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生きる世界と冒険譚  作者: 山田浩輔
リライプル編
49/78

 騎士達がトゥリアを円形に囲むと一斉に切り掛かる。

 それぞれが違う方向から切り掛かるがトゥリアは軽々と剣撃を避けていくと一人一人を確実に切り殺していく。

 血まみれになりながらもその顔は新しいおもちゃを手に入れた子供のようにキラキラとしていた。

 「遅い遅い!遅いよみんな!」

 フェルリートもトゥリアに斬り込むが当たらない、先代のフェルリートと同じ、心技体全てを使うトゥリアの戦い方に、懐かしさ、そしてそれ以上の怒りがフェルリートを襲う。

 剣撃はやがて爆音に近づき、踏み込んだ床は砕ける、そしてフェルリートは次の瞬間に、トゥリアの両手両足をほぼ同時に切り落とした。


 「今しかない...!」

 騎士達が地面に倒れ伏したトゥリアを滅多刺しにしていく、血祭りとも呼べるほどの現状であるがそれは希望とも呼べるのであろう。

 「....もう....死んだ....?」

 トゥリアだった物はもう動かない、一人の騎士が地面にへたり込む。

 「勝った....勝った!!」

 「うおおおおおおおお!!」

 騎士達が勝利を分かち合う、しかしフェルリートは皆に聞こえる声で発する。

 「まだだ!!」

 次に上がったのは疑問の声ではなく断末魔であった。

 

 皆が振り向いた先には騎士がいた、紛れもない先程までトゥリアを殺そうと躍起になっていた騎士である。

 騎士は走り出すと一人に向かい走り出す。

 「おい! やめろ!!」

 自分に突然向かってきたこともあり騎士は止めようとするが次の瞬間に首が飛ぶ、返り血を浴びながら、その狂気にも見える騎士に皆が恐怖する。

  そしてその中で騎士が口を開く。

 「お楽しみはここからさ! 殺戮パーティの始まり始まり〜!!」


 「トゥリア....か...?」

 ウィリアムはゆっくりと口を開くと騎士はウィリアムを指差す。

 「ご名答! 思伝(テレパシー)さ!」

 騎士が一斉にその騎士を先程のように狙う、しかし先程以上に強靭な動きは次々に騎士を殺していく、血が飛び散り、あたりの鉄の臭いが充満する、そしてトゥリアに乗っ取られた騎士が死んではまた別の騎士が他の騎士を殺していく、その地獄の光景をウィリアムは目に焼き付けることとなった。

 

 「あははははは!!」

 何人も死に続ける、そしてフェルリートがまた切り掛かる、同士討ちを恐れていたウィリアムだったがようやく騎士達と共に戦うことを選択し、フォルトと結衣も後に続いた。


 しかしその瞬間にトゥリアに乗っ取られた騎士は赤く光り、大爆発を起こす。



 赤い煙が当たりを包み、その霧が収まると、倒れたフォルトや結衣、たくさんの騎士や片腕を失ったフェルリートなど、その光景にウィリアムは唖然とした。


 「フェルリートさん! 逃げてください!」

 生き残った少ない騎士達がフェルリートを運ぶ、トゥリアはフェルリートにとどめを刺そうとするが、ウィリアムはそれを止めるため、剣を投げ飛ばす。

 

 「おっと」

 トゥリアは剣を易々と避けるとウィリアムにゆっくりと近づく。

 「そうだね、ウィリアム、お前にも因縁ってやつがあるだろうからな」

 ニコリと笑うその笑顔に怒りが溢れる。



 命は平等に尊い、自分はもちろん、大切な人や家族、敵だとしても、死んだら誰かが悲しんでくれる、それでもお前だけは




   必 ず 殺 し て や る 

 

 



