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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
48/61

48、驚愕

チャールストン伯爵邸では夜会が開かれていた。

王都で流行っている人気の演奏家たちを呼んだり、派手な演出があったり、見たこともない食事やデザートがふんだんに取り揃えられていてこもチャールストン伯爵主催のパーティーは人気が高い。 マダムたちは皆 チャールストン伯爵夫人に取り入ろうと躍起になっていた。チャールストン伯爵夫人は流行を取り入れるのがとても上手で伯爵、子爵、男爵家の夫人たちは夫人が作る『チャストリー』と言う婦人会に入るために挙って太鼓持ちをしている。


「チャールストン伯爵夫人 お聞きになりまして? 巷では聖女リリーの話しで持ちきりですのよ?」

「ええ、ええ 私も聞きました。それはそれはお優しい修道女の話ですわよね?」

「聖女? 修道女?」

「あら、チャールストン伯爵夫人ほどの情報通がご存じなかったのですか? ふふ 偶にはお役に立てるかしら? 

ゴホン 何でも奉仕活動をしながら 食事のとれない貧しい者たちに私財を投げ打って施しをしていたり、街の美化活動、小さな孤児の面倒を見たりと人々の心に寄り添い絶大な人気を誇っているらしいですわ。」

「何でもお手伝いをすると とても美味しいクッキーをくださるらしくて、そのクッキー目当てに大人も集まってくるとか。」

「まあ! でも奉仕活動は修道女としては当然ではないの?」


「まあ、する事は大差ないかも知れませんが そのリリーと仰る者には何とも言えない癒しの効果があるらしくて 集まる者たちもとても従順らしいですわ。

例えば他所では 食べ物の量を巡って喧嘩に発展する事も度々あるらしいのですが リリー様のところでは一切そういったことがなくて そこにいる皆が笑顔なんですって!」

「そう、それも全て聖女リリー様の笑顔のお陰だって仰って。」

「あのお美しいお顔には癒しの効果があるとか、聖母のようだとか。」

「まあ、素敵なことね 聖女リリー様……、素敵な方なのね。」



「聞きましたかな? 聖女リリーの話しです。」

「何でもバース男爵が懇意にしていると吹聴しているとか。」

「何であの男が聖女リリーと懇意になるのだ?」

「聖女リリーが行っている奉仕活動などに支援をしているそうですぞ。」

「バースあたりがそんな羽振りがいいわけがないだろう! 何かあるのか?」

「どうやらアスカ商会って言う商家に口利きをしてやったことがあるらしいのです。それでそこに支援させているようですよ? 聖女リリーは王都でも今やかなり人気ですからそれを使おうって算段ではないですかね? それをさも自分の手柄のように吹聴しているようです。」

「小物が…。威勢のいいことだ。」

「だが、聖女リリーは使えるかも知れんな。」

「と言いますと?」

「上手く仕立てれば 民に人気の聖女を皇太子の側室に押し込みその後ろ盾になるって、おっと 口が滑ったな。」

「ふっふっふ いえ何も聞こえておりませんよ。」

「そうか、良かった。 口利きする事もできるしな。ふっふっふ。」


「皇太子妃殿下の体調不良もだいぶ長引いているらしいですしね、今は好機と言えますな。」

「ああ、違いない。」

「ですが、何故こんな好機に高位貴族は皇太子殿下と縁を繋ごうとしないのですかな? いくら代々側妃を取らない風習と言っても世継ぎ問題はどこの国でも一定の許容を見せるものです、我が国は案外頑なですよね? 陰で囲っているのでしょうか?」

「噂では竜妃教育は大変厳しいらしく それに耐えられた妃殿下に対する敬意とかなんとか。実際は分かりませんが。」

「まあ、側妃に子供を産ませて王位を継いでも代々短命であらせられるらしいから『言い伝え』を重んじてってところではないですか?」

「くっくっく 『言い伝え』ねー、くだらない。 聖女リリーを側妃にするならどこの家がいいかな?」

「リッツ侯爵家などは割と争いを好まない家なので良いのでは?」

「ブルックス侯爵家などは如何ですか?」

「あそこは野心があからさまでこちらを危険にする事がある。」

「では アーガソン公爵家などは? 確か子供が出来ずに養子を取ったと聞きましたが?」

「ふむ、だがこちらの思い通りにするには大物すぎる気がするな……。」


あっちでもこっちでも聖女リリーを上手く取り込み自分の傀儡にしようと企む連中が後を立たなかった。5大公爵家が沈黙する中 新たな勢力として台頭を目論む有象無象が会合を開いていた。 その道具に『聖女リリー』に目をつけ狙っていた。




