27、体調不良
カリーナ伯爵夫人は冷静になると夫であるドリトル伯爵をせっつき王子殿下の申し出を受けようと何度も何度も説得したが、ドリトル伯爵はリアーナが男たちに心臓を抉られる妄想を頭の中に展開させてしまうと どうしても可哀想で死ぬならいっそ一思いに…それしか考えられなかった。
そしてとうとう処刑執行の期日になり、ドリトル伯爵夫妻が見守る中 首を落とされ刑は執行された。
ドリトル伯爵夫妻は娘の亡骸を前に涙を流し続けた。声が枯れるまで泣き続けた。
レティシアにその事を伝えると気もそぞろで、
「お手数をお掛けし申し訳ありませんでした。」
ただそれだけだった。
あれ? 思ったより気にしていない感じ?
ふとレティシアの先程まで手にしていた書類に目をやれば、何かの報告書みたいだった。
それに気づくと手早く片してしまった……少し寂しい ねえまだ私には話してくれないの?
ある日 レティシアが部屋に戻っていなかった。
「レティシアはどこだ?」
まさか私を置いてどこかに行ってしまったのか!? 胸騒ぎがして気がせく。
「殿下! 神殿に行ってからまだ戻っておりません。」
「神殿!? まだ戻っていないと言うのか?」
スタンビーノは慌てて神殿に向かった…神殿からどこかにシエル殿と行って戻っていないとしたら私にはどうしようもない! ああ、レティシアどうか どうか2度と消えたりしないでくれ!!
神殿の前まで着るとレティシアの護衛たちが待機していた。
「レティシアはまだ出てこないのか?」
「はい、我々は中に踏み入る事を許されていないので…、声はかけてみたのですが 反応はありません。」
それを聞いてスタンビーノは走り出した。
ここにいる ここにいる レティシアはここにいる!
見えてきたのは竜神様の姿だった。
レティシアは竜神様の前足のところで眠っていた。
「突然すみません、レティシアが戻らなかったもので……はー、はー、はー。」
「ああ、構わない。レティシアは……寝てしまったようだ。 レティシア、レティシア起きなさい スタンビーノが迎えにきたよ。」
「う、ううぅん あれ? 眠っちゃってた。竜神様ごめんなさい 動けずに疲れちゃいました? 竜神様の近くは安心してよく眠れるのです。ふあぁぁぁ。」
「これ、令嬢たる者がはしたない。」
「うふふ すみません。んー、よく寝たぁー。」
「それよりお前の夫が迎えにきておるぞ。」
「えっ!? あっ! スタン! どうしてここに?」
「ああ、まだ戻っていないと言うから見に来たんだ。ここには王族しか入れないからね。」
「もしかして凄く時間経ってた!? どうしましょう! 竜神様 また来ますね!」
そう言うと急いでスタンビーノの横に戻っていった。
「竜神様 お騒がせしてすみませんでした。」
「ふふ 構わんよ。」
「心配させちゃったのかな? ごめんね。」
「うん 心配はしたかな、だけどここにいてくれて良かった。どこかへ行ってしまったらって気がきじゃなかった…情けないけど。」
「情けなくなんかないよ! 嬉しい…ほら体内で芽吹いているせいか竜神様の竜気は心地いいの。考え事していたらそのまま寝ちゃったみたい。これからは気をつけるわ。」
「うん、あれ? 袖に血がついてるよ?」
「あら…鱗で傷ついたのかしら? あっ、でも傷はないわ。大した事ないのか、竜神様が治してくださったのか よく分からないけど。
あー! エヴァン隊長たちずっと待たせちゃってごめんなさい!! うっかり中で寝ちゃってて、ごめんなさい。」
「ご無事であれば問題ありません、我々は仕事ですので お気に留める必要はございません。これからも存分に思う通りなさってください。」
「ふふ 私を甘やかしすぎよ。神殿は静かで心地がいいから考え事するのに丁度いいのだけれど、そのままうとうとしちゃって 次回からは気をつけるわ。」
