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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
16/61

16、5大公爵家の役割り

アシュトンが裏門で倒れているのを屋敷の者が発見した。

報告を受けたカーライル公爵はそのまま放っておく様に指示した。

勿論 アシュトンが憎くてそんな指示をしたわけではない。だが、これが神の意思。簡単に命を奪えるが死よりも辛い苦しみを与えるための措置と分かっている、だからその御心に従い手助けを出来ずにいる。

息子も家も大事だが、この国・領民の命に替えられるモノではなかった。

まさに苦渋の決断だ、18歳の年まで優秀な後継者に恵まれたと神に感謝すらしていた。それがまさかこの国の根幹を害そうとするだなんて。私はどう謝罪すればいいのか……。


アシュトンは何故 表門から入ろうとしなかったか、使用人に声をかけなかったか…反省しても取り返しがつかないことがこの世にはあるのだ。よりによって竜妃を殺すなど!!


暫くすると裏門からアシュトンの姿は消えていた。

無事だとは思えない、食べる物もない中、温室育ちのあの子が何も持たずに生きていくなど…無理な話しだ。最期を看取ることも出来ない、弔ってやる事も出来ない。

ただアシュトンを思って静かに公爵は涙を流していた。



だが1ヶ月ほどすると領地から異変の知らせが続々届いた。


多くの水を讃えている『アキュロスの棲家』と呼ばれる 山の中腹にある湖から流れ落ちる雄大な滝 その湖の水が枯渇し始めていると言うのだ。

その他にも池の水が全部枯れたや、鉱山で崩落があって被害が大きいなど、カーライル公爵家の収入源が悉く駄目になっていく……何もかもが突然異変をきたす…考えられる事は1つしかない。


アシュトンを手助けして保護しているのだ。

1ヶ月前 裏門で倒れていたアシュトンは忽然と消え、暫くすると妻 キャロンは『領地に帰って暫く休みたい』と言った。その際に医者も連れて帰っている。

社交界の華であった自分がアシュトンのせいでその地位を奪われ意気消沈して、社交界に顔が出しづらいから領地に帰ると思っていたが、きっとそうではなかったのだ。

密かに保護したアシュトンを領地に連れ帰り匿っているのだろう……馬鹿なやつだ。

バレないとでも思ったのだろう…こうして大変な事態を招くと言ったのに……。



カーライル公爵はすぐにキャロンの実家であるパメロン侯爵家に赴いた。

「パメロン侯爵、私はキャロンと離婚する。悪いがキャロンを引き取って頂きたい。」


まさに青天の霹靂だった。

「ま、待ってください、いきなりどういう事なのですか!? 離婚とは…どういう!?」


「1ヶ月ほど前アシュトンが学友と共謀し竜妃を誘拐の上、殺害した事はお聞き及びですね?」

将来有望な者たちが平民に落とされるほどの事件だ、流石に竜神様の真実については知らなくともこの国に住む貴族として『竜妃』は儀式上の竜神様への生贄として知られている。

まあ生贄と言っても祭壇のある部屋に籠り祈りを半年の間捧げる、と言うもの程度だが、その代々の王の妃になる存在は竜妃と呼ばれ、この国の守り神として竜神様に尽くす存在。

礼を尽くすべき存在を害そうとするはこの国の加護が消えることを意味すると伝えられている。そして公然の秘密として秘匿されし存在がいる事も知る者は知っている。


「ええ、残念な事です。」

「その処罰についてアシュトンたちは処刑になるところ すぐに殺すのでは罰が軽すぎるとして平民に落とされ一切の手出しをしてはならぬとの刑罰が下ったのです。

キャロンにもアシュトンは可哀想だが、この国や領民にまで害が及ぶことは避けねばならぬ為 決して手を貸してはならぬと 離婚届にもサインをさせよく言い聞かせておいたのですが…、どうやら領地で匿っている様で領地で異変が起きてしまいました。

今後 カーライル公爵家はお取り潰しになるかもしれません。一先ずキャロンと離婚しアシュトンを領地から追い出します。


キャロンが母親として倒れたアシュトンを放っておくことが出来なかったと分かっています、ですが……もうアシュトンを助けることはできないのです。キャロンは私を恨むでしょう、しかしあの地を守るには離婚致し物理的に切り離すしかないのです。どうか、…どうかよろしくお願いいたします。」


「実際に目にしなければお伽噺ではないのを理解するのは難しいのかもしれませんね。承知致しました、カーライル公爵は…その大丈夫ですか?」

「私は……私は……いえ、神官長様にキャロンとの離婚届お出してからご相談するつもりですが…どうにもならないかも知れません。やはり神はこうなることをご存じの上で…下した罰なのでしょうから。愚かな罪に手を染めた者とその家族に罰を下したのです。」

