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第3話:処刑を決めた貴族たちが、私の顔を見るたびに土下座してくるのだけど。

王太子アレクシスの依頼に、私は一応“条件付きで”承諾した。

 もちろん、本心では王都など行きたくない。だが、ここで断ると後が面倒だ。


(王族どもが私を恐れている今が、利用できるタイミング……ってこと)


 そう思って、私は久々に《空間転移》魔法を使用した。

 場所は、王都の中央広場。かつて、断罪イベントが行われた――あの場所だ。



 着いた瞬間。

 広場にいた貴族たちは、文字通り、固まった。


「……あ、あれは……まさか……」


「グランツ令嬢……いや、“魔女様”……?」


 誰かがそう呟いたとたん、反応は一斉に爆発した。


「わ、わたしは、あのとき無理やり参加させられただけで……!」

「命だけは、命だけはお助けをぉぉぉっ!」

「ひいいいっ……!」


 私が口を開く前に、貴族どもが次々と地面にひれ伏した。

 誰一人、顔を上げようとしない。あまりに滑稽で、私は思わず笑ってしまった。


「……えっと。私、まだ何もしてないんだけど?」


 私が軽く手を振っただけで、魔力が空気に染み出す。

 広場に吹いた風が渦を巻き、石畳が軋む。


「なっ……この魔力、王級どころじゃ……」

「国一つ滅ぼせるぞ、これ……!」


 ちょっと息を吸っただけでそれか。もう慣れたけど。



 その時。


「おや……お見かけしない顔ですね。貴族の方ですか?」


 優雅な声とともに、目の前に現れたのは――


 銀髪に蒼眼、漆黒のローブを纏う少女の姿をした魔族だった。


(へえ……これは)


 王都に潜入していた“魔族の王”、その正体は、この小さな少女。

 けれど、魔力の密度は一級品だった。私に匹敵……いや、領域によっては上回るかも。


「貴方が“王都最大の魔力反応”の主ですね。なるほど……ようやく会えました。伝説の、魔女様」


 にこ、と微笑んだ彼女は、口元に指を添えたまま、こう続けた。


「――貴方を、仲間に引き入れに来ました」


 魔族の王、まさかのスカウト宣言。


(ふふ……面白くなってきたわね)


 断罪されるはずだった悪役令嬢が、世界の均衡を揺るがす存在へ。

 王都に集う勢力、そして始まる新たな思惑の火種。


 だが――私の目的は変わらない。

 「二度と誰にも裁かれないために」、ただ最強であり続けること。


 私は静かに、魔族の少女へと微笑み返した。


「その提案、検討してあげるわ。まずは――お茶でもどう?」王太子アレクシスの依頼に、私は一応“条件付きで”承諾した。

 もちろん、本心では王都など行きたくない。だが、ここで断ると後が面倒だ。


(王族どもが私を恐れている今が、利用できるタイミング……ってこと)


 そう思って、私は久々に《空間転移》魔法を使用した。

 場所は、王都の中央広場。かつて、断罪イベントが行われた――あの場所だ。



 着いた瞬間。

 広場にいた貴族たちは、文字通り、固まった。


「……あ、あれは……まさか……」


「グランツ令嬢……いや、“魔女様”……?」


 誰かがそう呟いたとたん、反応は一斉に爆発した。


「わ、わたしは、あのとき無理やり参加させられただけで……!」

「命だけは、命だけはお助けをぉぉぉっ!」

「ひいいいっ……!」


 私が口を開く前に、貴族どもが次々と地面にひれ伏した。

 誰一人、顔を上げようとしない。あまりに滑稽で、私は思わず笑ってしまった。


「……えっと。私、まだ何もしてないんだけど?」


 私が軽く手を振っただけで、魔力が空気に染み出す。

 広場に吹いた風が渦を巻き、石畳が軋む。


「なっ……この魔力、王級どころじゃ……」

「国一つ滅ぼせるぞ、これ……!」


 ちょっと息を吸っただけでそれか。もう慣れたけど。



 その時。


「おや……お見かけしない顔ですね。貴族の方ですか?」


 優雅な声とともに、目の前に現れたのは――


 銀髪に蒼眼、漆黒のローブを纏う少女の姿をした魔族だった。


(へえ……これは)


 王都に潜入していた“魔族の王”、その正体は、この小さな少女。

 けれど、魔力の密度は一級品だった。私に匹敵……いや、領域によっては上回るかも。


「貴方が“王都最大の魔力反応”の主ですね。なるほど……ようやく会えました。伝説の、魔女様」


 にこ、と微笑んだ彼女は、口元に指を添えたまま、こう続けた。


「――貴方を、仲間に引き入れに来ました」


 魔族の王、まさかのスカウト宣言。


(ふふ……面白くなってきたわね)


 断罪されるはずだった悪役令嬢が、世界の均衡を揺るがす存在へ。

 王都に集う勢力、そして始まる新たな思惑の火種。


 だが――私の目的は変わらない。

 「二度と誰にも裁かれないために」、ただ最強であり続けること。


 私は静かに、魔族の少女へと微笑み返した。


「その提案、検討してあげるわ。まずは――お茶でもどう?」

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