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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
44/61

44、体内会議

ハラダーニュ国が滅亡したと世界に激震が走った。

世界で最も富んで近隣諸国の食糧も輸出し資源豊かで秩序正しい倫理的国家が滅亡した……その情報は輸出入などが国交がある国から齎された。そして、食糧をハラダーニュ国に依存していた国は恐慌状態へ陥った。


生存者0の事実は世界を震撼させた。

平民の末端が隣国に既に嫁いでいた場合は特に問題はなかったが、有力貴族で政略的に隣国に嫁いでいた者たちは時を同じくして次々に死んだ。病気がなかったものまで一気に死んだので呪いと囁かれていた。それにまつわる騒動もあったが、幸いと言うべきか直接隣はハラダーニュ国に面してはいなかったのでヴァルモア王国は直接の被害はなかった。




レティシアはと言うと……オモテの人格として出てはこなかったが、体内ではその人格を消されずに生きていた。

「フェルティア様、オルシィミ様とお呼びしても宜しいでしょうか?」

「ふむ、構わぬ。」

「フェルティア様、何か私にお力になれることはございますか?」

「………。」

「レティシア、ソナタはお母様と私が体を乗っ取ったと言うのに何故敵意を向けない?」


「そうですね…。分かりません!  竜神様はフェルティア様とオルシィミ様との最後が辛くて千年経った今も傷としてお苦しみになっていらっしゃいました。

私は…その…殺されそうになって、竜神様が助けてくださらなかったらその時に死んでいたのです。その時 たくさん竜気を分けていただいたので竜神様の過去を私も一部共有してしまったのです。竜神様は私にとても優しくしてくださいました、だから フェルティア様とオルシィミ様を殺したのは誰か、何のために? それが気になり調べ始め、ハラダーニュ国に当たりをつけました。

神殿に保管されているであろうところまでは掴んだのですが、警備が厚く侵入経路の確保が難しかったんです。私は、竜神様にお2人の神核をお返し出来れば生きる気力を取り戻してくださるのではと奔走していました。


私に中にお2人とも入る事までは想定していなかったので驚いてはいますが、竜神様が気力を取り戻されたなら 当初の目的は達成されたのかな?って思います。」


「だーかーらー、どうしてそこまで竜神 レクトルに尽くすのよ!」

「お父様の事が好きなの?」

「んーーー、好きは好きですけど恋愛的な意味ではありません。 実は 私前世の記憶があるのです。小さい頃に両親を亡くし 私自身も25歳の時に殺されて転生してこの世界に来ました。それで18歳の時に崖から馬車ごと落とされて殺されそうになりました。んー、竜神様がいなければ死んでいたので まあ1回殺されたようなものです。

