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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
13/61

13、樹氷果

今年は特に吹雪が止まず樹氷のある場所まで行ける者がいなかった。

何の手がかりもなくいきなり裏技 転移で樹氷の森まで飛んできたが世界は真っ白で方向感覚もなし、い、息も出来ない。

「シ、シエル 息が出来ない。」

パチン

「ごめん、結界張るの忘れてた。」

「だぁーーーー! ハーハーハーハー やっとまともに息ができる様になった。

有難うシエル。 シエルーー、少しぎゅーってしてもいい? まだ何となく寒いの。」

「さあ おいで。あーー、本当に冷えてる、遅くなってすまない。」

「ううん、シエルはいつでも温かいのね。はぁー、落ち着く。」

今ではすっかりシエルの腕の中の収まることが当たり前になってきていた。


結界の外は吹雪が荒れ狂って真っ白な世界。視界は最悪。


「ねえ、シエルどっちに歩いて行ったらいいか分かる?」

「いや…あるかどうかも今年は確認されていないらしいしな…迷っても転移すれば良いのだからティアの好きな方向に歩いてみたらどうだ?」

「好きな方向か……じゃあ、こっち。シエル 手を繋いで!」

「ああ ほら。」


はぁーそれにしても雪が凄い勢いで結界に当たる。

結界の形が分かるほどの量が降っている。


「ふふ 猛吹雪の中死にそうだったけど結界の中から見る世界は面白いわね。 まるで風船の中 ううん スノードームの中みたい!」

「スノードームですか?」

「うん、その結界の中がまるで世界の全てみたいだわ! ふふ シエル!」

レティシアはシエルの手をとってくるくるダンスを踊り始めた。

シエルはいきなり踊り始めたレティシアに呆気に取られたがあまりに自然に楽しそうにしているので何も言えなかった。

ステップを踏むが下は雪、結界が貼られているので足元がベチャベチャになる事はないが少し柔らかくて踊りにくい。真っ白な世界に今はシエルと2人きり、閉ざされた牢の中にも感じるけど、レティシアにとっては卵の中の様な感覚で面白かった。

くるくる回っているといきなり目に前に木が! 正面衝突で尻餅をついて座った。


「いったー!」

「大丈夫か?」

「うん、調子に乗りすぎちゃった、てへ。」


さっきまで真っ白な世界だったのに今は目の前の木が樹氷が見えた。

あれ?

風が凪いできた。

さっきまでは真っ白な壁に囲まれている様だったのに、雪と風が止み雲の切れ間から光が差し始めると太陽の光が乱反射し始めた。眩しくて目が開けられない!!

結界がもうどこのあるか分からないくらい辺りはクリアな視界になった。

だけどキーーーーーーーーンと張り詰めていて動けずにいた。

地面に目をやると誰もが踏み入れたことのない真っ新な地表が広がっている。雪、氷の一粒一粒がキラキラ光っている。


何か動くモノを感じた!

こんな寒いところに生き物がいるの!?

目を凝らして見ると氷でできた様な竜がいた。


「シエル……あれはなに?」

「あの方はこの地の守護竜 氷竜ですね。」

「うわぁー! 綺麗なのね、なんか伸びをしているみたい ふふ。」


氷竜はこちらに気づいて近寄ってくる。

樹氷が邪魔にならないかしら? そんな事を思っていると樹氷が割れるように移動して氷竜の通り道を作っている。


あら、樹氷って動くのね、素敵。

そう思っていると目の前に来て止まる、

「そなたは 人間か?」

するとレティシアは丁寧にお辞儀をし挨拶をした。

「氷竜様 お邪魔しております、私はレティシアと申します。 樹氷果を見に参りました、出来ましたらもう少しここにいさせて下さい。」


「人間から何故 竜神様の匂いがする?」

「この者は竜神様の竜妃だ。」

「おお、竜妃殿か 失礼致した。ここまで樹氷果を見に来られるとは、初めての事だ。歓迎しますぞ。」

「有難うございます。」

竜神様の匂いというならシエルは竜神様の鱗だからシエルでは? はて? ま、いっか。


「今年も出来ておりますぞ! ここ最近は人間が立ち入れる場所には出来ておらぬため気づかれませぬが、どうぞこちらに参られよ。」

「あ、有難うございます。」

うーーん、案内してもらって見つけてもご利益ってあるのかな?

