表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
31/61

31、リアーナ−2

庭に1人でいるところを狙われた…正確には 狙わせただが。

傷心のリアーナはあっという間に薬で意識を奪われ用意されていた馬車まで連れて来られて気づいた時には馬車の中にいた。自分の身に何があったのか分からず戸惑っていた。


だけど泣き叫んだり暴れたりはしなかった。

これも全ては家族不幸にした報いなのだろう、そう思ったからだ。


どうせ 助けて 私はレティシアじゃないリアーナよ! とは言っても伝わらないと分かっていたから、無駄な足掻きはしなかった。

でもレティシアとして攫われたせいか馬車の中でもわりと快適だった。


馬車の中だというのに、ベッドもテーブルもトイレもある、簡単なティーセットもお菓子や軽食まで用意されていた、天井はガラスで天気がわかるから大体の時間も分かる。四方が壁のお陰で誰かが急に入ってくることもない。上から食事を投げ入れられるけど……母や姉を思えばキチンと食べられるサンドイッチとフルーツが一日2回貰えるだけマシ。

御者との間の小窓も向こうもカーテンがついているけど、こちらも一応は閉められる、まあ向こうが開ければ開いてしまうが…、着替えの時などはちゃんと断りが来る…牢屋の生活より全然快適だった。


だがその態度がかえってレティシアと勘違いさせるものでもあった。




ハラダーニュ国での異変はもうだいぶ前から起きていた。

最初に感じた異変は 作物の不作だ。

実は建国以来 作物が不作になった事がない。豊かな大地は常にたわわな実をつけ国民と周辺諸国の腹を満たしてきた。この国が裕福なのもこの豊富に実る食糧によるものが大きい。建国当時は特に戦争や小競り合いも多かった。物資の供給にも大いに役立ちこの国を助けてきた。文献によると 『ルドゥドワ女神』の加護のお陰と記されており この国の民は文字を覚える際にも『ルドゥドワ女神』がいかに国民を慈しみ慈愛を持って恵みを与えたかが描かれた絵本で覚えるのだ。

だからハラダーニュ国の民は皆 ルドゥドワ女神が大好きだった。


この1000年以上も続く女神の加護が消える日が来るなど思いもしなかった。

最初は少し寒かったのかも、少し暑かったのかも、虫の仕業かもと 理由を探り様々な手段を考え多種多様な対策を試しもした。だがこれと言った原因を見つける事は出来なかった。

こんな事態 建国以来初めての事で国内最高の頭脳集団を持ってしても誰も対処できないでいた。


暫くすると 難攻不落の国境を破られた…未だかつて侵入された事はなかった。

難攻不落との呼び声にあぐらをかき慢心していると言われればそうかもしれない、だが1000年の時は伊達ではない、何度考えても何故侵入できたのかが分からない……。

その後 国境兵で撃退し何とか事なきを得たが これには王宮にもすぐ様連絡が入り激震が走った。防衛面で絶対の自信が崩れた瞬間だった。


他にも崖崩れや地盤から急に水が噴き出したり…ある貴族が下級貴族を騙し財産を騙し取りその上 その下級貴族の娘を愛人として囲った。

こんな事他の国では正直良くある話しだ、だけどこのハラダーニュ国では未だかつてなかったのだ!! 倫理的価値観を構築して来たこの国のモラルが崩れたのだ。


ハラダーニュ国は代々の王族は仲が良く常に兄弟でも親族でも協力して国を盛り立ててきた。勿論クーデターなどはない…。しかし問題が起きた。収穫量が減った事で別の土地を自分に寄越せと言う王族が出てきたのだ。

他にも国の方針をめぐって度々衝突するようにもなった。


何もかもが少しずつズレていく感じ…歯車が噛み合わなくなってきた……。

少しずつ不協和音が広がり 正に神にも縋りたい そんな気持ちで神殿の奥深くに鎮座する『ルドゥドワ女神』に祈りを捧げていた。


異変が起こり始めて10数年経った時に神事で普段は神殿の奥深くで鎮座している『ルドゥドワ女神』の宝玉を箱から取り出した時に 変異に気がついた。


大神官は前回見た時の記憶も文献に記載されている文言も覚えている。

『ルドゥドワ女神』の宝玉は 虹色に輝いた大きな山と小さな山の20cmの幅の高さ15cmの美しい石の様なものだった。それが今は黒とも紫とも言えない水に墨が走ったようなモノが内部に走り そう侵蝕された…本質の変色 そんな感じがした。


