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メルトラーム英雄物語 黒衣の剣士と聖剣の聖女  作者: 洲厳永寿
第一章:運命の邂逅と聖痕の秘密
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第01話 過去と現在と

この小説はカクヨムで連載中の小説となります。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054882746106

 遥か昔、この世界は神聖メルトラーム帝国の支配下にあった。彼らは他国を圧倒する高度な文明と魔法技術、そして古代魔導器アーティファクトを継承する超大国。天空に浮かぶ都市に住み、自らを「天界の民」と称し、地上の人々を「下界の者」と見下していた。


 メルトラームは地上の国々から資源を奪い、人々を拉致し、洗脳して奴隷として働かせていた。彼らの支配は永遠に続くかに思われた。


 しかし、その支配は突如として終わりを迎える。


「魔導師ルベル」のちにそう呼ばれることになる男は、メルトラームの王族に連なる貴族であった。ある出来事をきっかけに絶大な力を手に入れた彼は、たった一晩で王族を皆殺しにし、帝都を制圧。逆らう者を迅速に粛清し、わずか一ヶ月で帝国を完全に支配した。一人の男の反乱が、超大国メルトラーム帝国を滅ぼしたのである。


 天上の争いは、地上の民にとって「支配者が変わっただけ」と思われた。しかし、新たな支配者となったルベルは、魔物を従え、世界を混沌へと導き、自ら神と名乗り人類に君臨した。ルベルが生み出した魔物の軍団と、彼を信奉する『ルベルの使徒』は強大で、次々と国家を滅ぼし、人々を奴隷にした。


 数年後、ルベルを倒そうとする者たちが『下界』に現れる。


 聖者アルメート――後にそう呼ばれる彼女は、魔導師ルベルに滅ぼされたダムス王家の生き残りであった。弱冠十八歳の少女でありながら、高いカリスマ性と強力な魔法を操る力を持つ魔法剣士、フィーア・レス・アルメートは、元ダムス王国の騎士を中心とした反乱軍を組織し、ルベルの支配下にある一つの町を解放した。


 これは、魔導師ルベルが世界を治めてから初めての反乱であった。


 ルベルは彼らを軽視した。人間が集まったところで、自分を打倒することなど不可能であり、フィーアの魔法も彼に通用するほどのものではなかったからだ。辺境の小さな反乱など、わずかな部隊で滅ぼせる。ルベルにとって、フィーア率いる反乱軍は障害ですらなく、ただの「余興」にすぎなかった。彼はわざと全滅させない程度の強さに調整した魔物の軍団を衝突させ、その様を楽しんでいたのである。


 しかし、状況は一変する。魔導師ルベルに最も近い力を持ち、彼の側近であり親友でもあった『剣聖ラドムス』が反旗を翻したのだ。ラドムスは人間たちにメルトラームの高度な文明の知識、魔術、そして武器を与え、ルベルが生み出す魔獣に対抗できる力を与えた。ラドムスと人間たちは協力し、ルベルと対等に戦う力を得たのである。


 そして、彼らはついに魔導師ルベルに最後の戦いを挑んだ。多くの犠牲を払いながらもルベルの居城に攻め入り、ルベルとラドムスは直接対決する。


 苦しい戦いの末、『剣聖ラドムス』の手でルベルは封印された。


 これは、非常に簡略化された、どこにでもある単純な英雄譚である。


 ラドムスは魔導師ルベルを封印すると共に姿を消したと言われている。恋人としても慕っていたラドムスが姿を消したことで、フィーアは悲しみに暮れた。しかし、彼女は人々の指導者として立ち直り、人々を導き、戦争の傷跡を少しずつ修繕して素晴らしい王国を築いた。その後、一人の男の子を出産し、静かに息を引き取ることになる。その子は、ラドムスとの間に生まれたとされているが、定かではない。


 その後、フィーアの側近の騎士ラージネス・フォン・トラマティスは、フィーアの子が成人するまで摂政を務め、フィーアの築いた国をアルメキア王国と名付けた。こうして、アルメキア王国は誕生したのである。


 アルメキア王国は長きにわたり、正義の象徴と呼ばれるほどの争いのない豊かな国として名を馳せた。しかし、血統による王政というものは、いつの時代でも退廃するものである。王家が生まれれば、当然ながら貴族も生まれる。血統を重んじる世襲制は、先代の当主がどんなに立派な人物であっても、その息子もまた立派になるとは限らない。


 時が流れるにつれて、国を支配する王侯貴族たちには、不正、惰眠、堕落の塊のような人物が増える一方であった。そしてついに、アルメキア王国は平和主義国家から軍事国家へと変貌したのである。


 十五代国王デュラン王の病死後、年の離れた十四歳の王弟レオンハルト王子が王位を継承する。


 宰相となったラージン・フォン・アルトカーシャ公爵は軍事力で民の反感を抑えつけ、反発する民の代表たちを次々と処刑したため、民は大人しくなった。彼の政策に反対する貴族も多かったものの、絶大な権力を握った彼に逆らえる者は、数えるほどしかいなかった。アルメキア四大名門貴族の筆頭であるシグムンド・フォン・グナイティキは、その代表としてラージン公爵に反感を唱えたが、四大名門貴族のうちの三家がラージン公爵に賛同していたため、グナイティキ公爵も自らの家を潰しかねないと判断し、大人しくするしかなかった。


 月日が流れ、レオンハルト王子が自ら政治を執り行うようになる。


 即位するまではアルトカーシャ公爵の政策をすべて鵜呑みにする傀儡のような少年であったが、即位後、自らの地位が尊大で偉大なものと認識することで、自分にいちいち口出しされるのを煩わしく思い始め、アルトカーシャ公爵の意向を無視し始めた。レオンハルト王子は非常に好戦的な性格で、それまで不正に取り立てていた税金を軍事力につぎ込む政策を始めた。王になったことで、彼はより大きな権力を求めるようになったのである。このときから、彼の夢は世界の王になることであった。アルトカーシャ公爵は宰相の地位こそ維持できたものの、以前ほどの権勢を振るうことはできなくなった。


 他国の傭兵などが大量に入国したため、治安は次第に乱れ、貴族たちは民に圧政で税金を絞りあげて貧富の差が激しくなった。アルメキアは不必要なくらい軍備を増強して他国の不安を煽る強大な軍事国家へと変貌しつつあった。


 そして二年前、ついにアルメキアは軍事行動を開始する。国王レオンハルト・ディス・アルメートは隣国エストゥーラ王国との同盟を一方的に破棄して国境の町を奇襲した。その後、体制が整わないエストゥーラ王国は本来の軍事力を発揮する間もなく、わずか一年で攻め落とされ、アルメキアの支配下となった。王家の血筋に連なる者は皆処刑され、アルメキア王国の植民地となったのである。そして、レオンハルト王は次の標的を、建国以来の同盟国であるグランに定めようとしていた。


 これは、そんな動乱の時代を駆け抜け、一人の少女のために様々な障害を乗り越えて戦う青年の英雄譚と、青年への恋慕の想いを馳せる少女の恋物語―――

長々と世界の設定を書いてますが、次からストーリーの開始となります。

バックしないで続きを見ていただけると嬉しいです。


★表紙イラストみたいなイメージイラストです。

https://kakuyomu.jp/users/imohagi/news/16818792436518888274

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