1話:「俺がいるのに他の奴のことなんか考えさせない。」
文学フリマで無料配布の折本として配ったものです。
「照れ屋で我が侭な俺様との恋でお題」をお借りしました。
Site Name ハニィラブソング(略してハニラブ・英語だとHoney Lovesong)
Master リコ
URL http://amaiainouta.kakurezato.com/
太陽の眩しい通学路。後ろから肩をぽんぽんと叩かれた。見ると幼馴染の相田だった。
キリっとした眉毛に少し意地悪そうな目元。高身長でスラリとしているが、ほどよく鍛え抜かれた体。見た目は確かに男前だ。が、私の好みは色白美少年系。タイプではない……今のところは、だが。
「よ、おはよーさん」
「ん、おはよう」
腐れ縁が続き、高校までも同じ。話しやすいし、一緒にいて楽しいから一緒にいるのだが、一時期付き合っているのでは? と噂された事もある。すぐに噂は消えたが、それ以来相田の私に対する言動や態度がおかしい。
「昨日のドラマ見た?」
「いいや、見てねぇよ。何か面白いのやってんのか?」
相田はいつも身長の低い私に視線を合わせるため少し屈んでくれる。顔を覗き込まれる形になるので、少し恥ずかしい。
「内容は今ひとつなんだけど、秋田君が出てるの!」
今一推し美少年の名を興奮気味に口にすると、相田の柳眉が歪んだ。興奮している私は話を続ける。
「秋田君って顔小さいし、色白だし、いいよねぇ」
「……その話、やめろよ」
「秋田君ってかっこいいよねぇ……いいなぁ、結婚するなら秋田君みたいな人がいい」
「秋田なんて顔がいいだけの大根役者じゃねぇか」
「何ですって!」
むっときて殴りかかろうとした手を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。
「な、何よ」
「やめろって言ったらやめろよ根田」
「好きな人の話して何が悪いのよ」
目を細め、ぐいっと顔を鼻先がくっつくぐらいの距離まで近づけてくる。
「俺がいるのに、他の奴の事なんか考えさせない」
強い眼差しに鼓動が早まる。顔は好みではないが、この時々見せる眼差しに私は心底弱いのだ。
「……離してよ、痛い」
「悪ぃ」
手首を掴む力が緩んだ瞬間、私は慌てて手を引き寄せた。手首に残るほのかな熱にドキドキしている。
「もう行くぞ、遅刻する。……根田? どうした?」
「……何でもないわよ! バカッ!」
顔が赤いのをバレないように、私は相田を置いて早足で歩き出した。