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生きる世界と冒険譚  作者: 山田浩輔
ウィダー諸島編
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第22話 培養と廃用

 人々が逃げ惑う中、ルーカスは診療所の奥へと進む、人の気配はなく、暗い診療所進む、使われていないのか埃を被った機器、歩くたびにホコリが舞い、足跡を辿り、その先に一つの扉があった。

 扉を開けようとするが、鍵が掛かっており開かない、ルーカスは扉に体当たりをするが開かず、そのまま試行錯誤をするが開かず、ルーカスは溶かした蝋を鍵穴に入れ込むとそれを引き抜く。

 「形は...シンプルだな、それじゃあ....」

 ルーカスは鍵穴に針金を4本差し込むとゆっくりと解錠し始める。

 模倣の力で4本を同時に動かし続けて5分も経つと扉は開く。

 「きたな...」

 ルーカスは扉を開くとその先には見たこともない光景を目にする。

 「なんだ...これ...」

 大量のコードと電子機器、培養液など、さまざまなものがある中で、その奥には巨大なカプセルのようなものに入った竜人がいた。

 

 「おっと、まさかここまで来るとはな...」

 ルーカスの後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはイワンがいた。

 「イワン...さん...」

 ルーカスは銃をイワンに向けるとイワンは両手を上げる。

 「待て待て、話を聞け」

 「...いいだろう、聞いてやる」

 ルーカスは銃を下ろすがナイフに手をかける。

 「龍信仰は悪だ、そう思うだろう?」

 「...そうだな」

 イワンは不敵に笑うとカプセルに近づく。

 「これはな、金の成る木だ、こいつは龍人と呼ばれる古来から存在していた種族だ」

 「...そうだとして、何になる」

 「龍信者が持ってる鉱石の正体はこれの硬化した破片だ、龍を信仰するものがなぜ身につけているのか、これが答えだ、そして俺は、別に私欲でこんなことを行なってるわけじゃない、この大陸の人々を豊かで文化的な暮らしをさせる、そのために俺はここまでやってきたんだ」

 「...お前はどっちの味方だ?」

 「もちろんドラゴンは撲滅させる、そしてこの信仰はドラゴンではない、太陽の精霊、へーリオスの力にしか過ぎないんだよ、溶解と放射線を操る、五代精霊の中でも最も強力な精霊だ、俺はな、利用できるものは全て利用する」

 ルーカスはゆっくりと銃を構えると引き金に指をかける。

 「残念だが、俺は龍を滅ぼすことにしか、興味はないんでな」

 「そうか」

 イワンはルーカスに急接近すると手に力を込める。

 「ファイア!」

 ルーカスはイワンの手を最大限警戒しながら銃を撃ち、それと同時に距離をとるが、次の瞬間、巨大な熱球が現れ、その熱気でルーカスの体は燃え上がる。

 「まずい...!」

 ルーカスは急いで部屋から出ると扉を閉め、外へと走る。

 燃え上がる炎を痛みに必死に耐えるが、やがて力尽き、そしてルーカスは目を閉じた。






 〜23年前〜

 6歳の頃、俺は普通の家庭に憧れていた、母は優しく、暖かかった、だが父は龍信者であった。

 父は幼い俺によく暴力を振り、その度に母が止め、そして暴力を受けていた。

 


 そうして辛い日々が続いていたが、ある日、俺は感情を止められなくなっていた。

 「俺の言うことは聞けないのかよ!」

 父と母の口論のなか、父が包丁を取り出した。

 その時、俺は父にぶつかり、父は包丁を落とした。

 俺は父に突き飛ばされたが、その時、包丁を手にして、父に向かった。

 この男は生かしてならない、クズで、ゴミで、カスで、そんな人間を処理しなければならないと、正義感すら持って、死ぬような思いをしながら刺した。


 刺した感触、生暖かい血、迸る高揚感、その全てを感じ、目を開けた時、そこには血を流した母がいた。

 どうやら父を庇ったようだ、優しくて、暖かくて、そして愚かだった。

 父はその光景に恐怖したのか、家から走って逃げたが、俺は追おうという気にはならず、母の亡骸に謝り続けていた。

 そうして数日後、父は通り魔に刺され死んだ、嫌いで憎くて、憎悪すべき存在は、呆気なく死んだ、大事な人も、復讐相手も、生きる目的もない、その上で、俺が生きているのは、なぜなのだろうか?

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