まあ、いっかご利益よりやっぱり見てみたいしね、こんな寒いところまで来たんだから見てから帰りたい!!


「氷竜様はこの地にずっとお一人なのですか?」

「そうですな、我はこの地の管理者ゆえ外に出る事はございません。我がこの地を離れると行った先がこの様に雪に見舞われるので ガッハッハっ。」

「そうなのですね、また機会がございましたら遊びに参りますね。」

「なんと! 竜妃殿がこの地に再び? 感謝感激でございますな!

おっ、見えてまいりました、あちらでございますぞ!」



ええええええーーーーー!!!! なんじゃーーこりゃーーー!!!


滅多に見られないと言われる樹氷果が鈴なりに出来ていた。

「ヒョ氷竜様……樹氷果は滅多に見られないのではないのですか?」

「人間にとっては確かに滅多に見られるモノではありませんな。ですが私の家の側には一年中ありますぞ。」

「い、家? 氷竜様の家があるのですか?」

「ええ、まあ。ですが移動するので今日はここで寝よう!と決めたらそこが家です!」

「あははは、そうなのですね。」


豪快な人なのね。


「カラフルですね、殆どが琥珀色って聞いていたのですが。」

「琥珀色は温度が少し高くなると出来るものですぞ。私の近くにある樹氷はいつもこの様に色とりどりの樹氷果をつけておりますぞ。」

「そうなのですね……。とても…とても綺麗です、そしてちょっぴり美味しそう。」


そうだよね、普通の人間には氷竜様とお話し出来る機会なんてないものね。

まさかこんなにも色とりどりの樹氷果があるだなんて…ふふ とっても可愛い。

人間がこんな奥地にまで来たら凍りついてしまうものね。

私はなんて幸せな人生を歩ませて頂いているのだろう。

考えてみると前世でも新人には異例の大抜擢で様々な経験をさせて頂いた。今世でも死にそうな目にも遭っているけど それでも普通では経験できない事をさせて頂いている。

正に神の恩恵ね。


ああ、なんて美しいのかしら。

机に齧り付いているだけではこう言った感動は味わえないわね。スタンビーノはこれを見たら何て言うのかしら? ああこの世界にもカメラがあれば残して置けるのに。

この世界はなんて美しいのかしら。


「氷竜様、こんな素敵な風景を見せて頂き感謝申し上げます。」

「うむ。我もこの地に足を運んでくださった事 感謝致しますぞ。」

「氷竜様 いつまでもお元気でいてくださいね。」

「竜妃殿……レティシア殿もお元気で。」


レティシアとシエルはそこからまた別の地へ転移した。




ヴァルモア王国の5大公爵家とは竜神様の鱗を祀る家の事だ。

だが誰かに盗まれてはならないので公爵家を継ぐ者にしか明かされない秘密。王都から波紋に広がった先にある遠く離れた領地に大切に保管されヴァルモア王国の全体を覆う見えない結界を張っている様な形だ。


こうして今なお秘密は守られ陰でこの国を守護している。

それが5大公爵家の最大の責務だ。妻にもこの事実は伏せられている、勿論 兄弟でも家を継ぐ者以外には知らされない。不慮の事故で伝えられなかった場合は王家よりその事実を伝える。


今回 その5大公爵家のカーライル家から筆頭公爵家でもあるマルセーヌ家を害したかたちだ。アシュトンも優秀な後継者だった、まさか18歳のこの歳でこんな事件を引き起こすとは思ってもみなかった。


