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高校生、お弁当をつくる

作者: 音湯羽良人

熱々のフライパンに溶いたたまごを流し入れる。

含まれていた水分がジューッと音を立て、ふつふつと熱が伝わって周りの部分から固まりはじめる。

菜箸を使い綺麗に折り畳まれ形が作られていく。

うっすらと茶色い焦げ目がついてしまったが上出来。

続いて鍋でお湯を沸かす。じゃがいもを入れていく。そのまま放置。

にんじんときゅうりを切っていく。

にんじんはお皿に入れてラップをかけて電子レンジへ。

きゅうりは塩で塩もみをする。

これであってると思う。

電子レンジが鳴った。

にんじんはこれでオッケー。

きゅうりから水分をとっていく。両手で握り搾って。

さてじゃがいもはどうかと確認。竹串で刺してみる。おやおや?まだ固かった。それなら事前にお湯を沸かしておくべきだった。


まあ、ほとんど初めてだったし効率良くなんてできるとは思ってなかった。

お弁当箱を眺める。

ご飯の上に黒胡麻がまぶされている。

ベビーリーフの上には冷凍食品の春巻きに焼売。

色合いを持たせるためにプチトマトを入れてある。

見た目はそれなりに上出来、上出来。


十分後、玉子焼きとポテトサラダが追加され、お弁当は完成した。


完成までの成り行きを見ていた母さんはニヤニヤと笑っている。

助言も手伝いもしないでって言ったら終始見続けていた。

「ようやく出来上がったね。余った玉子焼き食べていい?」 

母さんのために作ったわけじゃないけど、実際、お弁当箱に入りきらなかったんだしまあいっか。

二欠片のうち一つを手掴みで渡し、もう一つを自分の口に放り込む。

「我が家の玉子焼きだね」

そんな感想が母さんの口から出てきた。

こっちも同じ感想だった。

やっぱりそうだ。

今まで見てきた作り方で作ったんだから。


「行ってきます!」

お弁当箱が二つ入ったリュックを背負って出かける。

紅葉をあの人と一緒に見るために。

いや、もう「あの人」ではなく恋人。

誰かのためにご飯を作るということを初めて理解した気がする。

母さん、いつもありがとう。

笑顔で軽快に恋人の家へと向かった。






その夜、帰宅後の第一声。

大声で

「母さん、玉子焼き砂糖と塩間違えたのって言われたんだけど!砂糖が普通なんだったらそう言ってよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 佳きですねぇ、青春(しみじみ)。 [気になる点] 「我が家の玉子焼きの味」というのは、お父さんの方のおふくろの味なのか? それとも、お母さんが自分ちの味に染めてしまったのか? (何となく後…
[一言] 好きなひとの為に作るお弁当、いいですね。 玉子焼きがおいしそうでなんだか読んでいておなかが空きました。 玉子焼きは顕著にその家の味が出ますよね。うちは元々しょっぱめだったのを、母にお願いして…
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