第2章 誕生日
私が朝起きてすぐ、ママの声が飛んできました。
「シャーリー。お姉ちゃん起こしてきて」
そう、今日は大事なお姉ちゃんのお誕生日。というわけで階段を降りて半地下の部屋にある彼女の部屋へ向かいます。あの日のままの部屋の片隅にある棚の引き出しをそっと開けます。
「お姉ちゃん、おはよう」
引き出しの中、アクリル板の下のお姉ちゃんはまるですやすやと寝ているかのようです。お姉ちゃんがここで眠るようになってもう10年ほど経ってしまいました。私は毎日のようにそっと引き出しを開けてお姉ちゃんの寝顔を眺めて声をかけたりしています。毎年お誕生日会の日は蓋を開けてお姉ちゃんを担いでリビングまで連れていき、最後に彼女をリビングのロッキングチェアに座らせます。
「まるでゆっくり休んでいるみたいね」
ママのつぶやきが聞こえてきます。彼女はただ話せなくなっただけなんだと私自身に言い聞かせることもしばしばありました。
お姉ちゃんの前でママはお手製のケーキをテーブルに置いて小皿を並べました。そこに私達の友人ーすっかり大人になって社会人の風格を感じるお姉ちゃんの小学生時代の同級生そして私の友人達ーがやってきて玄関からリビングに通します。みんなが座ったところで歌を歌いお姉ちゃんの代わりにケーキの蝋燭の火を私が吹いて消しました。ママと私でケーキを切り分けました。もちろんお姉ちゃんの分も。もう食べることはできないけど……そして友人達はテーブルの上で再開を喜び合ったり床の上でゲームをやっていたりしました。
日もすっかり落ち、私達の友達が帰ってしーんとした我が家。今でも18歳・あどけないティーンエイジャーの姿のお姉ちゃんと26歳の私。お姉ちゃんをソファに移動させた後、そんなふたりのツーショットをママにスマホで撮ってもらいます。力なくもたれかかるお姉ちゃんを私の体で支えながら。そして私は彼女を抱きしめた後そっと担いで彼女の部屋へ移動します。そして私は彼女を抱きしめた後そっと担いで彼女の部屋へ移動します。
机の上にはママと私が買っておいた新しい服が置いてありました。お姉ちゃんを一度ベッドの上に寝かせた後ブラを付け替え、腕を上げて新しいブラウスの袖を通した後ボタンを止めて腰を少し上げスカートを履かせます。毎年新作の服を着せてあげるのがママと私なりのお姉ちゃんへの誕生日プレゼントなのです。そして着替えの済んだお姉ちゃんを担いで引き出しの中のシーツの上にそっと寝かせます。最後に隅に置いてある防虫剤と使い捨てカイロを交換した後アクリルの蓋を上に置いて金具で止めます。
「また来年、出してあげるからね。お姉ちゃん」
私はそうつぶやいた後、引き出しをそっと閉めました。
