杉咲さんの物語(1) - 貴族のご令嬢に転移しますの
杉咲様 現世にて
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「佐藤さま、錬金術師をお選びになられましたね。」
研究所の職員が私に話しかけた。
あんまり喋り慣れてないっていうか、新人感丸出し過ぎって感じ。
なんていったっけ?愛子だったっけ?
この子、芋っぽいっていうか、垢抜けてない。
この建物もインテリアもセンス無いし。正直帰りたくなってきた。
お見合い研究所なんてネーミングもセンス無いし、失敗したかなって思ってる。
「あの、杉咲さま。いかがなされますか?転移先は佐藤さまが選ばれた異世界になりますので。えっと、それで、」
イモ子はマニュアルっぽいのを見ながら、話しかけてくる。
興ざめっていう感じ。
「えっと、こちら、ルネ、ルナ、ル。あの、失礼しました。ルネシア王国という国になりまして、えっと、佐藤さまは・・・」
思わずあくびが出た。といっても、口元はハンカチで隠したけど。
っていうか、佐藤とかって人、おじさんじゃん。なんだか、モタモタしてるし。どんくさいっていうの?
「あの、杉咲様。杉咲様?」
「あ?なに?」
「あの、ご説明を。。」
「ああ、聞いてる。聞いてるから。っていうかさ、本当にこんな人と私、お見合いするの?しなくちゃいけないの?」
「あ、えっと。その。あの。当研究所の相性判断によりますと、、」
「それ、信用できるの?あたしの好みって言ってあるよね?」
「あの。その。い、異世界に行かれますと、佐藤様のご年齢は20代前半となりまして、その、ですので、お若くて、容姿も杉咲さま好みとなりまして・・・」
「あ、そう。でも、性格がちょっと違うんじゃないの?」
「あ、はい。その。その点につきましては、佐藤さまは現世の環境とは相性が悪いのですが、異世界では非常に、そのアレで、素敵な男性ということになる想定でして・・・」
「まぁ、いいわ。それで、わたしはこっちの世界に帰ってこれるでいいのよね?」
「はい。あ、はい。左様でございまして。ではご希望のとおり、貴族のご令嬢に・・・」
「はいはい。よろしく。とっととやってください。わたし、ヒマじゃないからさ。」