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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
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2、攻略者たち

最近学園でレティシアに会う時スタンビーノは誰もいない部屋に2人きりになるとレティシアと話をするのではなく眠らせた。レティシアは心身ともに疲弊していた、だから少しでも2人の時間を作ると腕の中で眠らせた。そして疲労回復効果のあるモノを小さくして持ち歩き食べさせた。


私たち2人は他の誰にも分からない部分での一番の理解者だった。

言葉がなくても寄り添えていた。

学園に入るまでの10年間の絆もあった。

燃えるような恋ではないが 今は信頼関係で結ばれていると思う。



学園では私の友人とテレーズが一緒にいることが当たり前のようになっていたが、冷静さを取り戻してからは一線を引くようにした。仮にも婚約者がいる立場で他の女性と親しくするなど誉められた行為ではないから。


すると思わぬ方向へ事態が進んでいった。

私の友人たちがレティシアに対する敵意が度を越すようになったのだ。


以前 テレーズがレティシアに嫌がらせをされていると言った時、本人がいないのに嫌がらせのしようもないと自作自演を見て見ぬふりをしていた訳だが、私がテレーズと距離を置くようになると 私の友人たちはレティシアに酷い態度をとるようになった。



学園ではレティシアは聖女のように優しいテレーズに嫌がらせをする悪女になっていた。

ノーマン・スタリオン (次期宰相候補にも名前が上がっている秀才)

グレッグ・ハーマン  (優秀な騎士候補)

アシュトン・カーライル(5大公爵家の1つ)


私の友人たちが彼らの愛するテレーズの為に積極的に動き 架空の悪女レティシアを作り上げていったようだ。



レティシアが王宮に行っている間、影武者が学園に来ている。

その影武者のコードネームはサリー。

サリーが令嬢に囲まれた、何も話さずにいるとそこへ泣きながらテレーズが登場した。

不思議に思っていると、テレーズが叫ぶのだ。

「止めてください レティシア様! なんでも言う通りにしますからこれ以上はもうやめてください。」

そう言って気を失った。一番面食らっているのはサリーだろうが、それを見た者たちはレティシアが取り巻きを使ってテレーズに暴力を振るっているように見えた。

勿論 取り囲んでいた令嬢たちもグルだ。

この令嬢たちはアシュトンに気がある者達だ。


教科書を破る、ドレスを汚す イジメのテンプレか?と思うネタを次々引き起こす。

自作自演を恥ずかしげもなく友人たちは私に進言する。


「スタンビーノ王子殿下、レティシア嬢は王妃の資質どころか貴族の令嬢としてあるまじき行為をする者です。婚約を破棄するべきです。」

「そうです、可哀想にテレーズが泣いています。 殿下には心優しいテレーズみたいな女性がお似合いです。」

「殿下はテレーズが可哀想にお思いにならないのですか?」

「テレーズは優しく可愛い女です。冷酷で恐ろしいレティシアよりテレーズの方が王妃に相応しい。」

バン!

机を叩いた。

「何故 私の婚約者を呼び捨てにした? 弁えろ!

お前たちに一つ言っておく、私は私の妃にレティシアこそが相応しいと思っている。 そんなにテレーズが不憫に思うならお前たちが幸せにすればいい。

くだらない事で時間を取らせるな。私の婚約者は私の意思で決定されるものではない。

二度とくだらないことを言うな、またこんなくだらない事を言えば私の側から外す。

レティシアの代わりはいないが、お前たちの代わりはいるのだ。心に刻め。」


「「「くっ! 承知致しました。」」」



後で考えればこの時の対応がまずかった。

ただ私は私の友人たちの方が異常に感じた。自分たちで無実のレティシアを貶めながらその口で正義や真実の愛とやらを説く彼らは洗脳されているかのようで気味の悪さを感じた。




この世界は乙女ゲーム『恋愛バトル ライラック姫の初恋』

ヒロインは私 テレーズ・ダンビル  お約束の男爵の落胤だ。

平民でお母さんと一緒に雑貨屋さんとやってた。3年前に知らないおじさんが店に来て

『貴女のお父様がお会いになりたいと仰っています。私と一緒に屋敷へ来て下さい。』


うちのお母さんはダンビル男爵家の使用人だった。うちのお母さんは私みたいな天使を産むくらいだからかなりの美女、ダンビル男爵に手を出されて妊娠して奥様にバレて追い出された。