スタンビーノは気になることがあった。

レティシアは夜中に悪夢を見て号泣する事がある。そんな時は優しく腕に囲い落ち着かせ眠る。今はその頻度も減った。夜中に目を覚ましてレティシアが安眠できているかを確認してしまう。よく眠れている時…レティシアはいつも私に背中を向けて寝ている。その安らかさにホッとする、今なお殺されそうになった時の事、旅に出て追手に追われていた時の事、彼女の辛い過去を思い出し泣いているかと思うと胸が締め付けられる。

それが反対側を向き何かに掴まっているように見えるのだが、そうしている時はとても安らかに寝るのだ。気になって見ても何もない。今は腹が大きくなり横向きでないと眠れないと言う…きっと楽な体勢があるのだろう。何にせよ彼女の安眠が1番である、どうか心安らかに眠れますように。



それから程なくして貴族会の場で『健やかで民に絶大な信頼のある者を皇太子殿下のご側室になされたらどうか』との提言が上がった。

勿論 この場では『誰』を推すかは話し合われない、まずは皇太子殿下に側妃が必要かどうかが話し合われる。必要と判断されれば、王室御蔭庁内に側室選考部署を立ち上げ候補に上がった令嬢の身辺調査などが行われるわけだ。この国においては神官とも協議を詰めなければならない(実際には竜神様の許可を頂くこと)、王や王子の意向では妃を2人以上置く事は出来ない。


「代替わりもされ王家のお血筋を残す事も重大な責務であると言えます。レティシア皇太子妃殿下は歴代でも大変優秀なお方です。ですが どうもお身体が脆弱…ゴホン ですからここは皇太子妃としての仕事はレティシア皇太子妃殿下に お世継ぎは別の者にお任せすれば宜しいのではないでしょうか?」

この意見に賛同する下級貴族は多かった。


5大公爵家 アシュトンのカーライル公爵が口を開いた。

「心配は最もかも知れぬが……ご結婚されて1年も経っていない新婚のお2人にまだ無用の心配ですな。」

「全くですな。くだらない 次の議題へ移ってくれ。」

リンクス公爵も追撃して この話題はすぐに終わった。



下級貴族の者たちがのし上がるにはチャンスだったのだが あえなく撃沈、レティシア妃殿下が体調を崩されている今が好機なのだが、5大公爵の壁の前に計略は簡単に阻まれてしまった…仕方なく次の手を考えることにした。


『貴族会で決定できないなら民心を煽り承諾せざる状況に追い込めば良いのだ』

この『聖女』と言う千載一遇の切り札をまだ手放す気はさらさらなかった。




テレーズは次の手を考えていた。

乙女ゲーム 『恋愛バトル ライラック姫の初恋』はテレーズが王子様の真実の愛を貫いたことでハッピーエンドになった。真実の愛を知ったスタンビーノ王子はデレるようになり次第にヒロインを溺愛していく甘々設定。人目も気にせず愛を囁き周りの男たちの視線に嫉妬して腕の中に囲うラストはキュンキュンした。逆ハーではそれが一転好感度を振り切れてて自分の感情より愛するヒロインの気持ちを一番に優先させて 陰で苦しみながらも惜しみない愛を注ぐ…くぅ〜泣かせるって感じ。


そして『恋愛バトル ライラック姫の初恋2』が出るのだ。

この作品では前作品でテレーズが平民から男爵令嬢となり王子のハートを射止め 王族となる所謂王道シンデレラストーリーのその後が描かれる、本作品では特待生としてきた平民ヒロインを令息たちが自分好みの令嬢に育てる がコンセプトになっている。まあ所謂これはマ◯フェアレディって感じのやつね。

この作品では平民の特待生は国家試験を受け合格すると晴れて王宮勤めとなり、身分も上級平民とされ貴族と結婚する事が許される。ヒロインに対しライバルとして仮の平民女性生徒がそれぞれの攻略者とセットで存在している 各高位貴族がパトロン?の様にサポートとしてついているのだが イベントや成績や好感度を経てそのライバルである高位貴族の令息を自分側に取り込んでいくのだ メインヒーローの他に取り込んだ令息たちのランクによっても ヒロインの立場が変わっていく。多くの支援者を得ることにより、女性初の管理職に就く!みたいな。誰とメインで付き合うかによって目指す役職?職業が違う、まあ結果 どのルートでも女性初がつく 王宮勤めも初だし、男社会の中で信頼を得て例えば文官のトップに立つのも この時代はあり得ないことだから地位と賞賛を得てサクセスストーリーを突き進み、攻略対象と結婚してハッピーエンドを迎える訳だ。

因みに逆ハーはない、取り巻きを増やすものの純粋な友情みたいな感じだけだった。前作の逆ハーがヒロインが股開きすぎ!と可愛い顔に淫乱はヤメロ!と一部ネットをざわつかせた為と囁かれた。それを受けてか後継作ではエロではなく純愛仕様にした結果、もっとエロを出せ!とネットが炎上した…… 見たいの? 見たくないの? どっち!?って感じだったけど、8ヶ月後にR18で出た時はエロ満載になっていた……これにユーザーは満足したらしく ネットではエロネタで盛り上がった(笑) 何だよ、結局好きなんじゃん!