今までここにあった物は 温かく見守る存在であったが、今 そこにある物は 得体の知れない不気味な 何かが食い破って出てくるそんな気味の悪さを感じるモノに変わっていた。


そこから王家と神官総力を上げて文献を探すのに何年もかかった。

ハラダーニュ国の秘匿中の秘匿の古文書……1000年秘匿された文献を見つけた時は その内容の残忍さに呼吸をするのを忘れた。

無理やり騙して殺して心臓を抉り出して、それを国の宝として崇め奉り 国民にモラルを説いていたのだ! 

何故 生きている神から しかもその子供まで抉り出した心臓が自分達を守ってくれると信じていられたのか! 

心臓の変質は怒りなのか…寿命なのか…恐ろしくて確かめられない。

若い者たちは あまりの恐ろしさに吐く者もいた。


その場にいた者たちは言葉を発する事が出来なかった。

ハラダーニュ国は近隣諸国に名を轟かせる模範的な国家……国民性も、防衛力も、生産力も全てが国民のプライドとなっていた。その根底が神殺しの大罪を犯していた先祖など!? 認められなかった。


だが事態は刻一刻と傍観出来なくなっていった。

この国 皆が作り上げた愛すべき最高の国家だと思っていたが、神の加護が消えると結局は何も自分たちでは成し遂げていないのかも知れないと思わせた。

1000年の時をモラルを持って成し遂げてきたはずが、人々は余裕がなくなるとその本質を見せ始めた。


王家の直系に子供ができなかったのも 神の怒りでは? そう広がった憂慮はじわじわと人々の心を侵蝕していった。恐ろしくてあんなにも毎日誰かしらが祈りを捧げていた場所に誰も近づかなくなった。


ある日恐る恐る若い神官が見に行くと更に滲みは広がっていた。

それと同時に各地から上がる被害の報告書も日々分厚くなる。

ハラダーニュ国の王家と神官たちは選択を迫られていた。潤沢の資金もこう何もかもが一気に壊れていくと今は対応出来ていたが、この状況がいつまで続くと考えると 楽観視は決して出来ない状態だった。もしかするともっとひどくなる可能性もあった。



「ヴァルモア国には直系王家に嫁ぐ者を『竜妃』と定め竜神より加護を頂くそうです。」

「それがどうした?」

「お前は何を言っている!?」

「だから……その『竜妃』がいたら変質してしまった我が国の宝玉も輝きを取り戻すかも知れないではないですか! 良いのですか! このままではこの国は滅びるかも知れませんよ!? 最悪 その『竜妃』が宝玉の代わりになってくれればもしかしたらまた1000年この国は続くかも知れないではないですか!」

「お前は まさかまた神殺しの罪を犯せと言っているのか!?」

「ではこの国を捨てられますか!? この数年いや数十年異変が起き始めてから出来る対策は全て取ってきた…だけど結果は何の意味もなかった。つまりは天候でも何でもない、神の意思だ! 何をしても無駄だという事です! モラルに縛られていて国民が死んでいくのを黙って見ているつもりですか? この数十年あの滲みだけでここまでの被害だ、あと何年もつなんて何の保証もないのですよ? ここで決断出来なければこの国に未来はないのです!!」


そう、ガルバラン・ザックが言っている事は正しいと分かっている。だが納得できない事もある。

「神の怒りだとして 神殺しを重ねて更なる災いが降り掛からないとも言えない、それをどうするのだ!」

「確かに何の保証もありません。どの道我々には退路は無いということだけは確かなのです。」

シーーーーーーーーーーン


この議論だけでも何日も何日も続いた。そしてやっと出た結論は…竜妃の誘拐計画だった。


方法も確証も何もない、でも試すしか もう手段ががなかった。

そして何ヶ月も何年も潜伏しながら様子を伺っていた。

『竜妃』レティシアは厳重な警護がつき1人にならない 近づける機会がなかった。

完璧令嬢は侍女と街へ買い物すらしなかった。だから誘拐する為にヴァルモア国へ入国し馬車を作ったり 密偵で見張って行動パターンを調べたり地道な活動の末に無事 ハラダーニュ国まで連れてくる事が出来たのだ。