「さて、家に帰ろうか。」
「ふふ 家の敷地内で家に帰ろうって不思議な表現ね。」
「でも、私たちの家だ。不思議じゃない。くすっ。」
「クスっ、本当ね。 ねえ手を繋いで歩いてもいい?」
驚いて目を丸くしたが、少し照れて 薄ら頬を染めて頷いて手を取ってくれた。
それから暫くして国王陛下の体調不良が伝えられた。
この国の王 ハバーランクは既に72歳とかなりの高齢だ。歴代でも5本の指に入るほどの高齢での国王、スタンビーノ王子が結婚したこともあり 譲位する方向で進められることになった。
それに伴いスタンビーノ王子殿下が皇太子となりレティシアは皇太子妃となる。
また儀式、儀式、儀式が目白押しとなる。王宮内は慌ただしく日中レティシアがスタンビーノ王子のところに行く時間が取れなかった。寝るのも互いの寝顔を見るだけなんて事もままあった。
人の出入りが多い中 またもレティシアの宮殿に侵入者があった。
しかもここのところ頻繁である。
「レティシアには伏せておく様に…。」
「何故私には内緒なのですか?」
「レティ! どうしたの!? この時間はマードック商会を呼んでいたのではない?」
側近もいる中 レティシアは小走りで駆け寄りスタンビーノ王子に抱きついた。
淑女の鑑 レティシアにあるまじき行いに皆ギョッとして慌てて後ろを向いた。
「ふぁぁぁ〜、疲れた! もう限界なの…スタン少し充電させてぇぇぇ。」
スタンビーノの胸にぐりぐり顔を擦り付ける。しかも抱きついたまま動かない。
周りの者はどうしていいか…、チラチラとスタンビーノ王子に目をやれば王子は蕩ける視線でレティシアを腕に抱き甘やかす。そのままソファーに連れていき腕の中のレティシアを優しく撫でる。
「大丈夫? 少し休む? 調整しようか?」
「ううん、そうじゃないの…神殿にも行けないし 本当にスタンから充電しているの!」
「ぷっ! 私で充電できるなら良かった。」
胸に抱きつくレティシアの髪を優しく撫でる。
「だってスタンたら最近忙しいんだもの。 そ・れ・で! 何故 私に秘密なの?」
頬を膨らませてスタンビーノを睨みつける、でもその腕は強く抱きついたまま緩められない。そんなレティシアが愛しくてならない。
「ああ、忘れなかった? ふふ、あまり怖がらせてもと思っただけだよ。
最近 レティシアの宮殿に侵入者が多いって話だよ。 気持ち悪いし怖いでしょ?」
だがレティシアはその話を聞くと不敵に笑っていた。それが少し不安になった。
「何故 笑っているの?」
「いえ、仮説が証明出来た気がしただけ。」
「仮説?」
「レティシア様 そろそろ次のお時間が…。」
「そうね、うーーーん スタンに会って気分が復活したわ。さて、また猫かぶらなくちゃ!」
「くすっ、ここの人間のことはいいの? その猫被れていないけど?」
「あらやだ。うっかり…だって限界だったのですもの あとはお願いしますね ちゅう。」
皆 顔を赤くして目を見開いている。
レティシアが出て行くと皆首が折れるほどギュインって振り向いてスタンビーノ王子殿下を見た。
「聞いてもいいのですよね?」
「いや、聞かずに放って 通常通りの仕事など出来ないだろう!」
うんうんと頷く。
「ゴホン 殿下! レティシア妃殿下は人形の様な感情がない完璧令嬢だったのではないのですか!?」
「何気に失礼なやつだな。」
「だってここで仕事している時も 淡々と仕事をこなして無駄も遊びもないじゃないですか! 何ですか あのデレ!? 甘えモードは!?」
「私は何度か見たことあるぞ? だけど今日は色気ムンムンでしたね。」
「前からいる者には言ってあるが、レティシアは小さい時から隔離されて大人の中で育ってきたから、人との距離感とか 付き合い方とか友人とはどう言うものかとかあまり分かっていないのだ。感情も表に出しては行けないって言われてきたから基本的には人形みたいになってしまう。