「苦しいお立場ですな。5大公爵家なんてなるものではない。」

「ふっ。」


カーライル公爵はパメロン侯爵家を後にし、自領へ向かった。

突然のカーライル公爵の帰宅に一同慌てふためいた。何故なら私兵も連れているのだ。

「あ、あなた! 突然どうなさったの!?」

「アシュトンはどこだ?」

「えっ!! 何の事か分かりません……。」

「屋敷中を探せ!」

「「「はっ!!」」」


「何をするつもりですの? アシュトンがいたとしたらどうするつもりだと?」

「私は既に君にどうするか伝えたはずだ。」


「いました!」

連れて来られたアシュトンは綺麗な服に身を包み優雅に読書をしていた。


「あっ! 父上…すみません。」

バツが悪そうに下を向いている。

「憲兵に連絡しろ、平民が家に入り込んだと。」

「はっ!」

「止めてください! あの子はここへ来た時 酷い状態だったのですよ? またそんな目に遭わせるおつもりですか?」

「キャロン、アシュトンは最早我が家とは何の関係もない! 私はお前に言ったはずだ。アシュトンを少しでも支援したら離婚すると。」

「んまっ! では私とは離婚するおつもりですか? そんな脅し屈しません!」

「脅しではない、ここへくる前に書類は提出した。お前はもうカーライル公爵夫人ではない。

おい、パメロン侯爵家に送り届けてこい。」

「はっ!」


「ちょ、ちょっと冗談ですわよね? 離婚!? そんな一方的な! 私たちの息子を匿っただけで離婚ってどういう事よ!!」

「言ったはず…はぁー、何度も言った! アシュトンはもう我が家とは何の関係もない!

アシュトンは本来ならとっくに処刑されていたのだ! それが今こうしているのは生かされたのではない! より大きな苦痛を与えるために王宮から出されたのだ!

分かるか? 竜妃の殺害だぞ!? お前がアシュトンを匿った事でこの領地がどうなっているか知っているか? 池や湖が枯渇したり鉱山が崩落したり…神の怒りに触れたのだ!!」


「そ、そんなのただの偶然よ……。」

「いや偶然ではない。パメロン侯爵家に戻りアシュトンに少しでも関わればパメロン侯爵家もたちまち潰れるだろう。…だから言ったのだ! どんなに可哀想でもアシュトンに手を貸してはならぬ 関わってはならぬと! 馬鹿が……。」


「旦那様、憲兵が参りました。」

「そうか、その者を引き渡せ。」

「ああああ、父上! 父上! 助けてください! 父上! もう嫌だ! あんな生活したくない! 助けて! 母上! 母上―――!!」

「アシュトン! アシュトン!! 待って! アシュトン!!」


「旦那様、お支度が整いました。」

「キャロンも連れて行け。」

「あなたは人の心がないの!? 私たちの息子なのよ? どうしてこんな真似が出来るのよー!! 悪魔! 人でなし!! ああ、アシュトン!!」


キャロンは引きずられる様に連れて行かれた。

「パウロ、各地の被害はどうだ?」

「かなりの被害が出ております。こちらがその報告書です。」

「……これで何とかなればいいが。私はすぐに神官長様にお会いしてみる。なるべく民の救済をしてやってくれ。」

「承知致しました。」


出発前に執務室に一人篭ると秘密の扉を潜った。

そこに祀られている竜神様の鱗……その輝きは受け継いだ時のまま。

カーライル公爵家はお終いかも知れない……、そう思うとアシュトンの弟 ヒベリオにも妹 マーベルにも申し訳ない気持ちになった。その上、母親を何も言わずに奪ったのだから…。



アシュトンは牢屋に入れられた。

汚く狭く臭い場所、未だかつてこんな場所に足を踏み入れた事はなかった。王宮のものはもっと綺麗だった。

暗くて汚くて臭くて気持ち悪くて「おえっ!」何度か吐いた、今度はその臭いも混ざって更に強烈な臭いとなり吐き気をもよおす。同じ牢の男たちに殴られ蹴られ鼻血を出して蹲っている。


