【急募】こたつの中の怪異を除霊する方法
こたつの中から時々、見知らぬ女の顔がこちらを覗いてくるようになった。
見ているだけで特に何もしてこないが、なんとなく薄気味悪い。相手がどういう存在なのか知らないが、こちらを監視されているようで嫌な気分になる。
「――というわけで、こたつの中に何か投げ込もうと思うんだけど何をやれば悪霊退散できるかな」
「暖房ガンガン入れてるわりに、こたつは使ってないなと思ったけど……マジ?」
友人からの急な呼び出し、からのとんでもない相談に俺は思わず問い返す。
「マジだって、大マジなんだ、マジでマジ」と川柳みたいに答える友人は「マジ」で考えたらしいこたつの中に入れるもの候補を俺の前へ並べ始める。
「まずは、電子線香。本物の線香は火事が怖いから使えねーけど、これはLEDで光るだけだから屋内でも安心安全」
「匂いがないなら意味ないんじゃねーか? ってか、そういうのは仏壇に使うもんだろ」
「じゃあ、この某ファブ除菌・消臭剤。シュッと一吹きで、ソファでも布団でも使用可能」
「あぁ、ネットじゃ『除霊効果がある』って有名だもんな……でもヒーター部分に当たったらそれはそれで危なくないか?」
「なら、この最終兵器。実家の親父から借りてきた靴下。嵐を呼ぶ幼稚園児、並びに昼メシの父親の靴下と同じぐらいやべー劇物」
「臭っ! こんなん入れたらこたつ布団にまで匂いが染み付くだろ!」
「そうなると、こたつがもう二度と使えねーな……」
靴下はしっかりジップロックに密封し、匂いが漏れないよう厳重に封印すると友人は「うーん」と腕を組む。
「出てくるのは目玉だけだし、お経とか音楽みたいな聴覚に訴えかける系の除霊は効かなそうな気がするんだよな。かといって、お札を貼ろうとしたら逆ギレしてなんか攻撃してくるかもしれないし……」
「まぁ、とりあえず女の幽霊? ではあるんだろ。だったら、無理やり追い払うんじゃなくて……何か、女性が喜びそうなものを供えてやれば満足して成仏するんじゃないのか?」
幽霊にプレゼント作戦が効くのか? とは思ったがとりあえず俺はそう進言してみる。すると友人は「あ、それなら俺いいもの持ってる!」と何かを取り出した。
「ほらこれ、ぬいぐるみ! ぬいぐるみなら年代問わず女ウケいいしきっと喜ぶだろ! よし、さっそくこたつにINだ!」
「えっ、あっ、おい待て!」
俺が止めようとするのも聞かず、友人はこたつにそのぬいぐるみを放り込む。
すると、凄まじい絶叫が響き渡って――こたつがひっくり返った。
まるで昭和の頑固親父が、ちゃぶ台をひっくり返した時のようだった。布団もこたつそのものもめちゃくちゃになる、だが俺はその中から女らしい影が立ち去っていくのも見えて――おそらくこの騒動が解決したであろうことを悟った。
「お、ぬいぐるみ作戦やっぱ良かったじゃん。良かったーぬいぐるみ喜んでもらえて」
能天気にそう言いながら、友人はぬいぐるみ――どこで入手したかもわからない、超リアルな巨大ゲジゲジのぬいぐるみをひょいと抱え上げる。
いや、絶対ビビッて逃げただろ! いくら幽霊でも、巨大ゲジゲジのぬいぐるみで喜ぶ女はいないだろ!
そんなツッコミが頭をよぎったが、満足げに巨大ゲジゲジを撫でる友人に俺は乾いた笑みを返すことしかできなかった。