 「ミメーシス! 頼んだぞ!」

 騎士達が持っていた剣が中空にふわりと浮くと一斉にトゥリアへと向かう。

 トゥリアは剣を弾くが、それ以上の数の剣撃が全身を襲う、身体の全てを切り刻まれ、トゥリアは倒れた。

 ウィリアムはゆっくりと口を開く。

 「お前のテレパシー...乗っ取りは、人間に触れている間だけだ、見ていればわかった、だから俺は触れない方法でお前を殺した、もう動かないだろ?」

 ウィリアムはゆっくりと地面に座ると、剣を手放す。

 「ようやく終わったか...」

 しかし次に耳に入ったのは、一つの銃声であった。


 ウィリアムが振り向くと、硝煙の上がった銃を持つ結衣、そしてその銃口の先には心臓を打たれたフォルトであった。

 「が......は.......」

 フォルトは地面に倒れると、そのまま目を閉じた。


 「結衣.....?」

 結衣がウィリアムの方を見るとニコリと笑う。

 「ハズレだよウィリアム」

 ウィリアムは膝から崩れ落ちると結衣はゆっくりと近づく。

 「正解はね、俺が一度でも直接触れた人間、それが半径50m以内にいれば乗り移れる、惜しかったな」

 ウィリアムは結衣に触れられないように剣を構えるが結衣は銃を落とす。


 「もういいんだよ、ウィリアム」

 「何を...言って...」

 結衣は微笑みながら言う。

 「二年ほど前に、既にお前に一度触れているんだよ、だからもう、お前は負けてるんだよ」

 


 ウィリアムは俯き、何も喋らない、結衣はしゃがんでウィリアムと同じ目線に立つと結衣は自らの首を指差す。

 「ここだよここ、ここを刺せば結衣は死ぬ、どう? やってみない? もしかしたら勝てるかもよ?」




 「........そんな.........とっくに........」

 ウィリアムが声を発すると結衣は耳を傾ける。

 「ん〜? 何て?」

 



 「そんなことはな、とっくに承知だぜ...!!」

 ウィリアムはニヤリと笑うと、トゥリアも興奮する。

 「それでこそウィリアムだ!!」

 

 ウィリアムはナイフで結衣に切り掛かるが、結衣はナイフを避けると銃を拾い、発砲する。

 銃弾はウィリアムの横腹を撃ち抜く、激痛に耐えながらウィリアムは怒りのみを原動力に結衣の首に剣を振るうが結衣は持っていた剣で剣撃を防ぐとウィリアムを蹴り飛ばす。

 「おっとっと!」

 しかしウィリアムは止まらない、蹴られた直後に進み続ける、常に攻めの構えを崩さず、防御を一切行わない。

 そして結衣がウィリアムの背中のナイフを抜くとウィリアムの義手を切り落とす。

 ウィリアムは闇雲に斬り続けるが当たらない、結衣がウィリアムの剣を蹴り飛ばす。

 「これで——!!」

 結衣がとどめを刺そうとするとウィリアムが叫ぶ。  

 「ミメーシス!!」

 切り落とされた義手に入った火薬が爆発し、銃弾が飛び出し、結衣の心臓を貫く。

 結衣は笑いながら言う。

 「これだよこれ! これこそが!!」

 しかし結衣は目の前の光景に目を見開く。

 ウィリアムは剣を地面に突き立て、首に刃先を当てると、全身の力を抜いた。


 「なるほど、面白いね」

 結衣はそのまま息を引き取った。




 「うおっと!」

 ウィリアムは剣を腕で払うと、ゆっくりと立ち上がり、深呼吸をすると口を開く。


 「惜しかったね、ウィリアム」

 周りにはもう誰もいない、死体の中でウィリアムは声を上げて笑う。 

 「ははははははは! 俺の勝利だ!」

 そうしてウィリアムがガッツポーズを、勝利に喜んでいると、心臓から突然、刃が飛び出る。


 後ろを見ると、フェルリートの刀が身体を貫いていたのだ。

 (言われた通りに全てをこなしたぞ、ウィリアム)


 ウィリアムはニヤリと笑うとそのまま地面に倒れ伏し、ウィリアムは死に、トゥリアは消えた。

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