もう死にたい。泣きながらそう思っていた。

まさか父が自分を助けた事で母と離婚するとは思っていなかった。

ああ、私のせいで母上まで…どうしよう ごめんなさい ごめんなさい。



キャロンはパメロン侯爵家に着いた。

パメロン侯爵家の当主はキャロンの年の離れた兄 ネイサン。

そのネイサン・パメロンに確実に引き渡された。

キャロンを引き取ると、

「遠くまでご苦労だったね、カーライル公爵に宜しく伝えてくれ。」

「畏まりました。それでは失礼致します。」


屋敷に入ると優しい兄は

「馬鹿な事をしたものだ。お前はこの屋敷で大人しくしていなさい。大人しくしていないとアシュトンの二の舞になるよ。」

「なんて事を仰るの!? 今にも死にそうなあの子を放って置けるなんてあの人は人間ではないのよ! 親だったらあんな姿の息子を放って置けるはずがないもの!!」


「お前は間違っている。カーライル公爵はわざわざここまでお見えになりお前を頼むと頭を下げに来た。優しい方だから国も領民も放っておけなかったのだ。


お前はアシュトンを助けたつもりかも知れないが その為にカーライル公爵領は過去にない災害に見舞われかなりの被害が出ている。そしてアシュトンは家の前で静かにプライドを保ったまま死ねたはずなのに お前が余計な事をしたせいでもっと辛い目にあっているだろう。今後お前はアシュトンの見たくない部分を目にするかも知れない。お前自身の醜い部分も見る事になるだろう。

お前には何もできない…救う事もお前自身の立場も守る事も何もできないんだ。


お前は再三何もしてはならないと言い聞かせられていた、そして抑止力の為に離婚届を書き公爵はキチンと止めてくださっていた、だがアシュトンと同じように決まりを破り法をおかした、この結果は全てお前がしでかした事への報いだ。


カーライル公爵は言っていた。

こうなった今でも もしかしたらお前はアシュトンを返り咲く事を狙い、牢にいるアシュトンを連れ出し助けようとするかも知れない、そうなればこのパメロン侯爵家にまで迷惑がかかるかも知れないと…きっと杞憂ではないだろう。…私にも守るべき者たちがいる 公爵と同じように自分の民を守りたい。


それにお前がしでかした事でカーライル公爵家はお取り潰しとなるかも知れないとも仰っていた…。だから今後一切アシュトンとは縁を切るのだ、もしアシュトンとの繋がりが分かったら私はお前を殺す、これは脅しではない。

お前は誰かの庇護下から出て生きていける人間ではないと知っている、だから我が家に災いが降り掛かればその時は容赦なくこの手で殺してやる、覚えておきなさい。

何度も同じ過ちを繰り返すなよ。」


「お兄様! お兄様ったら!!どうしてよ!! アシュトンは優秀な子なのよ!? いつかきっと役に立つ子なんだから!!」

キャロンの叫びは虚しく響いた。



カーライル公爵は神官長に

「私に罰をお与えください! 領民は何の罪もないのです。どうか、どうかお助けください!!」

必死に訴えるがその願いが聞き遂げられる事はなかった。元より手立てが何もないのだった。



王宮の一画でこの事について5大公爵家で集まり話をする。

「心中お察しいたします。」

「ああ、竜神様に申し訳ない、どうかもう我ら一族を皆殺しにして欲しい。」

「この国を守るための役割がこの様な事になるとは……。」


「神官長様、これからどうしたらいいのでしょう?」

「ここだけの話しですが、どうやらレティシア様は生きてらっしゃるかも知れないのです。」

「ど、どういう事ですか!?」


「レティシア様は国外追放となり殺されかけた…崖の下で血を流しておられたことは間違いございません。ですがレティシア様は最後の力を振り絞って転移し竜神様の加護により近くの山の中で傷が癒えるのを待ち、どこかへ転移した様なのです。」


「い、生きてらっしゃるのですか!?」

「ど、どこへ行かれたのですか!!」

「恐らくですが、…レティシア様はスタンビーノ王子殿下から国外追放を申し渡され その上で殺そうとしていると そう思われている様なのです。だから戻れば殺されると、逃げ回っている様なのです。」

「な、何と!? 何故その様な事が!!」

「ノーマンが断罪の際 王子殿下の名を騙った事を レティシア様はまだご存じではないのです。その上 変な輩に目をつけられて追いかけられている様で…こちらも接触しお話しする機会を得られないでいます。」


「では何故 カーライル公爵殿の領地はあの様な目に遭うのです?」

「我々は真実を知っていますが 今回『竜妃』の意味を知らない若者がこんな大それた事をしでかした……『竜妃』を害そうとした事に間違いありません。記憶を新たにするための警告・見せしめでありましょう。」

「確かにそうかも知れないな、我々は直接お会いした事もあるが、多くの貴族や民は神話だと思っている。感謝を忘れてしまっている。」

「民の前にお出ましくださればこの様な事もなくなるだろうに。」

「多くを望んではならない、生かしていただくだけでも感謝しなければ。」

「そうであったな。」

「私は…このままあの地にいていいのでしょうか?」

「・・・・・・・。神の御心次第ですな。今は何とも言えません。きっと全てはレティシア様を取り戻さなければ 応じては下さらぬでしょう。」

重い沈黙が流れた。

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