その攻略対象に会って確認したいと思った。確か私が卒業して2年後に物語が始まる?5年後だっけ? まあ、もしかするとまだ入学していないかも…そうすると…えええーーー!良いとこの坊ちゃんは領地持ちだから王都にいない可能性あり!?

この広い世界 隅から隅まで行くとなるとかなりのお金がかかる! あー、無理無理グレッグでお金使って今 大金ないし、見返りもなく見に行くだけで散財するのはキツい。

はぁー、まあ保留 王都のタウンハウスで見かけられるのを気長に待つか。


そうだ! その前に本作品の私の後継品のヒロインを見に行こう!!

それなら実家が描かれていたからある程度予測がつく! よし、そうしよう!!



テレーズは2作目のヒロイン アリアン・サボイに会いに行った。


アリアンは王都にあるパン屋の娘。店を手伝いながら必死で勉強して特待生試験で首席を取って晴れて学園入りするのだ。確か店の名前は『サボイのパン屋』……記憶を辿って探すが見つからない、パン屋はあるが『サボイのパン屋』がないのだ。あるはずの場所にあるパン屋は『まちのパン屋』、おかしい……何でないんだ!?


店の外から中の様子を窺う。

店先には客の他に店員らしき人間が2人いる。母親と娘って感じ……。待て待て待て あの容姿! アルビノみたいな絹糸のような透ける白髪に 薄いペリドットの様な瞳、前髪を上げて2つのおさげを三つ編みに居ているあの感じ アリアンでしょ!! 


私が目をギラつかせているとアリアンはこちらに気づきビクッと肩を窄ませ顔色が悪くなっていく。母親とっぽい人間に何か言ったかと思うと奥へ入って行ってしまった。

くっそ!! 逃すか! 店の中に入り店を奥をジロジロ見ていると母親っぽいのが話しかけてきた。

「あの、何か御用ですか?」

「ねえ、ここアリアン・サボイのパン屋よね?」

「失礼ですが、どなたですか?」

「えっ? テレーズよ! それより、アリアンの店よね? さっきまでここにアリアンいたわよね? ねえ、何でサボイのパン屋じゃないの? 凄い探したんだけど!」

不躾な物言いに危険なものを感じたアリアンの母親は娘を呼ぶ事はやめた。


「あのー、サボイのパン屋はうちの前の店です。7年前位に潰れてその後にうちが入りました。見ての通りただのパン屋です。アリアンさんとおっしゃる方は存じません。

さっきまでここにいらした方は教会から偶にお手伝いに来てくださる方で先程お帰りになりました。何か あの方に御用があったのですか?」

「嘘よ! あの容姿はアリアンのものだったわ!」

「そう仰られても…私どもはただシスターとしか呼んでおりませんのでお名前も存じませんし…。」

「ふーーーーん、じゃあどこの教会に行けば会える?」

「すみません、存じません。」

「嘘でしょうー!! 超面倒なんですけど! ねえ、なんか隠してんでしょ? おかしいわよ!じゃあどうやってシスターが派遣されてくるって言うのよ!」

「お手伝い頂いた時間でシスターにはパンをお渡ししているだけで…うちが頼んで手伝いに来て頂いているわけではありません、奉仕活動の一環です、なにせこんな小さい店ですから。」


そういうとテレーズは納得できないけど仕方なく帰って行った。

アリアンの母親はそっと胸を撫で下ろした。しばらく経ってアリアンは店に戻った。両親は危ないから暫く店には顔を出すなと言った、アリアンも不安だったので裏口からそっと自宅に帰ることにした。不安から足早に歩いて行くとある路地を通りかかった時いきなり腕を掴まれて裏路地に引っ張り込まれた。

「キャーーーーー!? モガモガ」

口を手で塞がれて助けも呼べない。

「みーーーつけたーーーー! 初めましてアリアン・サボイさん。」

目の前にはピンク頭の可憐な顔のテレーズがいた。だけどその顔は常軌を逸していて狂気でしかなかった。アリアンは目の前が真っ暗になった。

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