1-1死亡(終わり)と転生(始まり)
最初に未成年者の自殺描写があります。
苦手な方は飛ばしてください。
今日、僕は自殺する。天井から吊るしたロープに首をかけて台を蹴り飛ばす。
ロープが首に食い込んで、正直苦しい。だけど、今までの人生を思い出すと、この程度なら耐えられる。
むしろ、地獄から逃げられると思うと感動すらある。(そういえば、自殺したら地獄に墜ちるんだっけ)
(まぁ、もうどうでも良いや)
そんなことを思っていると、意識が闇に沈んでいく。
(あれ? ココは何処だ?)
気が付くと、不思議な空間に居た。
?「起きたか」
不思議な声が聞こえた。男の声にも女の声にも聞こえ、尚且つ若い声にも老いた声にも聞こえる。
「!? どう……なってる?」
声がした方を向くと、黒と白のローブがあった。しかも、誰かが着てるかのように立っているにも関わらず、人の姿は無い。まるで透明人間が着てるかのようだ。
?「驚かせたな。すまない」
ローブから声が聴こえる。
「いえ、大丈夫です」
?「一先ず、自己紹介しよう。名を『ワイズマン』。」
ワイズマン「役職は、『賢神』じゃ」
「僕は……」
ワイズマン「知っとるよ」
「えっ?」
ワイズマン「名を『村咲 交沙』。イジメや虐待に絶えかね自殺。随分な人生を送ってるな」
「……はい」
その通りだった。
ワイズマン「長くなってしまったが、本題に入ろう」
「本題?」
ワイズマン「お主は自殺で死んだ訳じゃが、自殺した場合、本来は煉獄に墜ちる」
「煉獄?」
自殺したら地獄に墜ちる。みたいな話はよく聞くが煉獄とはどういうことだろう?
ワイズマン「どういうことか気になるじゃろうから簡単に説明しよう」
ワイズマン「人間の魂は、原則転生するが、その前に生前の行いによって転生するまでの居場所や転生先が決まる」
「はい」
最終的には転生するのか。
ワイズマン「基本的には天国で、悪人や罪人は地獄、お主含め自殺者は煉獄にいく」
「地獄と煉獄の違いは何ですか?」
ワイズマン「大きな違いは無い。地獄は罪を浄化する場所で、煉獄は無念を浄化する場所じゃ」
「無念?」
ワイズマン「自殺する人間は、言い換えれば『自殺する程追い詰められた人間』じゃ。その追い詰めたもの達への怒りや恨み、憎しみのことを『無念』という言葉で1つにしてるのじゃ」
「なるほど。つまり僕も煉獄に墜ちるんですね」
ワイズマン「本来ならの」
「本来なら?」
ワイズマン「今までも自殺者の魂を見てきたし、その度に煉獄送っていたが、お主程魂が酷いことになっとるのは見たことが無い。」
ワイズマン「そこで、お主の魂の療養と、可能なら人間不信を治す為に、所謂異世界転生をして貰う」
「い、異世界!? そんなこと言われても……」
異世界転生とは、ラノベみたいなことを言われても困る。
ワイズマン「落ち着ちなされ」
ワイズマン「ちゃんと異世界で生きていけるように幾つか能力は与える」
「能力……」
ワイズマン「但し、チート能力ではないし、破格の能力に関しては、制約を設ける」
「はい」
都合良くは無いらしい。
ワイズマン「先ずは、その子じゃ」
「その子?」
すると、自分の右手から、幼い女の子のようなそれでいて機械的且つ無機質な声が聞こえた。
〖私です〗
右手を見ると、手の甲に、魔方陣のような紋章のような円を基本とした幾何学模様があった。
〖そうです。手の甲のそれが私、異世界生活支援システム。個体名アリスです〗
ワイズマン「次に、右手の人差し指と中指を揃えて下に弾くのじゃ」
言われた通りにする。
「うおっ!?」
すると目の前に、ゲームとかにあるステータス確認画面のようなものが出てきた。
ワイズマン「それは、ステータスウィンドウじゃ」
ワイズマン「そろそろ、お主の異世界用の身体ができたから、転生させるぞ」
「はい」
ワイズマン「他にも細かいシステムは授けたから、詳しくはアリスに聞くのじゃ」
「はい」
ワイズマンが、恐らく右手と思われる黒い手袋を僕に向ける。すると強い光に包まれて、意識が墜ちていく。
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