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生きる世界と冒険譚  作者: 山田浩輔
リライプル編
48/78

優しい青年


 第四紀 四一〇年

 トゥリアの生まれは、普通の農村であった。

 「良いことって何?」

 トゥリアの言葉に父は答える。

 「それはね、人が喜ぶことをしてあげることさ、世界は不平等さ、でもね、それに流されてはいけないよ」

 「うんわかった! 僕、いっぱいいいことをするね!!」

 

 第四期 四二〇年

 「トゥリアー! 手伝ってくれー!」

 畑を耕す老人がトゥリアに声をかける。

 「はあい!」

 トゥリアはニコニコとしながら桑を持つと、老人と共に手伝いをする、すると次々と村民がパンや飲み物などを持ってきてくれた。

 「いつもありがとうございます」

 トゥリアが皆に言うと皆は笑う。

 「いいんだよ!」

 「いつも俺たちの方が助けられてんだ! こんなもん礼を言われるほどのことじゃねえよ!」

 18歳になったトゥリアは村一番の優しい青年として有名であった、村民達もトゥリアに驕ることなく、とても良い関係性を築いていた、思伝(テレパシー)により、人を助けることが得意であった、困っていればすぐに助ける、そうして人に信用されていった。



 第四期 四九三年

 「ああ.....みんな........」

 皆に看取られ、トゥリアは孫の手を握りながら、ゆっくりと目を閉じる。

 (俺は先に行くよ...みんな)



 しかしその時、身体の痛みが突然消え、地面に倒れ伏す、そしてトゥリアがゆっくりと立ち上がると、そこには死んだはずの自分が横たわっていた。

 状況を飲み込めず、トゥリアは手を見る。

 「若返ってる...?」

 そう口にした時であった。

 「父さん!!」

 トゥリアの息子が泣きながら叫ぶ。

 [トゥリア]は死んでいた。

 皆が泣く中、トゥリアはこの事実に困惑した。




 そうしてトゥリアは、様々な人を渡り歩いた、初めはたくさんの人々を笑顔にし、たくさんの人を助け続けた。




      飽きた




 人を助けてみたけど、なぜかだんだんわかってきた、どんな顔をしていくのか、喜ぶ顔、全てが見飽きた。




 冒険をしてみた、巨大なお宝、強いモンスター、仲間との絆、高揚する物だった。



          飽きた

 

 宝も力も絆も、やがて慣れてしまい、何も感じなくなり始めた。

 


 王として過ごしてみた。

 金銀の財宝、酒、女、城酒池肉林の日々、全てが豪華で最高の生活であった。



          飽きた

 


 楽しいのは最初だけ、刺激が少ないその生活はすぐにつまらないものになった。


 


 犯罪を犯してみた、湧き出る興奮、圧倒的なまでの背徳感、殺し、奪い、泣かせ、今までとは違う感覚であった。



          飽きた



 犯罪も慣れてしまえば日常、それ以上の収穫というのはありえなかった。



 もう自分は空っぽだ、自らが何をしても楽しくない、そうだ、今度は物語の主人公になるのではなく、物語を作ってみたい、それをみたら、俺は何か変われるだろうか?

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