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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
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4、卒業パーティ

卒業パーティは恙なく進行していた。

計画はレティシアを誘拐し殺す事。

どこかに監禁することも考えたが、逃げ出されたりして足がつくと困る。隣国の山小屋で殺し、火をつけて証拠を隠滅し、身代金目的の誘拐に仕立てるつもりだった。


一番の問題はレティシアが1人にはならないことだった。


常にスタンビーノ王子殿下と共にいるし、殿下がダンスに向かわれても常に護衛がいる。それをどう掻い潜るか……。だが解決策は用意してある。


それにヒントをくれたのはテレーズだった。



レティシアには影武者がいると言うのだ。

影武者? それはどう言うこと? 詳しく聞きたくてもそれしかわからないと言う。

仕方なく密偵を雇ってずっと見張っていると確かに影武者がいた。

ほとんど区別がつかなかったが、レティシアについている護衛で当たりをつけた。


レティシアについている護衛は護衛のポケットのところに同系色の刺繍が2本線入っていた、影武者の時は1本線、そう思って行動確認するとほぼ間違いないようだった。

なるほどスタンビーノ王子がレティシアの資質について疑問を持たないわけだ、つまり学園に来ていた殆どが影武者の方だったのだろう。

影武者相手にせっせと罠を仕掛けていたってわけか。



卒業式の前の日までずっと影武者だったので不安もあった…だが 卒業式くらい本人が来るだろう、と踏んだ。

テレーズは王子のダンザーイが無いと私が◯◯なれない!とか訳のわからない事を言っていたが、今日のこの卒業パーティはとても特別なものだったらしいとは分かった。


卒業式の前日 影武者が1人になったところを薬を使って攫った。


そして、パーティの時 女にわざとレティシアとその女のドレスをワインで汚させた。

別室で着替える時は流石に護衛も廊下で待機する。

そして女の支度は長い。

その間に窓から侵入した賊がレティシアを連れ去った。


薬で眠らせた影武者を椅子に座らせ、眠ってしまったように見せかけた。

そして頃合いを見計らってワインを掛けた女は部屋から退散する。部屋を出る時、

「お待たせしてすみません、時間が掛かったので眠ってしまわれたみたいです。」

そう言ってその場を去った。勿論 この女も雇った者 仕事を依頼された人間だ。


部屋を覗くと確かにソファーに座ったレティシアが眠ってしまっているようだった。

護衛たちはレティシアのために暫しの休息をと廊下でそのまま待機した。会場にレティシアがいないことに気づいて探しに来たスタンビーノ王子、廊下に護衛が立っているのに気づいてやってきた。


「レティシアは中?」

「はい、令嬢とぶつかった際ドレスを汚してしまい こちらでお着替えになり、お疲れのようでソファでお休みになっていらっしゃいます。」

「そうか、開けてくれ。」

「はっ。」


ふふ、レティったら寝かせてあげたいけど、もう少し仕事をしないとね。

回り込んで声をかける。

「レティ、起きて もう少しだから頑張って。

・・・・・・これはサリー? おい、お前たちレティシアはどこだ?」

「は? そちらが…えっ? 今日はサリーの予定はありません。 この会場にはレティシア様しかお見えではありません。」


「私がレティシアを見間違えると? サリーを起こせ。」

「は、はい。」

揺さぶり名を呼び起こすが起きない。

流石に異常事態を感じた

スタンビーノは一言「許せ」そう言うとサリーを引っ叩いた、数発続けると意識を取り戻した。

「うぅぅぅ、おえっ 頭が痛い。」

「サリー、何故お前がここにいる? レティシアはどこだ?」

「えっ? あ、いえ分かりません、ここはどこですか? 私は王宮で仕事を終え帰ろうとしたところまでは覚えているのですが……、レティシア様のことは存じ上げません。」

サリーの介抱をさせる。


「今日ダンスをしていた時は間違いなくレティシアだった、サリーは昨日拐われたなら、歩いてこの部屋に入ったのもレティシア本人だ。覚えている事を話せ!」


ガタガタ震えている護衛たち。

「令嬢、オレンジ色のドレスを着た令嬢がぶつかってワインが2人にかかりました。そしてここで着替え、ソファでお眠りになられ、その令嬢だけ出てきて眠ってしまったようだとその間ずっと我々はここに立っておりました。その2人以外出入りされた者はおりません。」


「部屋に入る時は中を確認したか?」

「最初に入室したのは令嬢でしたが、念のため確認致しました、その時は誰もおりませんでした。」

「お前は会場にその女がいないか確認し、いたら連れて来い。お前はその女の特徴を他の警備の者にも伝え全員で速やかにレティシアを探し出すのだ!!」

「「「「はっ!」」」」



会場中を隈なく探したが、オレンジ色のドレスの女はいなかった。


「すぐに王宮に知らせ兵を出させろ! この部屋に連れてきたのは女か?」

「はい。」

「予め着替えが用意さえていたとなると計画的だな。この部屋から外に出る方法は?」

「はい、こちらが開くようになっておりました。」

「お前たちはここからどこへ行ったか確認しろ。 サリーはそっと帰せ。」

「はっ。」


ジリジリと気が焦る。

「殿下!」

「どうした!」

「窓を全部覆った馬車がものすごい勢いで走っていたと目撃情報がありました。」

「何!? どこへ向かってるのだ!」

「分かりません、取り敢えず目撃情報から追っております。」


「半分はそちらの捜索に回せ。半分はこちらだ。内部から手引きしなければ出来ない、こちらの捜索にもすぐに手を回せ!」

「「はっ!!」」


「殿下、どういうことですか?」

「相手は影武者の存在を知っているだけではなく、サリーと区別していた。」

「あっ!?」


「ここ最近の密偵や王宮の出入りしていた者と金で雇った人間たちも探せ。」

「はい。」

「それから…… それから念のためノーマン、グレッグ、アシュトン、テレーズの周りも探ってくれ。」

「は? 何かあるのですか?」

「確証はない、だが私とテレーズをくっつけたがっていた……。それに…… もし影武者を張り込みで見つけたのだとしたら、数人ではなく組織的に長期間潜伏してしていたことになる、それには金がかかる。」

