんでした。わたしにとって、この屋敷で過ごした時間は穏やかで幸せなものでした。」

「そうでしたか。わたしもずっと1人だったので、あなたという話相手がいてくれた時間は楽しかった。あなたがこの屋敷で過ごす間、恐ろしい出来事も起きなくて良かった。」と主人も冗談交じりに話して、2人で笑い合った。でもその後で、何だか寂しさも込み上げてきた。主人も寂し気な表情を浮かべ、2人の間に一瞬沈黙が流れた。

 わたしがそんな主人の顔を見つめていることに気付いて、主人は咄嗟に笑顔を作る。

 前から気になっていたのだが、主人は悲しい顔、寂しい顔、悩んでいる顔など負の感情を他人に見せないようにしている。咄嗟に微笑みの仮面で隠してしまうのだ。

ーどうしてだろう?政治のために身に着けたポーカーフェイスなのか?それとも癖なのか?

ーもっと感情を見せて欲しい。少なくともわたしの前では…。

 こんな事を考えてハッとした。わたしのこの思いも何なのだろう?彼をもっと知りたいと思っている。

そんなことに気が付いてしまい、1人動揺し顔を赤らめた。

「そろそろ戻りましょうか?」

何も言わずにただ1人ドギマギしていたわたしに、主人が優しく声を掛けた。

太陽が丘の向こうへ沈んでいく中、わたしたちは屋敷へ向かってまた歩き出した。

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