罪のピカトム
「ここは....」
ウィリアムが扉を開けようとするとフォルトが肩を叩く。
「なんだ?」
「待ってください、フェイルさんを見てください、さっきのこともあってかなり気分が優れないようです、さっきみたいな場合がありますし心の準備は必要だと思います」
フェイルはコクコクと黙って首を縦に振る。
「そうですよ、フェイルちゃんもですし私も心の準備が欲しいです」
「わかった」
ウィリアムは扉を閉め、深呼吸をする。
「開けていいか?」
「....どうぞ...」
そうしてドアを開けるとそこには首を吊られた少年がいた。
「....これは....」
「いや待て、まだ生きてるぞ!」
直立時だけ息ができる拷問なのだろう、鎖が緩んでいることを確認するととまず少年の下にすぐに足場を用意すると、フェイルを呼ぶ。
「攻撃魔法とかでこの鎖を切ることはできないか?」
「...わかったわ...」
力無い声でフェイルは杖を構える。
「バースト...!」
鎖を部分を爆破させると、少年は力無く倒れ、ウィリアムがそれを受け止める。
「フォルト、この子を外に出してやってくれ」
「わかりました」
フォルトは少年を背負い外へと向かおうとした時だった。
突然壁が壊れて土煙を上げる。
「おっとっと! それは困りますよ! その人間は異教徒! 罪は精算しなければ!」
白衣をきた青年が歩いてくる、表情は穏やかだが威圧感を持つ、胸には罪のシンボル頭蓋骨のロザリオを持つ者、三神器、罪のピカトムである。
「お前は....?」
全員が戦闘体制に入るとピカトムは手を挙げる。
「待ちなさいな、私は罪人を裁くもの、その少年は異教徒なのですよ! あなたも罪を受けてしまいますよ!?」
ピカトムはウィリアムに凄むがウィリアムはニヤリと笑う。
「お生憎様俺も異教徒なんだ、イカれくるくるピーポーの言うことなんて聞こえねえ」
「なんと! 私の声が聞こえないと! 怒ってしまいますよ!?」
そう言ってピカトムは聖書を開く。
「フォルト! 今すぐその子を連れて逃げろ!俺らが時間を稼ぐ!」
「わかりました!」
フォルトは急いで走り出す、しかしピカトムは焦らない。
「残念ですねえ残念ですねえ、罪を精算できないとは」
「うるさい! あんなことして、絶対に許さない!」
フェイルは杖を構え詠唱する。
「ブラスト!」
風が吹き荒れ衝撃波がピカトムを襲う。
「イラ 滅っせよ」
ピカトムがそう呟くと一瞬にしてピカトムに向かっていた風が消え去る。
「な!?」
「弱い弱い!」
突然のことにフェイルが動揺しているとエレナが前に出る。
「私が行きます! ウィンドレッグ!」
風の力を足に込め一瞬にしてピカトムに近づくとナイフをピカトムの喉元に当てようとする。
「スペルビア 放て」
ピカトムは滑らかにナイフを宙返りしてかわすとエレナの顔面を蹴る。
「ぐはっ!」
エレナが地面に倒れ伏すと同時にエレナの真後ろに隠れていたウィリアムがダガーを投げる。
ダガーはピカトムの足に刺さるがすぐに引き抜くとウィリアムに投げ返す。
「返しておきましょう」
ウィリアムはマントで弾くとエレナの襟を掴んで後ろに下がろうとするが先にピカトムはエレナをとる。
「おっと、これは大変ですね、動かないでくださいよ?動いたらこの子の首が飛んじゃいますよ?」
ウィリアムとフェイルは身体を止めるとゆっくりと武器を捨てる。
「そうですね、エレナ、いい名前ですね、腕に刻んであげましょう
ピカトムはナイフをエレナの腕に突き立ててゆっくりと引いていく。
「うっ....うああああ.....」
エレナは気絶してはいるが悲痛な叫びをウィリアム達は黙って聞くハメになってしまった。
「.......ろ........めろ......やめろおおおおおお!!!」
フェイルが耐えきれなくなり杖を拾い詠唱する。
「ウィンドカッター!」
「おっと危ない、アワリティア、律せよ」
ピカトムはウィンドカッターを素手で掴むと投げ返す。
「あぶねえ!!」
ウィリアムはフェイルを押し倒しウィンドカッターを避ける。
「危なかったわ、ありがと」
「あいつの技...まるで意味がわからない....」
やつほどの強さがあれば、そんなことをウィリアムは思いながら何もできない悔しさが胸を震わせた。