「確かに……。レティシア様をピンポイントで狙うメリットはもはやない…婚約者を狙う良家もここまで来るとあり得ません。それに大臣や有力貴族は知っていますしね。」

「そう、そこだ。つまりはそこまでの情報は得られない者の仕業と考える方が妥当だ。

しかし、・・・この卒業パーティの会場からレティシアを攫っても、私が婚約者を変更するとは限らない。


嫌な予感がする。

私が婚約者を変更するだろう場合は2つ……レティシアを穢した場合、それとレティシアが死んだ場合。


穢した場合は……足がつく可能性がある、目的の婚約破棄が出来たとしても逆に捕まれば不敬罪で家が取り潰される……私の横に望む者をつけたとしても、当然その者は疑われる。例えばテレーズの信望者が起こした事件だとしても、テレーズと私が結婚しても信望者には何のメリットもない……故に絶対にバレてはいけない計画なのだ。


だから私は殺されて証拠を隠滅する可能性の方が高いと思っている。

時間がない!すぐにレティシアを見つけ出すのだ!!」




ノーマンたちは手が震えてしまうのでポケットに手を突っ込んだ。

投入された兵士たちの数に慄いていた。王子殿下の婚約者とは言え尋常ではない数の兵で埋め尽くされ、卒業パーティに参加している全員が帰れずに拘束されていた。

聞こえないように会話をする。


「これってどういう事?」

「わ、分からない。大袈裟すぎないか?」

「ああ、何故こんなにも王宮の騎士が投入されているのだ!?」

「もし、バレたら俺たちはどうなる?」

「馬鹿、余計な事を言うな。だが問題はまだある。」

「ああ、あの女が向こうに捕まったら……。」

「もう、ここから逃げたのだろう?それにターゲットも捕まらなければ有耶無耶で終わる筈だ。」

「問題は戻ってきて報酬って言い出さなければ、うっ!!」

周囲に気を配っていたはずなのにいつの間にか背後にいた者に意識を刈り取られた。



3人が気づいた時には王宮の断罪室だった。


そこには両陛下にスタンビーノ王子殿下、それに大臣や有力貴族もいた。

3人は引っ叩かれて目が覚めたのだ、こんな扱いをされたのは生まれて初めてで膝がカタカタなっている、これは全てがバレたのだろうか?


「単刀直入に聞く、レティシアをどこにやった?」

まだバレてない?

「何の事でしょうか?何があったのですか?何故、私がレティシア様を知っていると言うのですか?」

「そ、そうです。私たちは関係ありません。」

「卒業パーティを抜け出したなら、な、何か用があったのではないですか?

私たちは卒業パーティに参加していただけでレティシア様とは何も関係がありません。」


ここには両陛下も大臣や有力貴族もいる、婚約破棄するには絶好の機会だ、しかも悪印象を上手く植え付けることに成功すれば、今回の事もバレても上手く乗り切れるかもしれない。


「そうです、彼女に関する噂をご存知ないのですか?彼女は学園にいる元平民の男爵令嬢を目の敵にしていてイジメ倒していました。時には手をあげたり、私物を捨てたり、レティシアと言う女性は冷たい女性です。

スタンビーノ王子殿下には相応しくない人間です。」

「そうです、あの女は嘘つき女です。信用しないでください!!」


「お前たちはレティシアが虐めたと言う証拠があるのか?証拠があってレティシアを貶めているのだろうな?」

「はい、学園の生徒に目撃者も多数います。」


「ほぉー、目撃者とはこの者たちか?」


「えっ!?」

そこには自分が指示した者たちが皆揃っていた。

詰んだ……。


「何か言うことは?」

「た、確かに学園の悪評を立てた事は認めます。ですが、今回の拉致の事は知りません。」

「そうです!私たちは今回の拉致には関係ありません!」

「私たちだって驚いているんです。もしかしたら結婚するのが怖くなって逃げ出したかもしれないじゃないですか!何でもかんでも我々のせいにされても困ります!」


「ほー、拉致には関係ないか?」

「「「はい!関係ございません!!」」」


「レティシアが拉致されたと知っているのに、関係ないと?」

3人は蒼白になった、自分たちの無実を証明しようとムキになって余計なことまで口走ってしまった。


「スタリオン侯爵家、ハーマン伯爵家、カーライル公爵家 レティシアが無事に戻って来なかった場合、3家を取り潰しとする。」

「「「待ってください! な、何故!!」」」

「「「承知致しました。この度は申し訳ございませんでした。」」」

「「「父上!何故ですか!?違います!横暴です!何故そんなに簡単に取り潰しなどと言うのですか!!」」」


「レティシアの護衛についていた者は自害を命じる。」

「「申し訳ございませんでした、この命で償えるものではありませんが死んでお詫び申し上げます。」」


自身の胸に手をあて、首に当てた刀を当て引こうとした瞬間、

「待て。」

陛下の方に目をやる。

「レティシアを探し出せ、猶予をやる。その間に探し出すのだ!」

「「はい…、承知致しました、感謝申し上げます!!」」


3人は護衛たちが躊躇もなく刀を握った事で完全に理性を失った。

「「「ひー! ひー! 助けてー!!」」」


「だが、レティシアが傷ひとつなく戻ってくれば息子たちを平民に落とすだけで済ませてやる。」

3人はガタガタ 震える体を止める事ができなかった。

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