竜神様は見返りの求めない愛を下さった、前世ぶりの無償の愛を感じ嬉しかった、私も竜神様に何かお返ししたかったんです。

たぶんそれが理由です。取るに足らない私をこの世界で今も生かしていただいている…だからお役に立ちたかった。 そんな感じです。」


「なんと難儀な。」

「結構 苦労していたんだね。」

「殺した者たちが憎いであろう? 復讐したいか?」

「前世で殺した人たちは今どうしているか知りようもないですし、今世の犯人は既に竜神様が罰してくださいました。今は部下として使っております。」

「ソナタはおかしいようだな。」

「ええ、お母様 そのように思います。」


「お2人は仕返しなさったのですか?」

「勿論じゃ、本人はとうに死んでおるのでハラダーニュ国ごと滅したわ。」

「そうなのですね。」


「……やはりソナタは変わっておる。」

「ところでお父様の体からレティシアの匂いがするのは何故?」

「ソナタからレクトルの匂いもするし、レクトルからソナタの匂いが確かにする。」

「恐らくですが、近頃 竜神様は意識を失う事が多かったのです、そんな時は竜神様に私の血を飲んでもらっていたのです。そのせいかと思います。」

「なるほど、世話になったのだな。」

「竜神様に頂いた命ですから。」


『レティシアは可愛いだろう?』

「レクトル!」

「お父様!」

「竜神様!」


レティシアの頭の中に竜神様ことレクトルまで割り込んできた。


「まあ、竜神様お加減は宜しいのですか?」

『ん? だいぶな、3人で会話して私だけ除け者だからつまらなかったのだ。』

「ふふ ごめんなさい。」

「フェルティア、オルシィミ 顔色がいいようだな。」

「ええ、レティシアの中は邪気がなくて居心地がいいの。」

「私もです。何なのかな? レティシアはちょっと変わってるけどそれが心地いい。」

「そうね、それもあるし…言ってみれば神気が多い、魂が保護されているみたい。」

『ふむ、私以外の神気があるな、どうしたのだ?』

「ああ、もしかしたらあちこち旅した時 水の神のトラビスタ様にお会いして加護を頂きました。それかしら?」

『トラビスタか! 懐かしい名前だな。』

「ふふ 本当に懐かしい…よく気付けたわね。」

「うふふ 水の中で光るものが何か気になっちゃって、今考えると結構失礼なことしちゃいました。」

「ふふ そう。でもトラビスタは透明でいつも気づかれないから寂しがりなの、きっと嬉しかったのね。」


たわいもない話をしながらのんびりと過ごしていた。


スタンビーノの嘆きも知らずに……。




3ヶ月経ったある日、神殿の前にいるスタンビーノの前にレティシアの姿をしたフェルティアがいた。

「レティ!」

レティシアはこの3ヶ月間1度も食事をしていない。だが、やつれた様子はなかった。

レティシアのお腹はもう7ヶ月くらいで少しふっくらしていた。それを見ると涙が流れた。

愛しい妻とその子供を労わることもできない。神に捧げられ奪われる命。


「この母体には栄養が必要だ、それから温かい環境も必要であろう。そちらへ行く。」

「承知致しました。触れても構いませんか?」

「ふむ、ここは外ゆえエスコートを許す。」

「ありがたき幸せです。」

久しぶりに触れたレティシアの手は何も変わらない。

何もかも変わらないのに レティシアの中身だけない。苦しくてやはり笑顔を作ることはできなかった。

「のう、スタンビーノと言ったか。」

「はい、奥様。 うっく」

「少しの間、ソナタの腕の中にレティシアを戻してやろう。」

そう言って 意識がレティシアに切り替わった。


「んんーー、あら? スタン?」

「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ、レティ! レティ!!」

訝しがる護衛たちの目も人目も憚らずスタンビーノは強く強く抱きしめた。


部屋に入っても腕に囲って離せなかった、止めどなく涙が溢れて来て思いが胸に詰まって声にならなかった。


「辛くはない?」

やっと搾り出し口から出て来たのはたった一言。

「私よりスタンに辛い思いをさせているね…ごめんなさい。でも良くしてもらっているって言うと変だけど、頭の中でずっと話をしている感じ。」

「そっか、辛くないならよかった…。ねえ俺に出来ることはない? 何をしてあげられる?」

「んー、もし ね、このお腹にいる子も無事生まれたとして器として使われることになったら…スタンは残りの人生を一緒に歩んでいく人を見つけてね、そしてその方との間に子供を作って育ててね。タネの問題があるから 竜神様に何とかならないかお願いしてみるからね、ちゃんと幸せになる道を探してね。」


「…何でだよ! 何でそんなこと言うんだよ! 俺との人生をそんな簡単に諦めるなよ! 俺は! 俺は辛くて仕方ない……よ? ねえ、俺を望んで? なんとかしてって言ってよ! 必要だって言って? どこにも行かないでくれよ!! 俺の側で生きてくれよ!」

そう言って抱きしめて泣いていた。

それをレティシアは優しく抱きしめ背中をさする。

「ごめんなさい…ごめんなさい。スタン愛してるわ、どこにいようともずっと貴方の幸せを祈っているわ。」

「ごめんレティ……こんな事ならもっと早くに手を離してやれば良かった! 死なないで死なないでよレティ。」


結局朝まで抱きしめ合って互いの温もりを感じることしか出来なかった。




リリーが奉仕活動をしていると、ハンスの両親がやってきた。

「聖女様! うちのハンスを知りませんか!」

「あら、ハンスのお父さんとお母さん? ハンスってどうかなさったの?」

「昨日 聖女様のところへ行くって言ったまま帰ってこないんです!」

「まあ!」

リリーは持っていた荷物を落とした。


「昨日、聖女様んとこ行きましたよね? その後知りませんか? こっちでまた手伝いしてるんじゃないんですか?」

「ハンスのお母さん ごめんなさい…昨日は来ていないわ。と言うか、司祭様のお手伝いで教会にはいなかったのです。戻ったのは夜中でしたし特に人がいる様子も…ねえ マルコは何か気づいた?」

「いえ、真っ暗ですし…でも 特に人がいた形跡はなかったと思います。」

「あ゛あ゛そんな!! ハンスどこに行ってしまったの!?」


「ハンスは教会へ行くと言ったのですね? 皆で探しましょう! 手の空いている人は一緒に探してくださる?」

「「「分かりました 聖女様!」」」


皆でハンスの家から教会へ行く道やここから教会に行く道などを捜索したが結局ハンス見つからなかった。嘆き悲しむ両親にもリリーは寄り添い懸命に探す姿は献身的で辛い心情に寄り添う姿は正に聖女、ハンスは見つからなかったが リリーの優しさは彼女を更に聖女と名を広めた。


憲兵も必死で探したが夕方ハンスを見たと言う者以外目撃者を見つけることは出来なかった。やはり郊外の教会に向かっていたようだった。

憲兵曰くここ最近子供が攫われる事件や子供が消えてしまう事件が頻発していると言うのだ。いなくなる理由がない者もある者も、事件性を感じるものもないものもあり、特に子供が狙われているらしいということしか分かっていない。


比較的 見目麗しい子供(男女ともに)が狙われていると言う。

ハンスもアッシュグリーンの髪色に瞳は青と緑の混在する湖のような色 珍しい色合いで大人しい印象のハンスは 憲兵は狙われやすいと言った。

裕福な家であれば侍従や護衛を雇えるが、平民であればそんなものを雇う余裕はない。自分の身は自分で守るしかない、街に危険はあるが狭い家の中だけで生きていくことはできない、自分が街に馴染むしかない…この街で生きていくには……。

願い虚しくハンスは見つからなかった。




シエルは困っていた。

それはアシュトン、グレッグ、ノーマンの使い道についてだ。

レティシアがハラダーニュ国を調べたいというので使ったが、滅亡してしまいもう潜伏する必要性もない。


かと言ってレティシアのそばに侍らす事も出来ない。

そこでソトマウラ国の大甲虫の繭玉を被れないように採取するように頼んだ。

出来ればその毒消を出来るか探って欲しい、そう言って出国させる事にした。

レティシアがレティシアではなくなった場合、あの者たちをどうするべきか……あの者たちは己の主人がレティシアとはまだ知らない。


ただ、リアーナの監視をさせていたので自分たちが王家に関する者に使われている事は薄々勘づいているだろう。

さて、レティシアだったらこれからどうやって使うつもりか………。その後の使い道に頭を悩ませていた。

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