2話:「よそ見したお前が悪い」
「照れ屋で我が侭な俺様との恋でお題」をお借りしました。
Site Name ハニィラブソング(略してハニラブ・英語だとHoney Lovesong)
Master リコ
URL http://amaiainouta.kakurezato.com/
相田を意識しだしたのは、確か小学三年生の時だったと思う。
夏休み、熱い中私はソフトクリームを舐めていた。後ろから気配がして振り向くと、羨ましそうな顔をした相田が立っていた。
「それ、おいしそうだな。俺にもくれよ」
「はぁ? イヤよ」
「ケチッ!」
ソフトクリームを食べられまいと私はぶんぶん振り回す。何なのコイツと思いふと顔を見る。目を細め、真剣な眼差しでソフトクリームを見つめるいつもと違う相田の顔に、少しドキンとした。
その一瞬の隙に相田は私のソフトクリームをベロンと舐めやがったのだ。
「よそ見したお前が悪い」
無邪気な笑顔は眩しくて。
「どうした? 俺の笑顔に惚れちまったか? ん?」
「ナルシストか、バカね」
そう言って、私は相田が舐めたソフトクリームを舐めたのだった。
(今思えば、あれが初間接キスよね……)
思い出して、少し顔が赤くなる。幼き日の懐かしい思い出。あんなに美少年だった相田はめきめきと逞しくなり、男前になっていった。
「あのままだったらよかったのになぁ」
紙パックジュースにストローを刺し、一口啜る。
(もし相田が成長しても美少年だったら、私達どうなってたかな)
相田から好きだと告白されてはいないが、好意は感じる。相田は話しやすいし、何よりいいやつだ。
「何飲んでんだ? うめー!」
「あぁ!? 私のジュース!」
ぼぉと窓を眺め考え事をしていたため、私のジュースは相田に奪われていた。
「よそ見してたお前が悪い」
そう言ってあの眩しい笑顔を向けてくるのだ。
(……かなわないなぁ)
あまりの眩さに目を細め、ジュースを奪い返す。
ストローの先を歯で噛みながら、ジュースを啜る。すると、相田は目をすっと細め、にやっと笑った。
「間接キス、だな」
「なっ! そ、それがどうしたのよ」
「別に?」
思わず顔が赤くなり私は俯いた。ストローに接する唇が、甘くくすぐったいような感覚に襲われる。
どうしよう、ドキドキが止まらない。
「ごちそうさん」
そう言って相田は嬉しそうに立ち去っていった。