「あなた アシュトンが平民ってどう言う事なのです!? 何があったのですか!!」

公爵家ともなれば大抵の罪は闇に葬りなかった事にできる。

優秀なアシュトンを平民に落とすほどの大事件とは何があったのか夫人は知りたかった。


「……元平民の男爵令嬢に入れあげて王子殿下の婚約者のレティシア・マルセーヌ嬢を帝国学園で虐め 貶めた挙句 王子殿下の学友たちと共謀し誘拐した上で殺害したのだ。」

「ひっ!? な、なんておっしゃったの!? 婚約者を殺害? 筆頭公爵家の令嬢を誘拐の上殺害!! う、嘘よ あの子がそんなことする訳がない!! 何かの間違いよ!!」


「間違いなどではない! ……………間違いであってくれたならどんなに良かったか……。間違いではない、全ての証拠を突きつけられ自白もした。私もその場に立ち会った。

学園でアシュトンが虐めていたのはレティシア様の影武者だ全ての…全ての証拠を向こうはお持ちだ。その上!」

竜神様はお怒りになり殺さないように何度も同じ仕打ちを目の前で!!


「が、学友って言うとノーマン?ならきっとノーマンがしでかした事よ! うちのアシュトンは関係ないわ!」

「やめなさい。 間違いなどではない。」

「あ、あの子はどうなるの? この家はどうなるのですか?」


「アシュトンは既に貴族籍を抜かれ平民となった。本来であれば即刻処刑の上この家もお取り潰しであった。だが猶予…、温情を頂けた。

アシュトンたちを平民に落とし今後一切の関係を断ち切れば、この家を暫く存続させても良いことになった。私は責任をとって取り潰しにして欲しいと懇願したが、暫く様子を見ると仰られた。

だからアシュトンが来ても無視しなさい。可哀想でも一切の援助をしてはならない。

この家と領民を守りたいなら絶対にアシュトンを助けたりしてはならない、いいね?」


「何ですの…それ。愛する息子を捨てろと言うのですか? あんまりだわ、あなたには親子の情はないのですか!!」

「勿論ある! だけどどうにもならないことも守らなければならないこともあるのだ!

よりにもよって王子殿下の婚約者『竜妃』を殺したのだ! 虐めただけでは飽き足らずにな!! しかも誘拐の際は王子殿下の名まで騙って!!

お前も公爵夫人でいたいだろう? 今までと生活を変えたくないならばアシュトンの事は切り捨て忘れなさい!! 少しでも援助すればこの家はただ取り潰されるより酷い目に遭う。アシュトンは逆鱗に触れた、お前が助けても助けなくても…生き残る術はもうない。」


「誰が許さないって言うの? うちの子を…誰が!? 王家? マルセーヌ公爵家? そんなの許せる訳ないじゃない!!」


カーライル公爵夫人 キャロンは納得出来なかった。

優秀な息子を持つことは社交界では何にも勝る自分を輝かせるアクセサリー。ステータス、家柄、容姿、学業、ダンス 何をとってもアシュトンは優秀だ、それを今更奪われるなど許せないのであった。

しかも平民に落とされたなどあってはならない! そんな汚点あってはならなかった。アシュトンのためと言うより自分のプライドに懸けて許せないのであった。


「キャロン、君が母親として憤りアシュトンを庇いたい気持ちは分かる。私だってこれが嘘であってくれればどんなに良いか……。

だがこれは紛れもない事実で 私たちは全員処刑の上、家の取り潰しになるところを温情でアシュトンだけの身分剥奪で済んだのだ。

もし君が余計な事をすれば 君まで処刑か身分剥奪となる……君にとっては処刑も身分剥奪も同じ死ぬ事だろう? ならば今は大人しく処罰に従うんだ、いいね?

万が一アシュトンを助けようとか、誰かに復讐しようなどくだらない事を考えれば 君とは離婚する。 もう一度言う 実行したら?ではない 余計な事を考えた時点で君とは離婚だ、分かったね? 私はキャロンが生涯私の妻でいてくれる事を望むよ。」

とても納得している様には見えないので仕方なく脅しをかける事にした。


「キャロン、念のためにこの離婚の申立書にサインをしてくれ。

君が何もしなければこれは永遠に引き出しの中にしまってあるだろうが、アシュトンに金をやったり助けたり、ならず者を雇ったりすれば この書類は速やかに提出する…これは脅しじゃない、いいね? 必ず守るんだよ?」


あまりに真剣な様子の夫に勢いを削がれて大人しくキャロンは下がっていった。

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