第2話 ドラゴン信仰
「ここが襲撃にあった場所か...」
ユリアはその惨状を見て唖然とする、焼き尽くされたその地は焼けた臭いと灰が辺りを漂う、テント跡や倉庫、馬車なども荒らされ、犯人に対して怒りを覚えた。
「どうしてこんなことに...」
「ドラゴン信仰勢の目的はいまだにわかっていない、こうしてこちらの邪魔をしてくることと、ドラゴンを崇拝していること以外は、全くわかっていないんだ。今は証拠品や遺留品を集めることに集中しろ」
イワンは感情的にはならず冷静に周囲に散らばった死体や物品について確認していた。
「これは...」
探索班の1人であるジャンが見つけたものは、鱗のようなものであった、透明なガラス細工のようなその鱗をイワンに渡すと怪訝な表情を浮かべる。
「これは...ドラゴン信者が持っている、アミュレットみたいなものだ。これ自体はただの鉱石なんだが、陽光にかざすと、紅く光るんだ、希少だから売れば結構な値段がつくぞ」
「ふーん」
ジャンは試しに陽光にかざすと血液を垂らした水のように赤く、深く輝いた。
「おお! マジで赤くなった!」
ジャンは実際に鱗が赤く光ったことに興奮しながらポケットにそれを入れようとするとイワンが止める。
「おい、それは重要な証拠品だ。勝手に取ろうとするな」
ジャンはしょぼんとしながらもイワンに鱗を渡すと、布で丁寧に包むと、それをカバンに入れた。
そうして20分ほどが経過し、皆が帰路に着くために準備をしていると突然、地ならしの音が皆を襲う。
「総員! 直ちに身を隠せ!」
皆が慌てて近くの遮蔽物に身を隠し、地ならしの方向に注意を向けていると、森林の中から、ドラゴンがゆっくりと現れた。
イワンは息を飲み、ゆっくりと連射クロスボウを構えると、ドラゴンの方向に向ける。イワンの動きに他の班員も音を立てないよう、慎重にクロスボウを取り出す。
しかし一人の班員がボルトを落としてしまう。
音に気づいたドラゴンが急速にその班員を喰らうと周りの遮蔽物を破壊し、振り回された尾に一人が吹っ飛ばされる。
「撃て!!」
イワンの合図に皆が一斉にクロスボウを発射する。
ドラゴンの鱗がほとんどのボルトを防ぐが、一部のボルトが目や鱗の隙間などに当たり、僅かに怯んだ瞬間に煙幕弾を投げる。
「撤退だ!!」
イワンの声に次々と班員は煙の中を走り去り、森林の中へと隠れていった。
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〜レセッダ地下街〜
「最近はかなり負傷者も減ってますね...」
ユリアの言葉にイワンはため息をつきながらゆっくりと答える。
「だが危険を犯さない分、探索の進みも遅い、良くも悪くも変化が少なすぎる...」
「まあ生き残れたしいいじゃないですか!」
ジャンは能天気にイワンの肩を叩くが、イワンの険しい顔は変わらず、少し寒々しい空気が流れる。
そんな中で男が一人、ドアをノックし、ドア越しで話し始める。
「すみませんイワンさん、来客です、通しますか?」
「わかった、入れてくれ」
イワンの言葉に男がその場を去ると、数秒後には扉が開く。
そこには深くフードを被った、背丈からして男がそこにいた。
「あんたは一体...」
イワンが口を開くと男はフードを外す、中から束ねられた漆黒の長い髪が現れ、男は顔を上げると話し始める。
「私は情報を提供しに来ました、リライプルからの使者です、名はフォルトと申します」
フォルトの張り付いた笑顔に警戒をしつつもイワンは手を前に出す。
「よく来てくれました、それで情報というのは?」
「あなた方ドワーフの力とファラルの錬金術、それを合わせればドラゴンに対抗できる武器を作れます、ぜひお話を聞いていただけないでしょうか?」
そうしてフォルトは背中に背負った火縄銃を取り出すと机の上に粗雑に置く。
「これは...確か銃...でしたっけ? ファラルの武器...聞いたことがあります...」
イワンは銃を手に取ると機構を一つずつ確認する。
「確かにすごい武器ですね...情報とはこれの製造方法についてですか?」
イワンの言葉にフォルトは首を縦に振るう。
「なるほど、では情報料をお渡しします、いくらでしょうか?」
「情報には情報を渡してほしい、私は信仰を広め、ドラゴン信者丸ごとを手に入れる、それが目的です」