小さい頃はかなり貧乏だった。ダンビル男爵はクソヤローで妊娠したお母さんを追い出して金も渡さなかった、妊娠したまま働くのも生まれたばかりの私を育てながら働くのも大変だった、と思う。でもまあ あの美貌だから色々差し入れしてくれる男たちは多かった。

お母さんの口癖は、

『テレーズ 男がどんなに優しく魅力的なことを言っても 女が自分のものと思ったら男は優しくなくなる、釣った魚に餌はやらないの。だから 気があるそぶりをしても体はそう簡単に許してはダメよ! それから簡単に1人の男に絞ってもダメ! 母さんを見なさい 男爵に見染められても結婚している男なんて結局 自分の子を宿した女も捨てる、金持ちに見染められたからってゴールな訳じゃない。結婚したからゴールって訳でもない、つまり生涯信用できるのは自分とお金だけってこと。

なるべくいい男を侍らせ貢がせ女王に君臨し密かに財産集めて、1人になっても生きていける道を作っておくのよ!! 所詮私たちは平民なのだから!』


これを1歳の何も分からないうちから、お祈りのように毎日聞かされた。

お陰で人間を見たら金持ちかクズか 利用できるか否か品定めしては付き合うか否かを決めていた。 上辺で天使の微笑みを作り 腹の中では常に値踏みをしていた。



5歳の時に転機が来た。

流行り病が街に蔓延した時 高熱で私も死にかけた。

私たち平民は医者になんてかかれないし、金がなければ薬だって買えないから自力で治すしかない。そう気合いと根性しかない、金がかからないように生きるためには自分でなんとかするしかない。

その時に転生ラノベあるあるで思い出した前世とこの乙女ゲーム。


そして自分がヒロインだと気付いた!

実は王女でした!とかじゃないけど 13歳の時に実の父から迎えが来るのだ。

ダンビル男爵家跡取りの息子が流行り病で死ぬ。私が流行り病に罹った時に向こうも罹って医者にみせて手厚い看病するも虚しく死んでしまう。それから私を迎えに来るまでの8年間ずっと奥様と跡取りを作ろうと頑張った。


だけど男爵 こっそり娼館に行って若くて綺麗な女を抱いていたんだけど変な病気感染されて 全身に赤い発疹ができて1週間くらい高熱で死ぬ思いをした。なんとか生還出来たけど なんとそれが原因で種無しになっちゃうんだよね。

奥さんには熱のせいだって言ったみたいだけど、実際は性病が原因。マジウケるんですけど。

お母さん捨てて金を払わなかった私の呪いだって言ってやりたい。


まあ、そんなんで種無しじゃいくら頑張っても跡継ぎは出来ないから 奥さん泣く泣く私を引き取る。


16歳で学園に入学するまで男爵家で勉強して、学園に入ってから攻略者を次々落として王子と婚約者を破局させ断罪して婚約破棄―! ハイキター!! 私は王子と結婚してハッピーエンド。まあ他の攻略者とでもいいけど やっぱり目指すは王子ルートでしょ! 王子は確か婚約者が優秀で捻くれるんだよね。王子のくせに攻略難易度低めでウケる… 好感度上げてから街でデートする際にイベントが起こって失敗しなければ大抵後は好感度が上がるだけのゆるゲー。ルートが分かっていればまじイージーモード。


それからは自分を卑下しないし、嘆かなかった。

だって幸せへのカウントダウンは始ってる、これはただのプロセスなんだから。


まあ前世を思い出したこともあって、雑貨屋で前世で流行っていたモノばんばん売って 結構―繁盛してゲームほど貧乏じゃなかったけどね。



はぁーえもなんでだろ、途中までは王子といい感じだったのに急に態度がよそよそしくて2人っきりになってくれなくなった。だからノーマンたちに囁いた。

「私…何かしちゃったのかな……スタンビーノ王子に避けられているみたいなの。

きっとレティシア様が私と一緒にいてはいけないって注意なさった…のかな? スタンビーノ王子はお優しいからレティシア様を悲しませたくなかったのね。ぐずぐず。」


「ああ、なんて可哀想なテレーズ。私から殿下に申し上げよう、待っていて。」

「またあの女が邪魔をしたのか!」

「何とかしなければな、王子殿下が目を覚ましてくれればいいのだが……。」


うふふふ 私の騎士様たち 宜しく頼むわー。


自作自演もノーマンたちは何でも丸っと信じてくれるし、本当にゲーム通り気味悪いくらい。ああ、これ! このシチュエーションあっちから撮ったスチルあったな。

なんて考えてどこか他人事みたいに俯瞰してゲームのコマを動かす感じでテレーズは楽しんだ。



スタンビーノ王子との街でのイベントが起きなかった…手繋ぎデートで街が見渡せる丘で将来について誓うイベントもなし(結局手も繋げなかった) あれ、実は1個もイベントが成立していない!?