実物のレティシア・マルセーヌは馬車から降ろされると 我らの顔を見回した。

肝が据わっている……泣き叫びもせず身なりを直し正面を見据えた。

「ここはどこですか?」

「突然この様な不躾… 不敬を働き申し訳ございません。

『竜妃』レティシア様にお願いがございまして この地までお運び致しました。

宜しければ私どもと共に向かって頂きたく存じます。」


「嫌よ、私はここはどこかと聞いています、まずは質問に答えなさい。 貴方は誰? 何も答えないのであれば動きません。一緒に連れて行きたいのであれば礼儀を尽くしなさい。」


顔を見合わせると先程とは別の男が前に出てきた。

「失礼致しました。 ここはハラダーニュ国でございます。

私はこの国の王太子 シャンダールでございます。『竜妃』レティシア様 我が国の神殿で祀られる『ルドゥドワ女神』の気配を『竜妃』レティシア様であれば感じる事ができるのではと 藁にもすがる思いでお連れした次第です。」

「ハラダーニュ国……、 王太子殿下 何故このような誘拐を…私は何故ここにいるのでしょうか? このような無理やり連れてくるなど国家間に歪みを生みました、誘拐だなんて信頼される模範国家 ハラダーニュ国 あるまじき許し難い行為だと思いますが?」


「ごもっともです、何度か来訪 訪問の打診はさせて頂いたのですが 全て却下されてしまい…もう手立てが無かったのです、申し訳ございません。」

「私はただの娘です『竜妃』とされていますが、残念ですが特別な力はございません、無駄足でございます。」

「ですが!『竜妃』は儀式で竜神様の加護をいただいていると!!」

「王太子殿下……儀式は行っておりますが 先程も申し上げましたが私自身に特別な力はないのです。 儀式上のことでございます。」

「そんな……。…くっ! ですが、取り敢えず見て頂きたいものがあるのです。」


「………そうですね、もうここまで来てしまいましたし 実際に何の力も無いと知っていただくしかないかも知れませんね。」

「あ、有難うございます! 有難うございます!!」



神殿の奥深くに限られた者だけで入っていく。

「質問ですが、『ルドゥドワ女神』の気配を感じるとはどういう事ですか?」

「ええ? ええ、温かい気配を感じたりしませんでしょうか?」


周りを見回し目を閉じたり歩き回ってみたり一応はしてみるが やはり何も感じない。

首を横に振ると落胆の色が広がった。


そんなガッカリされても……そもそも私レティシアじゃないし……、私はレティシアじゃ無いって言えないからレティシアで押し通すしか無いんだけど、ハラダーニュ国は倫理的 道徳的模範国家だから…偽物は殺されるなんて事ないわよね? わざわざ王太子殿下が応対してくれているわけだし……。まあ 間違えたのはそっちだし……。


「『竜妃』レティシア様 ご相談ですが、暫くこちらにご滞在して頂いても宜しいでしょうか? 出来ましたらこのまま様子を見て変化がない様でしたら ……丁重にお送り致します。勿論、国賓としてお迎え致します。」

「どの道 私に拒否権はないのでしょう? 殿下にお手紙を送りたいのですが。」

「ええ、勿論 こちらからもご連絡致します。ご理解頂き感謝申し上げます。」


スタンビーノ王子殿下に手紙を書いたとして私が探される事はないのだろう。

こう言った事も想定して身代わりをさせていたのだろう。

バレなければ世界一裕福な国でレティシアとして生きていけるかも知れない。

どの道リアーナには選択できる立場ではなかった……ヴァルモア国には路頭に迷う家族がいるだけ……重罪人でいつか処罰されるなら いっそここで生きていく事も悪くない気がしていた。



リアーナは国賓として丁重にハラダーニュ国へ迎え入れられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