最近 私には感情を素直に出していいと教えているのだ…が…レティシアが私に心を開いてくれればくれるほど…ねぇ? まあ一応この部屋と私と彼女の宮殿では素直になっていい、と限定しているのだが、君たち当然レティシアに関することは秘匿するように。」
「「「「「はい。」」」」」
「でも……レティシア妃殿下は…綺麗なだけじゃなくて可愛い人だったのですね。」
「うん 可愛かった…、殿下! 凄く 凄く素敵…可愛かったです!」
「ええ、誰に対しても氷姫みたいな あっすみません、完璧令嬢が自分だけに別の表情…熱を帯びた瞳で甘えるって 男としたら最高ですよね!」
「盛り上がっているところすまないが 私の妃について妄想を膨らませるのはやめてくれたまえ。あれは私のモノ 私だけのモノだ。」
しまった、と言う顔をしながら がっくりもしている。
「ですが殿下… 何故 微笑まれたのでしょうか?」
「ああ…、きっとレティシアのアンテナに引っかかったのだろう。」
そう、レティシアはあの時 宮殿に侵入した事ではなく 頻繁に侵入していると聞いて微笑んだ。何か罠でも仕掛けてあるのか? それとも何か想定通りの事態だったと言うことか?
あの事には気づいて…気づいているだろうが、その事とは関係ない気がするな。
普通に考えるならば…現在レティシアが興味を示すのはハラダーニュ国の事、あの国に関係があるのだろうか?あの国の何に興味を惹かれているのか?
ふー、まだ話してくれないの? レティ………。
「アンテナですか?」
「ああ、今は とある国にご執心なのだ。もしかすると…それと関係あるかもしれない。
だが別の興味… 閃きがあったのかもしれない…まあ 後で聞いてみるよ。」
そう濁しておいた。
出来ればレティシアの意思で話をして欲しい。
テレーズは悪の手先となって金を巻き上げる一味のサクラだ。
でもずっとこんな事しているつもりはない。出来れば金持ちの後妻に入りたい。だから物色に余念がない。
もう貴族として生きていきたいとは思っていないけど、まともな生活をしたい!貴族じゃなくても大きな店とかに入ってお金に不自由しない生活がしたい!!
仕事柄 羽振りのいい店などを見つけては詳細を調べる。
本当は金持ちの後妻を狙っていたけど…息子がいた!!
パパのお金をふんだんに使って見目の良い男 キターーーーーーーーーーー!!
アスカ商会のジョアン うふふ パパのホリイク・タキトーもナイスミドルで優しそうで親子関係も良好そうで良い感じなのよねー。ジョアンの本命になれるならジョアンで良いんだけど、本命になれないならどっちでも良いわ。タキトーパパの奥さんが怖い人じゃないなら、お金を生み出すタキトーパパでもマジで良いんだよなぁ〜。
もう少し周りを探って女関係が派手とか釣った魚には餌をやらないとか、後から後悔したくないからしっかりチェックしなくちゃ!
小さい女の子が歩いていた。
綺麗な服を着ているし…良いとこの子供だと思うんだけど 迷子かな?
声を掛けようとすると 執事風の男が女の子を見つけて抱き上げて連れて行った。
ああ、良かったぁ〜、ちょっと迷子になっちゃったのかな?
母さん どこに行ったの? 生きているよね? また出会えたら…2人で昔みたいに暮らそうね!! 私 諦めないからね!!
レティシア・マルセーヌ …… 悪役令嬢のくせにちゃっかり皇太子妃になって悠々自適ってどう言うことよ! 普通は金持ちの悪役令嬢が転落して 元平民男爵令嬢の一発逆転人生 これが ハッピーエンドでしょう! 乙女ゲームなのにぃー! ゲームのその後の人生なんて知らないわよ!! レティシアとどうにか入れ替われないかしら? それが正規のルートってものでしょう? 私のチートは愛されキャラ 今こそ発揮するわ!!