あれあれ!? もしかしてスタンビーノ ルート入ってない!?

もし入っていなかったら誰ルートよ!?

今更 誰とイベントするのよ!

これって逆ハールートじゃないの?


次期宰相候補のノーマンだって分かるのはテスト勉強の時 図書室で書棚の高いところの本を取ろうとしてノーマンが取ってくれた…その時に私の髪がノーマンの釦に絡まって、あまりに取れないから 『ごめんなさい髪を切ります』って言うと 『こんなに綺麗な髪を切る必要はない』って釦を引きちぎってくれて、その時に鉄仮面みたいなノーマンの耳が赤く染まっていて意識し始める、私はお礼とお詫びにノーマンが誇りとするフクロウのブローチを贈る。それからは頻繁に勉強を見てもらいながら親交を深め 卒業パーティの時 跪いて将来を誓い合う。


本命はスタンビーノ王子だけどちゃんと図書館で釦引っ掛けたわ! 思ったより絡んでくれないからチューチュート◯インみたいにぐるぐる頭動かして頑張ったんだから!



グレッグは騎士候補! 脳筋だから街でチンピラに襲わせて助けてもらって『有難うございます 騎士様』って言ったらもう 妄想広げてすぐ懐いてくれた。

『流石、騎士様』 『カッコいいです 騎士様』 『騎士様のお陰です』と持ち上げていれば良いだけだから楽勝! 

街に出掛けた時 小さい男の子がチンピラに絡まれているところに私がその男の子を庇い、殴りつけられるところをグレッグが庇い怪我をする。涙を流しグレッグの怪我を悲しむ その姿に完落ち。


でもあの時グレッグったら怪我しないから大袈裟に褒め称えて別の意味で汗かいた。



アシュトンは5大公爵家の令息。

何もかもを持っている、容姿、家柄、頭脳、人脈………5大公爵家の令息だから権力に擦り寄る者も多い、アシュトンは小さい頃から特別視されて生きてきた。

出来ないことも、人生で苦難にぶつかったこともない……順風満帆な人生。

人に評価されない事もない。常に優秀と持て囃され人々に羨望される存在。


アシュトンは人に褒められることに慣れているので、ちょっと褒めても彼には響かない。

だから褒めるなら人が褒めないところにしなくちゃね!


だからテレーズはこう言った。

「凄いですね、皆 アシュトン様の人柄に惹かれているのですね。」


は? そんな事あるわけがない。

アシュトンには広い人脈は公爵家の威光にあやかろうと近づいてきているに決まっている。それを天真爛漫に私の人柄に惹かれているなんて言う、物を知らない馬鹿か天使か? ふっ。何を言っているんだ、そんな印象だった。


「だってね権力に群がる人たちは沢山いるわ、でも同じ5大公爵家のレティシア様には誰も近づかないでしょ? レティシア様は5大公爵家って言うだけではなく後の王妃様になる方よ? もっと人がすり寄っても良いと思うのでもそうしない。彼らは自分たちの意思でレティシア様ではなくアシュトン様を選んでいるのよ! それはきっと後ろ盾の公爵家ではなくアシュトン様自身を見極めているからでしょう? だからやっぱりアシュトン様は凄いわ!!」


その言葉は凍りついた心を解かしていった。

馬鹿ではなく天使の方だったか……。私を褒める者は沢山いるが自慢じゃないが性格を褒められたことなんて未だかつてない、自分の性格は自分でも分かっている。だけど彼女の前では本当に善人でありたいと思ってしまう不思議な力があった。



アシュトンは今までは常にトップだった、ところが学園に入りトップに立つのはスタンビーノ王子殿下とレティシア・マルセーヌ公爵令嬢!!


自分が仕えるべき主人のスタンビーノ王子殿下と秀才と名高いノーマンなら負けたとしてもここまで心は乱れないだろう、同じ5大公爵家のレティシアは女であるにもかかわらず入学してから一度も勝てたことがない。常に満点で付け入る隙もない。

今まで負けたことのないアシュトンのプライドはズタズタだった。

それが テレーズの言葉を聞いて不思議と素直な気持ちになれた。


公爵家のアシュトンは潤沢な資金でテレーズを喜ばせるようになっていった。

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